ブックタイトル第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集

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第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集

-479-O43-4 当院におけるOpen abdominal management(OAM)症例の検討日本医科大学付属病院 高度救命救急センター松居 亮平、新井 正徳、石井 浩統、萩原 令彦、萩原 純、増野 智彦、金 史英、宮内 雅人、辻井 厚子、横田 裕行一期的に閉腹が困難な症例に対し、open abdominal management(OAM)が行われるが、管理が長期に及ぶと腹壁の側方退縮のためfascial closure が困難となることが報告されている。当院ではOAM の方法として主にnegative pressure wound therapy(NPWT)を用いているが、長期管理が予想される症例には非吸収性メッシュを筋膜に装着して正中方向へ牽引するmeshmediatedtraction(MMT)を併用し、それでも閉腹困難な症例では腹直筋鞘前葉反転法で腹壁再建している。今回、2011 年1月から2015年5月までの期間に当院で経験した93例のOAM症例のMMTおよび腹直筋鞘前葉反転法の有用性について検討した。生存退院例は35 例であり、年齢は平均67.6 ± 16.2(24-96)歳で、OAM 期間は平均21.5 ± 30.2(1-119 中央値8)日であった。OAMの方法はsilo closure が1 例、NPWT 単独が21 例、NPWT とMMT の併用が13 例であった。閉腹方法はfascial closure が23 例、腹直筋鞘前葉反転法が6 例で閉腹率82.9% であった。ventral hernia となった症例は6 例で、腸瘻合併が3 例、fascial closure後の創離開が3例であった。これらの症例には分層植皮などを施行した。MMTを併用した13例中、fascial closureがなされた症例は12例(92.3%)であったが、経過中2例に一部創離開を認めた。最近のprospective studyではNPWT 単独での閉腹率は69%と報告されており、NPWT単独で閉腹困難となったOAM 症例に対しMMTの併用は有用と考えられた。それでも閉腹困難な症例に対しては腹直筋鞘前葉反転法を用いて閉腹が可能であった。しかし、腸瘻を生じた症例においては、これらの方法が施行できず、閉腹不能となった。腸瘻を来した場合の閉腹方法に関して今後さらなる検討が必要と考えられた。O43-5 水素水の腹腔内注射によるマウス術後腸管麻痺の改善効果兵庫医科大学 救急・災害医学講座中尾 篤典、岡本 彩那、山下 勇人、石川 倫子、小濱 圭祐、西村 健、藤崎 宣友、小谷 穣治【背景】開腹手術後には術後イレウスと称される腸管麻痺を生じることがあり、腸管での栄養管理に遅れが生じ、腸管細菌叢の乱れによる感染症、低栄養状態など様々な病態を引き起こすことがある。それらは結果として長期入院や様々な合併症を引き起こす要因となる。しかしながら術後イレウスの有効な予防・治療法は確立していない。一方で水素は抗炎症作用を持ち、微量の水素ガスを吸入することで様々な因子に対し保護的に働くことが報告されている。しかしながら水素は水溶液として使用するとより安全に使用できる。今回我々はマウスを用い水素を溶解させた生理食塩水を腹腔内投与することにより、より安全に術後イレウスが予防できるか検討した。【方法】雄性C57BL/6を使用し、腸管全体を綿棒で軽くこする操作(surgical manipulation;以下SM)を行い、術後腸管麻痺モデルを作成した。あらかじめ作成した水素水をSM 直後に1.0mLを腹腔内投与し閉腹した。水素水投与6 時間後に炎症性サイトカイン、24 時間後に蛍光色素で標識したデキストランを用いた腸管輸送能の評価、及び腸管筋層への好中球浸潤、筋層組織におけるNO 産生量、マクロファージの腹腔内への遊走数を測定した。Sham コントロールはSM を行わずに開腹及び閉腹した。また、対照群では生理食塩水を使用した。なお、水素水は耐圧式容器内で生理食塩水と水素ガスを陽圧条件下で混和させ、生理食塩水に水素を溶解することで作成した。【結果】SM により腸管輸送能は低下し、筋層への好中球浸潤及びNO産生、マクロファージの腹腔への遊走は増加した。また、6 時間後に測定したRT-PCR では炎症性サイトカインは上昇を示した。一方、SM 直後に水素水を腹腔内投与することによりこれらの反応は有意に改善を示した。水素水投与により優位に増加していたNO 産生は抑制され、消化管運動低下を予防すると考えられる。【結語】水素水の腹腔内投与は術後腸管麻痺の予防に効果的である。O43-6 内視鏡を用いたベッドサイドでの消化管チューブ(ED・イレウス管)の挿入桜橋渡辺病院外科馬塲 雄造ED やイレウス管といった消化管チューブを十二指腸から空腸に挿入するためには胃内視鏡を用いる場合でも通常透視が必要です。特に,重症患者では透視室へ搬送する手間やリスクから病室で挿入できることが望まれます。心不全で挿管した高齢者で,胃滑脱ヘルニアのためED が挿入できない症例がありました。内視鏡の依頼を受け,EDに数カ所の把持部をつけてみたところベッドサイドで簡単に空腸起始部まで挿入することができました。以降,十二指腸深部へのED挿入が必要なケースでは内視鏡下に病室で挿入してきました。同様の手技でイレウス管も挿入しております。【方法】本法の有効性を検討するため,ED,イレウス管の挿入を試みた症例で,チューブの先端位置をレントゲンより検討しました。【成績】2010.4 より2015.8 の間のED挿入例は男性26,女性14人,平均年齢76.3歳。胃切除後の2例を除く38例で,計55回の挿入を行い,全例透視を必要としませんでした。複数回の挿入は,閉塞,事故抜去が原因でありました。スタイレットの抜去時に十二指腸球部まで抜けたケースが1 例,EDの先端が十二指腸水平部のケースが4 例で,多くは手技の不慣れや深部挿入の意識がなかったケースでした。それ以外は全例Treitz 部もしくは空腸まで挿入できており,合併症は認めませんでした。2014.8より2015.8のイレウス管挿入例は,男性4例,平均年齢73.3歳でした。うち2例はED挿入例と重複しております。全例イレウス管は空腸まで挿入できました。腹部大動脈瘤術後の1例では,空腸起始部の癒着を考えて透視を併用しました。結果的に透視のみでは挿入困難で,本法による内視鏡の補助が有効でありました。【結論】本法によりベッドサイドで安定的にEDを十二指腸深部に挿入することが可能でありました。イレウス管もベッドサイドで挿入を試みる価値はあると考えられました。