ブックタイトル第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集

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第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集

-478-O43-1 集中治療におけるD 体乳酸値上昇は腸管壊死(虚血)と関連する1)札幌医科大学 医学部 集中治療医学、2)東京医科大学 医学部 麻酔科学講座 集中治療部吉田 真一郎1)、升田 好樹1)、巽 博臣1)、片山 洋一1)、数馬 聡1)、高橋 科那子1)、今泉 均2)【緒言】ICUにおける腸管虚血症例はしばしば致命的となるが,診断に用いられる検査は限定的である.日常的に測定されるL体乳酸は,高値であるとき腸管虚血を疑う所見の一つと考えるが,特異性が低く,虚血組織局在を示すことは困難である.D体乳酸は,哺乳類の組織中で産生されないが,腸管細菌叢で産生され,これを利用した腸管病変診断について有用性が報告されている.【対象と方法】ICU 管理中に開腹手術にて腸管壊死と診断した症例(intestinal ischemia: II 群),敗血症性ショック症例(septicshock:SS群),ショックを伴わない高L体乳酸血症を呈した症例(HL 群)を後ろ向きに抽出し,当ICU で過去に採血・保存されていた検体についてD 体およびL 体乳酸値を比較した.L 乳酸とD 乳酸の測定はそれぞれ,血液ガス分析装置(電極法)と酵素吸光度法を用いて行った.II群は壊死腸管切除術前24 時間以内または術直後に採血されたものとし,SS群とHL 群の検体は,全身状態不良で検体保存が適当と判断した時期(入室時,高L 体乳酸血症増悪時,血液浄化療法施行直前など)に採血されたものとした.入室時心停止例,入室後24時間以内の死亡例は除外した.【結果】II群(n=12),SS群(n=18),HL群(n=8)の3群間で比較した.L 体乳酸平均値はHL 群がSS 群に対して有意に高く(102 vs 48mg/dL, p=0.002),II群は60mg/dLであった.一方D体乳酸平均値はII 群がSS 群に対し有意に高値(1.29 vs 0.59mg/dL, p=0.025)で,HL 群は0.70mg/dL であった.【考察・結論】D 体乳酸値は,動脈遮断といった直接的腸管血流障害で高値となることが示されている.一方,ICU管理中の重症病態には,ショックや腹腔内圧上昇など間接的に腸管血流障害となりうる要因が混在しうる.本研究の結果から,重症病態の中でも外科的切除を要する腸管壊死症例は,D体乳酸が診断の補助的バイオマーカーとなる可能性が示唆された.口演 43 消化器① 2月13日(土) 11:00~12:00 第13会場O43-2 開心術後の非閉塞性腸間膜虚血症例の検討神戸市立医療センター中央市民病院川上 大裕、植田 浩司、下薗 崇宏、美馬 裕之、山崎 和夫【はじめに】非閉塞性腸間膜虚血(NOMI)は,開心術後や透析患者で多く,透析患者の開心術後院内死亡原因は,NOMIが心イベントに次いで多いと報告されている.NOMIは致死率が高く予後不良な疾患であり,当院における開心術後NOMIの診療の実態を調査した.【対象・方法】2012 年7月から2015 年6月までの開心術患者を対象とし,NOMIの発症割合,発症までの期間,基礎疾患,治療,転帰などについて後方視的にカルテレビューを行った.【結果】4年間の開心術症例数は1218例であり,そのうち血管造影検査もしくは術中所見で診断されたNOMIは4例(0.33%)であった.性別は男性3/4 例,年齢は84.5(79.5-85.3)歳で,3/4 例が透析患者であった.NOMI の発症は術後29(15.5-40.3)日であり,3/4例でNOMI 発症前に術後再開胸を行っており,術後肺炎や縦隔炎を合併していた.また,全症例でNOMI診断時にAST,LDH の上昇を認め,乳酸値は2.8mmol/L(2.8-3.25)であった.3/4例で血管造影後動注療法を施行し,1/4 例で腸管切除術を施行した.いずれの症例も院内死亡に至り,その日数はNOMI発症後54.5 日(25.3-110.8)であった.【考察】当院のNOMI発症割合は0.33%で,これまでの報告と同等の結果であった.これまでの開心術後のNOMIの報告では,術後早期の発症が多く報告されているが,本研究でのNOMI の発症は術後29(15.5-40.3)日と術後晩期に発症していた.術後晩期に発症した症例はいずれも再開胸,縦隔炎,肺炎などの術後合併症で治療に難渋した症例で,死亡割合も100%と高かった.血行動態が不安定で血管収縮薬を使用している術後早期だけでなく,術後合併症で治療に難渋した症例では,術後晩期にもNOMIを発症する可能性があり注意が必要である.O43-3 当センターにおける開心術後の非閉塞性腸間膜虚血に対する取り組み1)自治医科大学附属さいたま医療センター 麻酔科・集中治療部、2)倉敷中央病院 救急科、3)沖縄県立中部病院 集中治療部大城 国夫1)、青松 昭徳1)、佐藤 瑞樹2)、小室 哲也1)、飯塚 悠祐1)、神尾 直1)、簗瀬 史貴1)、中嶋 いくえ1)、毛利 英之3)、讃井 將満1)【はじめに】開心術後の非閉塞性腸間膜虚血(以下NOMI)は致死率が70-100%に達する致死的な病態で、その診療を最適化するには、多科の協力体制の構築が不可欠である。当センターでは、2010 年以降、関連各科合同の合併症・死亡(M&M)カンファレンスを通じてプロトコールを作成し、NOMIの予防および発症後の管理・治療が改善した。今回、その経緯について報告する。【経緯】NOMIの発生後、2010年4月合同の合同M&Mを経て、より早期に血管造影が施行されるようになった。しかし、その後も開心術後のにNOMI が散発的に発生したため、予防の重要性が認識され、2013年9 月に再度合同M&Mを通じてNOMIの発生を予防するための“NOMI 予防バンドル” が作成された。これは、1)70 歳以上かつAS に対するAVR かつCKD(GFR < 60ml/min/BSA)、あるいは2)開心術を受ける透析患者を対象として、1.Hb > 8.0g/dl 2.MAP > 65mmHg 3.SvO2 > 65% 4.C.I > 2.5L/min/m2 5.血清乳酸値< 4mmol/lを目標として血行動態管理を行うものであった。その結果、NOMIの発生は、予防バンドル導入前の868 件中11 件(1.2%)から導入後の862 件中4 件(0.46%)に減少した。さらに、2014 年11 月の合同M&M を通じて、NOMI に対する管理・治療、特にsecond lookのタイミングや開腹後の管理を最適化する目的で“NOMI管理プロトコール”を作成した。2015年5月に広範囲の虚血性変化のため切除不能であった症例に対しPGE1の持続動注による救命症例も経験し、NOMI管理プロトコールに新たな治療のオプションが加わった。【考察】当センターでは、合同M&Mを通じてNOMIに対する予防・管理が改善した。当初は多科間で意見の対立もあったが、集中治療部が調整役として粘り強く交渉して意見を調整し、多科が患者アウトカムの改善という目的を共有し、協力しあえるチーム医療体制を構築できたことが大きい。今後もさらなる患者予後の改善を目指しプロトコール改善に励みたい。