ブックタイトル第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集

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第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集

-464-O36-1 脳動静脈奇形破裂をきたした妊娠患者の周産期管理:血管内治療後に帝王切開を行い母児ともに救命した一症例1)日本赤十字社医療センター 集中治療科、2)日本赤十字社医療センター 麻酔科浅野 哲1)、林 南穂子2)、諏訪 潤子2)、細川 麻衣子2)、枝窪 俊輔2)、齋藤 豊1)、種田 益造1)、矢野 喜一2)、渡辺 えり2)、加藤 啓一2)【はじめに】脳動静脈奇形(脳AVM)は周産期にまれに破裂することがあり、その死亡率は非妊婦に比べ高率である。その原因は、再出血率が高いためと考えられている。今回我々は、妊娠25週に脳AVM の破裂をおこしたが、妊娠27週に血管内治療を施行した上で妊娠38週に帝王切開を行った結果母児ともに救命しえた症例を経験したので、治療の有用性につき報告する。【症例】34歳、妊娠25 週に後頚部の疼痛を訴えた後、意識消失をおこし当院に救急搬送された。頭部CT にて右後頭葉の皮質下出血および脳室内出血を認めたため全身麻酔下に脳室ドレナージを行った。胎児エコーでは推定体重952gと発育良好であり、術後母体の全身状態が安定したことから妊娠継続可能と判断した。第1病日目に脳血管造影を行った結果、右後大脳動脈をfeederとするSpetzler-Martin 分類 grade3 の脳AVM が確認された。妊娠27 週に全身麻酔下に脳血管手術による脳AVM 塞栓術を行った。腹部は前後からプロテクターを着用したうえで治療を行った(造影剤イオヘキソール120ml、面積線量計による放射線線量1446mGy、透視時間20 分56 秒)。N-butyl-cyanoacrylate にてfeeder を塞栓した。塞栓後もnidus の一部は造影されたものの、nidus への圧と血流を大幅に減じることができたため再出血のリスクは低いと判断し血管内治療を終了した。第28 病日目に神経学的異常なく退院した。その後児の発育を待ち、妊娠38週に脊髄くも膜下麻酔による帝王切開にて出産した。母子ともに異常なく術後第5病日目に退院した。縮小した脳AVM に対しては3ヶ月後にサイバーナイフ治療を行い、現在のところ再出血はなく、児の成長発育にも異常は認めていない。【結語】妊婦に対する脳血管治療は、放射線、造影剤、抗凝固・抗血栓療法、全身麻酔薬の胎児への影響などさまざまな問題はあるものの、安全かつ有効に治療を行うことが可能であり、母体の救命のみならず妊娠を継続するうえで有用である。口演 36 産婦人科 2月13日(土) 13:30~14:30 第9会場O36-2 腫瘍内出血によるDIC を伴う巨大子宮腫瘍摘出術の出血コントロールに大動脈遮断バルーンが著効した1 例天理よろづ相談所病院浜川 綾子、中尾 謙太、石井 久成【症例】43歳女性、身長147cm、体重60kg【既往歴】4歳時にNoonan症候群による心房中隔欠損症、肺動脈狭窄症に対して心房中隔欠損閉鎖術、肺動脈弁交連切開術を施行された。【現病歴】5年前より双角子宮、子宮筋腫と診断されたが、外来受診を自己中断していた。2週間前より両下腿浮腫、腹部膨満を主訴に外来を受診した。ヘモグロビン3 g/dlの高度貧血と播種性血管内凝固症候群(DIC)を認めた。腹部CTでは25cm× 23cm×28cm の巨大子宮腫瘍を認め、腫瘍周囲の拡張した多数の血管増生、腫瘍内出血を伴っていた。輸血を行ったが、腫瘍内出血のため貧血・DICが改善せず、腫瘍径が増大し腫瘍破裂の危険が高まったため、緊急摘出術が予定された。【麻酔経過】動静脈を確保した後、レミフェンタニル、プロポフォール、ロクロニウムで迅速導入し気管挿管した。中心静脈カテーテルを留置したのち、腫瘍からの大量出血を制御する目的で、透視下に大腿動脈から大動脈遮断バルーン(AOB)を腎動脈下腹部大動脈に留置した。腫瘍裏面を剥離中に出血による血圧低下を認め、加圧式急速輸血をしたが収縮期血圧(sABP)が50mmHg未満となったため、透視下でAOBを拡張させ大動脈を遮断した。sABPは70mmHg以上に回復し、19kgの腫瘍が一塊として摘出された。大動脈遮断時間は30分であった。手術終了後、鎮静下に集中治療室へ移動した。手術時間6時間2分、麻酔時間7時間47分、出血量7200ml、尿量400ml、総輸液量1800ml、輸血量:濃厚赤血球5850ml、新鮮凍結血漿5760ml、濃厚血小板600ml、5% ヒト血清アルブミン500mlであった。【考察・結果】AOB は、出血性ショック時に冠血流、脳血流を維持する目的で使用されることが多い。本例のように術中大量出血が予測される巨大腫瘍摘出術においてもAOBは有効である。O36-3 HELLP 症候群に対する帝王切開術後に右肝梗塞を呈した1 例横浜市立大学附属病院西周 祐美、山口 嘉一、山本 夏啓、堺 結有、出井 真史、吉田 輔、高木 俊介、野村 岳志、山口 修、後藤 隆久【はじめに】我々はHELLP 症候群患者の分娩後に右肝梗塞を合併し,肝不全,急性腎障害を呈した1 例を経験した。血漿交換と持続的血液濾過透析を中心とした集中治療により救命することができたので報告する.【症例】35 歳,女性.0G0P,既往歴に特記事項なし.26週に妊娠高血圧症と診断された.28週1日,高血圧コントロール不良,心窩部痛,肝機能悪化(AST202IU/L,ALT158IU/L,LDH507IU/L)を認め,HELLP症候群の診断で緊急帝王切開を施行した.POD1にAST6154IU/L,ALT6795IU/L,LDH12780IU/L,総ビリルビン2.0mg/dL、血小板数3.2 万/ μL とさらに悪化を認めた.造影CTで肝右葉の梗塞像,腹部超音波検査で門脈の著しい血流低下を認め,右肝梗塞と診断した.産科DIC,多臓器不全を合併し,呼吸循環不安定となったため気管挿管し,全身管理を行った.肝不全に対して血漿交換を3回行い,急性腎障害に対して持続血液透析濾過を施行することで病態の改善を認めた.POD9造影CTで肝右葉の血流改善と肝左葉の代償性肥大を認め,POD10抜管,POD14集中治療室を退室した.なお,抗リン脂質抗体を含む検査した自己免疫抗体は全て陰性だった.【考察】HELLP症候群に肝梗塞を合併した症例は非常に稀であり,世界的にも数例しか症例報告がない.また,HELLP 症候群で肝梗塞をきたす症例は,自己免疫疾患を有することが多いが,本症例では自己免疫疾患が認められなかった点も特徴的である.本症例ではHELLP 症候群に伴う凝固障害と血管内皮細胞障害を背景に,門脈と右肝動脈の両方の血管攣縮または血栓塞栓症が起こり,右肝梗塞に至ったと考えられた.肝梗塞に対する血漿交換と,続発する多臓器不全に対する持続的血液濾過透析が有効だった.HELLP症候群患者で分娩後に病態が悪化した場合は続発症の可能性も考え,精査する必要がある.