ブックタイトル第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集

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第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集

-489-O48-4 高アンモニア血症を呈し持続血液浄化を行ったミトコンドリア呼吸鎖異常症の新生児症例大阪市立総合医療センター 集中治療部岩田 博文、管 敏晃、奥村 将年、山本 泰史、大塚 康義、宇城 敦司、嶋岡 英輝高アンモニア血症を呈し搬送されたミトコンドリア呼吸鎖異常症の新生児症例を経験したため報告する。症例は日齢1の男児。在胎38 週2日、妊娠経過中は特に問題なかったが、分娩20分前から変動性一過性徐脈を頻発し、経腟吸引分娩となった。出生時アプガースコア3/4/5 点、呼吸は浅く頻呼吸、筋緊張低下あり、刺激への反応ほぼない状態であったため、気管挿管され、人工呼吸器管理となった。出生時の血液検査で、代謝性アシドーシスとアンモニア濃度>400μg/dlを認め、重症新生児仮死として低体温療法を行っていたが、日齢1 にはアンモニア濃度>1600 μ g/dlまで上昇を認め、先天性代謝異常症の疑いで当院転院となった。高アンモニア血症に対して、第1病日より第8病日まで持続血液透析を行いアンモニア値は基準値まで低下、透析終了後も上昇なく経過できている。原因に関して、尿素サイクル異常症や有機酸代謝異常症を疑ったが、尿有機酸分析の結果からは否定的であった。出生時より肝酵素、クレアチンキナーゼ、乳酸値の上昇あり、肝生検を行った。生検では、ウイルス感染や胆汁鬱滞を示唆する所見を認めなかったが、ミトコンドリア呼吸鎖複合体の酵素活性低下を認め、ミトコンドリア呼吸鎖異常症の診断となった。新生児において、高アンモニア血症、代謝性アシドーシスとなりうる病態は多様で、診断に時間がかかるケースも少なくない。しかし、高濃度のアンモニアに暴露された時間は、児の神経学的予後に関与しており、鑑別診断のための検査と同時に早期の積極的な治療介入が必要である。O48-5 摂食障害の身体合併症の臨床像の検討1)横浜市立大学附属市民総合医療センター 高度救命救急センター、2)横浜市立大学大学院医学研究科救急医学、3)横浜市立大学医学部 救急医学教室、4)横浜市立大学附属市民総合医療センター 精神医療センター松森 響子1,3)、日野 耕介1,4)、安部 猛1,3)、中村 京太1,2,3)、森村 尚登1,2,3)背景:近年摂食障害のために救急搬送される症例が散見されるが、我々が渉猟しえた範囲では本邦において救急集中治療に関する臨床像についての症例集積研究は認めていない。目的: 2013 年4月~2015 年3 月の2 年間で当院救命救急センターに搬送された摂食障害の6例の臨床像を検討し、並びに重症例の摂食障害の系統的文献レビューを行った。結果:当院での6症例は15~48歳の女性、うち3例は以前に摂食障害と診断されていた。意識障害をきたした症例は6例中2例で、2例とも挿管人工呼吸管理となった。ショックを呈した症例は6例中5 例、低体温の症例は6例中1 例であった。経過中にたこつぼ心筋症をきたしたものが1 例、最重症の症例は重度の低体温(24.0度)、徐脈、血圧測定不能であり一時的に心停止となったため、経皮的心肺補助法(PCPS)と血液透析を施行した。この重症低体温を除く5例では心拍数は91~106とむしろ相対的頻脈の傾向にあった。血液検査では全例に低K血症がみられ、ほか肝障害や血小板減少が高い頻度でみられた。転帰は自宅退院2例、当院精神科転科3例、当院小児科転科1例(後に精神科転科)であった。医学中央雑誌で、摂食障害と集中治療について検索しえた133件の文献から、救命救急の分野に関連がないと判断されたものを除外した原著論文と会議録は33 件であった。考察:摂食障害の身体合併症については、低血圧、低体温、低血糖、不整脈、電解質異常などが報告されている。敗血症や不整脈、循環不全などの重篤な身体合併症が致死的な転帰の原因となり、心停止に至る摂食障害は散見されるが、PCPSにより救命された症例報告は検索できたものは本邦で1例のみであった。たこつぼ心筋症の合併は数例の報告があり、低血糖からのカテコラミンサージが想定されている。摂食障害では精神科治療だけでなく身体疾患に対する集中治療も併せて集学的に行うことが肝要である。若干の文献的考察を加えて発表する。O48-6 プロポフォールによる脂肪酸代謝抑制に対する糖・アミノ酸代謝の反応鹿児島大学医歯学総合研究科侵襲制御学教室森山 孝宏、原田 浩輝、中原 真由美、松永 明、上村 裕一プロポフォールは脂肪酸の代謝を抑制するが、これがプロポフォール注入症候群の一因となっている可能性も指摘されている。脂肪酸負荷動物モデルを用いて、脂肪酸代謝抑制時の糖・アミノ酸代謝の関与について検討した。【方法】2 週間高脂肪食の食餌で作成した脂肪酸負荷SDラット18 匹を1. プロポフォール20mg/kg/h投与群(A群)、2.イソフルラン+ イントラリピッド投与群(B群)、3. イソフルラン投与群(C 群)の各群6 匹に分類した。人工呼吸管理下で体動、自発呼吸が出ないよう投与量を調節し3 時間観察した。投与開始前、1、2、3時間後に採血し、遊離脂肪酸値、血糖値、乳酸値、アミノ酸値、インスリン、グルカゴン、コルチコステロン濃度を測定した。群間比較はANOVAを用いてP< 0.05 を有意差ありとした。【結果】遊離脂肪酸値は実験開始前で3群とも高値であったが、3時間後にはA群はさらに上昇しC群と比較して有意に高値であった(A群:328±86、B群262±74、C群241±69 μ M)。血糖値はA群では経過とともに著明な低下を認め、3時間後にはA群41±12、B群72±16、C群78±18mg/dl であった。分岐アミノ酸(バリン、ロイシン、イソロイシン)は、経過とともにC 群では上昇したのに対して、A 群では有意な減少を認めた。アラニンは3 群とも増加したが、C 群がA群に対して有意に高値であった。乳酸値、インスリン、グルカゴン、コルチコステロン濃度は3 群間で有意差は認めなかった。【考察】プロポフォール投与下では遊離脂肪酸の低下がみられず、細胞内に取り込まれないためエネルギー産生に有効利用されていないと考えられた。これに対して、血糖及びアミノ酸を利用することで代償している可能性が示唆された。しかしながらこの反応が長期に及ぶ場合や代償反応が適切に作用しない病態時には、細胞のエネルギー産生枯渇が生じる可能性も予測されるため、今後プロポフォール注入症候群発症機序の原因として研究を進める予定である。