ブックタイトル第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集

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第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集

-461-O34-4 小児集中治療室におけるカテーテル関連血流感染症診断の問題点1)国立成育医療研究センター 手術集中治療部 集中治療科、2)国立成育医療研究センター 臨床研究企画室、3)国立成育医療研究センター 生体防御系内科部 感染症科喜久山 和貴1)、井手 健太郎1)、松本 正太朗1)、小林 徹2)、船木 孝則3)、宮入 烈3)、西村 奈穂1)、中川 聡1)【背景】カテーテル関連血流感染症(CRBSI)は小児集中治療室(PICU)においても重要な感染症であるが、米国感染症学会が提示するCRBSIの定義(2 セットの血液培養で中心静脈血が他部位血より2 時間以上早く陽性、またはカテーテル先端培養が血液培養と同一菌種)を満たすことは容易ではない。【目的】臨床的に診断治療されている中心静脈ラインに関連する血流感染症(CVL感染症)と、CRBSIの定義との乖離を検討し、問題点を明らかにすること。【方法】2012年7月から2015 年5月に当院PICUで、小児感染症科医と小児集中治療科医によって診断治療されたCVL感染症が、CRBSIの定義を満たしているかを後方視的に調査した。【結果】延べ8527 日のカテーテル留置期間に38件(35 例)のCVL感染症を認めた。中心静脈カテーテルの種類(挿入から診断まで日数の中央値:最小-最大)は、非埋め込み型22件(6日:2-35)、末梢挿入型10件(9日:2-25)、皮下埋め込み型6件(18日:5-150)であった。このうち17件(45%)はCRBSIの定義を満たさず、提出された培養検査は、血液培養1セットのみが3件、血液培養1セットとカテーテル先端(陰性)が7件、血液培養2セット(1セットは陰性または基準を満たさず)が4件、血液培養2セット(1セットは陰性)とカテーテル先端(陰性)が3件であった。【考察】小児では静脈穿刺採血が容易でないこと、細径のカテーテルからは逆血採血が難しいこと、再確保の困難さからカテーテル抜去が遅滞すること(カテーテル先端培養提出が抗菌薬投与の数日後になる)などによりCRBSIの定義を満たせないCVL感染症があることが想定された。2セットの血液培養提出や充分な採血量採取の徹底など日常診療の改善は必要であるが、同時にこのCRBSI の定義自体が小児においても妥当であるかの検討が必要と考えられた。O34-5 当院で経験したダニ媒介感染症の7 例 ~初診時にSFTS を鑑別できるか?~高知医療センター 救命救急センター喜多村 泰輔、山本 浩大郎、野島 剛、石原 潤子、大西 広一、田村 竜、村西 謙太郎【はじめに】2013 年に重症熱性血小板減少症候群(severe fever with thrombocytopenia syndrome,SFTS)の患者が確認され、報告が続いている。SFTS は, 発熱, 白血球減少, 血小板減少, 出血傾向, 血球貪食症候群, 播種性血管内凝固症候群などを呈し、重症化することが多く早期からの全身管理が必要となる。発症早期は発熱に加えて全身倦怠感、消化器症状・頭痛など非特異的な症状を示すことから一般的な感染症を疑うが、ダニ刺咬の疑わしい生活環境や発疹、ダニ咬傷痕を伴う痂皮があった場合には日本紅斑熱やツツガムシ病、SFTSなどのダニ媒介感染症との鑑別が必要となる。【対象】2012年4月から2015年5 月までに当院で診断・加療したダニ媒介感染症7例について診断名、発生時期、症状、白血球数、血小板数、ダニ媒介感染症を最初に疑った項目、予後について検討した。【結果】SFTS:3 例、日本紅斑熱:3例、ツツガムシ病:1 例であった。発生は4月と5 月2例、7月8 月10 月がそれぞれ1 例ずつであった。症状は全例に全身倦怠感と38 度以上の高熱及び食欲不振を認めた。受診時の血小板は低下していた。SFTSと診断した3例全例で白血球が2000 以下まで低下していたが、それ以外の症例では正常値もしくはそれ以上の値であった。最初にダニ媒介感染症を疑った項目は、発熱に加えて、痂皮や発疹と血小板の減少、凝固線溶系の異常であった。日本紅斑熱の1例を除いた6 例でDICに対する治療を行った。全例症状改善し、転院・退院した。【考察】ダニ媒介感染症の確定診断は、発熱、全身倦怠感に加えて発疹やダニ刺咬に伴う痂皮が明らかだった症例では容易にダニ媒介感染症を疑った。今回SFTS 全例で受診時の白血球数が明らかに低下しており、血液検査での『血小板に加えて白血球の明らかな減少』を認めた際には強くSFTS 疑う必要がある。O34-6 ICU におけるGram染色を取り入れた感染症診療の取り組み藤田保健衛生大学 救急総合内科日比野 将也、植西 憲達、多和田 哲郎、都築 誠一郎、神宮司 成弘、田口 瑞季、近藤 司ICUでの感染症診療においては、耐性菌への懸念や重症疾患が多いなどの理由から広域抗菌薬が使用される傾向がある。必然的に感染症診療のガイドラインでも広域抗菌薬が第一選択として推奨されていることが多く、それは同時にさらなる耐性菌のリスクが増えるという危険性も含んでいる。Gram 染色は起因菌の推定や抗菌薬の選択に重要な役割を果たすと考えられており、当院でもICU 内に設置してある簡易ラボを使ってGram 染色を行っている。これによりリアルタイムで起因菌を推定し、抗菌薬選択や治療効果の判定などに利用している。このGram染色を一つの参考所見として治療方針を決定するため、実際には感染症のガイドラインの推奨とは異なる抗菌薬選択をし、時にはスペクトラムを狭め、また時には敢えて広く選択することもある。しかし一方で、Gram染色は診療方針決定に有用ではないとの議論も散見される。今回我々はGram染色を利用した感染症診療指針の正当性を検討するため、「Gram染色の結果を培養結果との一致率」および「Gram 染色の結果をうけて選択した抗菌薬とガイドラインで推奨されている治療方針との相違」、そして「選択した抗菌薬を用いて治療した場合の患者のアウトカム」について検討をしたので報告する。