ブックタイトル第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集

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第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集

-493-O50-4 小児ECMO患者における水分バランスと転帰に関する検討1)東京都立小児総合医療センター 救命・集中治療部 集中治療科、2)東京都立小児総合医療センター 臨床工学技士室小谷 匡史1)、齊藤 修1)、居石 崇志1)、本村 誠1)、中山 祐子1)、新津 健裕1)、清水 直樹1)、吉田 拓司2)【背景】水分バランス過多(以下、FO; Fluid Overload)は重症患者の転帰と関連があるとされるが,Extracorporeal membraneoxygenation(以下、ECMO)患者でのFO と転帰の関連性に関する報告は少ない。【方法】東京都立小児総合医療センター集中治療室(以下、当院PICU)において2010年4月から2015年8月までにECMOを導入した患者について患者背景と急性期(48、72時間)の累計水分バランス(以下、FB)ならび転帰との関連について診療録をもとに後方視的に検討した。【結果】ECMO 症例は70 例、ECMO のタイプは呼吸(R)26、循環(C)21、ECPR 23 例であった。このうちECPR、短期装着症例を除き、各々について生存(S群)、非生存群(NS群)にわけて転帰を検討した。呼吸ECMO(月齢(中央値)13ヶ月(0- 192)、体重 6.6 kg(2.7-25)、P/F比 81(35-350)、PIM2 6.2(1.2-37.6))ではR-S群19/26例、R-NS群 7/26例であった。また各々の48、72時間のFBの中央値は、0.22 L/kg/ 日(-1.42-3.93)、0.13 (-1.67-5.23)、R-NS 群0.42 L/kg/ 日(-0.40-11.18)、0.68 (-0.77-14.35)であり、両群間での統計学的有意差は認めなかった。一方、循環ECMO(月齢5ヶ月(0- 79),体重 4.2kg(2.5-33)、Inotropic score 10(1-21)、PIM2 8.6(2.2-76.2))ではC-S 群11/21 例、C-NS 群 10/21 例で、各々48、72 時間のFB は 0.27L/kg/ 日(-0.58-1.01)、0.08(-0.85-1.45)、C-NS 群 1.88 L/kg/ 日(0.01-9.55)、1.95(-0.16-9.97)で、いずれもC-NS 群で統計学的に有意なFO を認めた。【考察】R 群と異なり、C 群はFO と転帰との関連を認めた。C群においては複雑心奇形による術後人工心肺離脱不能例を多く含み、ECMO装着後においても積極的に先天的心形態異常の早期評価、介入などを計らないとFOが増悪する傾向があった。【結語】不均一な基礎疾患を背景に個々多様な経過を辿るため、ECMO下のFO と転帰に関するさらなる検討が必要であるO50-5 小児の左心補助人工心臓(Berlin Heart EXCORE)装着術6 例の周術期管理と問題点1)大阪大学 医学部附属病院 集中治療部、2)大阪大学医学部附属病院 小児科、3)大阪大学医学部附属病院 心臓血管外科髭野 亮太1)、廣瀬 将紀1)、平松 大典1)、高橋 邦彦2)、小垣 滋豊2)、平 将生3)、上野 高義3)、澤 芳樹3)、内山 昭則1)、藤野 裕士1)【緒言】本邦で小児用体外式補助循環装置(VAD)としてBerlin Heart社のEXCOREが使用できるようになった。当院はこれまで6例のLVAD装着児の術前術後管理を経験したので経過と問題点について報告する。【症例】拡張型心筋症で心移植登録を必要とした4ヶ月~1歳2ヶ月(平均 7ヶ月)の6 人。LVAD装着術前にICU入室し管理を行なったのは人工呼吸下の3例、ECMO 下の1例。3 例は前医から搬送され、継続し集中管理を行なった。術前の入室期間は5日~21日(平均 10.5日)、全例カテコラミン投与下であった。【経過】術後全例にNO吸入が必要であり、経口薬への移行は3例であった。右心補助のためのミルリノン、カテコラミンの投与期間は13日~28 日(平均18.6日)、6 日~19日(平均12.5 日)であった。体外式VAD であるため鎮静は重要でありオピオイド、ミダゾラム、デクスメデトミジンを併用。人工呼吸期間は3日~36日(平均13.5日)であり、3例で術前から長期の鎮静のため抜管後も離脱症状に難渋した。抗凝固はヘパリン、AT3、ワルファリンで行い、経過中の再開胸血腫除去が2 例あった。合併症として神経学的に重大な影響を及ぼすような頭蓋内の出血や梗塞はみられなかった。ICU入室期間は8 日~43 日(平均 23.8日)。6 人中3人が心移植を行うことができ、3人は移植待機中である。【考察】術前からICUで集中管理を適切に行い、臓器障害を最小限に抑えることで良好な術後経過を得ることができた。長期の鎮静を必要とした症例では離脱症状に難渋し入室期間が長くなった。術後は高血圧となりやすく血管拡張薬を適正に使用し、抗凝固が必須なため頻回の止血検査を行うことで頭蓋内出血など更なる重大な合併症の予防を行っている。【結語】術前の集中管理にて臓器障害を最小限に抑え、術後の管理として頭蓋内出血を生じるリスクを減らすために頻回の止血検査と高血圧のコントロールを行うことが重要である。O50-6 当院での小児急性心筋炎に対するVA-ECMOの適応1)山梨大学医学部小児科、2)山梨大学医学部附属病院新生児集中治療部、3)山梨大学医学部救急集中治療医学講座、4)山梨大学医学部第二外科河野 洋介1)、小泉 敬一1,2)、喜瀬 広亮1,2)、戸田 孝子1,2)、加賀 重亜喜4)、森口 武史3)、鈴木 章司4)、松田 兼一3)、杉田 完爾1)、星合 美奈子1,2)【背景】小児のVA-ECMOは血管アクセスが難しく、循環血液量が少ないことや合併症が多いことから施行に苦慮する。このため、小児急性心筋炎に対するVA-ECMOの適応は明確ではない。【目的】小児急性心筋炎に対するVA-ECMOの適応の検討を目的とした。【対象・結果】1996年から2014年までに当院へ搬送され、急性心筋炎と診断された6例を対象とした。6例のうちVA-ECMO施行例(ECMO群)は3 例、VA-ECMOを必要としなかった例(非ECMO群)は3 例であった。ECMO群:年齢0~12歳、男女比2:1、入院時のLVEFは15~30%であった。ECMO施行前に、全例で低血圧性ショックのため強心剤が投与されていた。心停止または薬剤抵抗性心室性不整脈が出現したためECMO 装着に至った。ECMO装着時には、全例が呼吸不全・肝機能障害・腎機能障害・血液凝固異常・代謝性アシドーシス(pH6.7~7.1)があり、心原性ショックに伴う多臓器不全と診断した。予測死亡率(PIM2)は69.8~89.6%、入院からECMO装着までの時間は14分から14時間であった。非ECMO群:年齢0~12歳、男女比2:1、入院時LVEFは40~79%であった。2例で心室性不整脈が出現したが1例はショック症状がなく、1例は強心剤投与により低血圧性ショックから回復したため、VA-ECMO装着は回避できた。全例で多臓器不全・代謝性アシドーシスは出現しなかった。PIM2は6.7~14.7%で、ECMO群に比して低値であった。1例はカニュレーションに備え大腿動静脈を剥離し、ECMO装着を待機した。ECMO群・非ECMO 群とも全例が生存退院し、現在まで神経学的予後は良好である。ECMO群の1 例で、下肢阻血による運動障害を生じた。【まとめ】小児急性心筋炎では、低血圧性ショックとそれに伴う多臓器不全・アシドーシスを生じた場合にVA-ECMOの適応となると考えられた。劇症化因子とされている心機能低下や心室性不整脈出現例でも、薬剤投与で血圧が維持できる症例ではECMO装着を回避できる可能性がある。