ブックタイトル第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集

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第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集

-508-DP2-1 AIDS患者のPjP に対して、VV-ECMOを用いて救命した一例自治医科大学付属さいたま医療センター 麻酔科集中治療部堀北 奨、讃井 將満、松永 渉、神尾 直、藤本 由貴、毛利 英之、簗瀬 史貴、柿本 大輔現在、急性呼吸不全に対する治療方法の一つとして、VV-ECMO(以下ECMO)の使用が広まってきているが、その適応、禁忌に関しては確固たる基準はない。今回、AIDS患者がPjPの悪化による急性呼吸不全となりECMOを回し、救命した症例を経験したので報告する。【症例報告】発熱を主訴に若年男性が近医受診し、市中肺炎、間質性肺炎の治療を行ったが改善せず、転院搬送となる。HIV 陽性、P.jirovecii のPCR 陽性であったことから、AIDS を発症しPjP に至ったと診断。人工呼吸器管理を行い、感染に対してTMP/SMX を継続した。その後も、患者の呼吸状態は増悪の一途であり強制換気でも酸素化を保つことができないため、人工呼吸器装着3 日目にVV-ECMO が導入された。ECMO 導入後、原疾患の治療を継続し、呼吸状態は改善。合併症もなく導入後16日目にECMO から離脱した。しかし、ECMO離脱2 日後に再度呼吸状態が増悪。その原因として、IRIS(免疫再構築症候群)の可能性を考慮し、ART(anti-retroviral therapy)を中止、再度ECMO 導入となった。2 度目のECMO 導入後、徐々に呼吸状態は改善し、再導入後14日目に離脱。その30日後に人工呼吸器からも離脱し、患者は退院となった。【考察/ 結語】ECMO は回復の見込みのない患者においては相対的禁忌とされており、AIDS患者も免疫抑制状態という点で相対的禁忌という認識が大きかった。しかし、ART の進歩によりAIDS 患者の予後が長期化していることから、AIDS 患者のPjP に対して、ECMO を導入する意義はあると考えられる。本症例ではIRIS による呼吸状態の増悪を疑いECMO を再度導入したが、IRIS の患者でECMO を回した症例はほとんど報告されていない。AIDS患者のPjP、IRIS 疑いに対し、2 度ECMOを回し、救命し得た症例を経験した。本症例は「AIDS患者のPjP に対するECMOの有効性」「IRISにに対するECMO の有効性」を示唆する一助となるかもしれない。デジタルポスター 2 気道・呼吸・呼吸管理① 2月12日(金) 11:00~12:00 デジタルポスターブース2DP2-2 緊急V -V ECMOが有効であった、食道癌再発による気道狭窄に対する気管ステント留置の1 例1)徳島大学 地域医療人材育成分野、2)徳島大学 麻酔疼痛治療医学分野、3)徳島大学歯科麻酔科学分野曽我 朋宏1)、川人 伸次1)、箕田 直治2)、片山 俊子2)、若松 成知2)、久米 克佳2)、堤 保夫2)、田中 克哉2)、北畑 洋3)【症例】77 歳男性 食草亜全摘術を2 年前に施行され外来で経過観察中であった。咳嗽と呼吸困難のため受診、精査され肺門部リンパ節再発による気道狭窄および食道胃管吻合部肺瘻、肺化膿症と診断、緊急入院となった。保存的に加療されていたが次第に呼吸困難が増悪したため、YAG レーザーによる腫瘍焼灼および気管支ステント留置術が予定された。術前の気管支鏡では気管分岐部から左主気管支にかけて腫瘍の突出を認めたが、右気管支は開存しており呼吸器外科、心臓外科と相談の上、ECMO は回路を組まず待機のみの予定とした。デクスメデトミジンおよびフェンタニルにより自発呼吸下に経口挿管、軟性気管支鏡により処置開始した。手術開始後3分程で腫瘍からの出血により視野がとれず、次第に換気、酸素化が不良となった。待機中の心臓外科医師に緊急でV-V ECMO を依頼、18分後にECMO開始、ミダゾラム、ロクロニウムを投与後調節呼吸へ移行した。直後より酸素化の改善を認めたため手術を続行、Ultraflexステントを左右主気管支へ2箇所留置して手術を終了した。ECMOからの離脱は円滑に行え,胸部Xp,血液ガス所見で異常がないことを確認してICU入室した.【考察】麻酔の導入により気道の確保が困難であると予想される高度気管狭窄症例には、体外循環のスタンバイが必要である。循環補助が必要とならない場合、V-V ECMO が有効であるという報告が多いが、コスト面などの問題もあり症例によりどこまで準備するかの判断が難しい。今回の症例では、手術開始直後から腫瘍から出血して危機的な換気不全に陥ったため、最初から体外循環併用で手術を開始するべきであったかもしれない。【結語】食道癌気管浸潤による気道狭窄症例に対し,緊急でV-V ECMOを用いることで換気不全から離脱して手術を遂行できた。DP2-3 長期ECMO管理中の肺生検によりECMO継続か撤退かを判断した重症呼吸不全の2 例1)前橋赤十字病院 高度救命救急センター 集中治療科・救急科、2)同、呼吸器外科、3)同、病理診断科、4)同、心臓血管内科、5)同、心臓血管外科鈴木 裕之1)、桜澤 忍1)、中村 光伸1)、町田 浩志1)、宮崎 大1)、井貝 仁2)、上吉原 光宏2)、井出 宗則3)、星野 圭治4)、石川 和徳5)【はじめに】重症呼吸不全患者にECMO を導入後、長期間のECMOサポートでも呼吸状態の改善がない場合、このままECMO を継続すべきか否かの判断に迷うことがある。今回、その判断のためにECMO中に肺生検を2症例に施行したので報告する。【症例1】73歳、男性。肺炎球菌性肺炎、ARDS の診断で挿管、人工呼吸管理中であった。第3病日、呼吸不全が進行したためV-V ECMOを導入した。lung restさせ抗菌薬による治療を継続した。しかし、4週間が経過しても呼吸状態は改善しなかった。そのため、ECMO 導入から31 日目、胸腔鏡下肺生検を実施した。肺胞腔は増生した線維芽細胞に圧排置換されていた。肺は不可逆的な状態と判断し、家族に病状説明し治療を断念した。ECMO 導入から39日目に死亡した。【症例2】59 歳、男性。僧房弁閉鎖不全症による慢性心不全で入院中であった。院内肺炎を合併し挿管、人工呼吸管理となったが、呼吸不全が進行したためV-V ECMOを導入した。lung restさせ、抗菌薬による治療と厳格な水分管理を行った。ECMO 導入から4週間が経過しても、胸部X 線にスリガラス影は残存していた。ECMO導入から28日目にECMO離脱を試みるも失敗し、3日後にV-V ECMOを再導入した。KL-6は1849U/mlで肺の線維化が疑われた。ECMO再導入から6 日後に胸腔鏡下肺生検を実施した。器質化肺炎と組織診断されたため、ステロイドにより改善が期待できると判断しECMOを継続する方針とした。ECMO再導入から25日目、ECMOを離脱することができた。ECMOサポート期間は合計53日間であった。その後、僧帽弁置換術を受け、人工呼吸器を離脱。現在リハビリ中である。【考察】今回の2 症例では肺生検の結果がECMO継続か撤退かの判断の根拠となった。文献的考察を加えて報告する。