ブックタイトル第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集

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第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集

-460-O34-1 多白血球血症におけるβ-D gulcan測定法の基礎検討1)岩手医科大学 救急医学講座、2)岩手医科大学 臨床検査部菅 重典1)、高橋 学1)、稲田 捷也1)、成田 和也2)、山田 友紀2)、秋丸 理世1)、佐藤 諒1)、佐藤 正幸1)、佐藤 寿穂1)、井上 義博1)【緒言】現在、本邦で保険適応されている深在性真菌血症の診断には、血清補助検査であるβ-D glucan(以下BDG)が選択されることが多い.各種BDG測定法は感度、陽性的中立が各々低い.その要因として検体試料の成分と偽陽性要因がに着目した.現行法は検体材料として、多血小板血漿(Platelet-Rich-Plasma:PRP)を用いているが、血漿のみを測定しているため,正確なBDG 量を測定しているとは言い難い.この事から、HES 製剤を用い多白血球血漿(Leukocyte-Rich-Plasma:LRP)を作成し、真菌成分を含んだ血漿および白血球のBDG 量の検討を行った.【目的】本研究ではLRPにおけるBDG量測定の基礎的な実験を検証し、臨床応用の可能性を検討する.【方法】測定にはトキシノメーターMT-5500を用い、血漿前処理液及びリムルス試薬を添付文書に従い使用した.統計処理にはSPSSを用いp< 0.05 を有意差ありとした.【検討項目】1:HES 製剤・LRP のBDG 量の検討.2: アルブミン製剤混和血液におけるPRP-LRPのBDG値の比較.3:真菌混和血液におけるPRP-LRPのBDG値の比較.【結果】HES製剤,LRPによる偽陽性は確認できなかった.(n=10 mean0.83 p> 0.05)アルブミン添加偽陽性血液のPRP-LRP 間の比較においては有意差を認めなかった.(n=5 mean29.3.1vs24.6 p > 0.05)真菌混和血液のPRP-LRP 間の比較においてのみ有意差を認めた.(mean30.5vs52.9 n=5 p < 0.05)【考察】真菌混和血液でのみPRP - LRP 間に有意差を認め、これらから,PRP とLRP のBDG 量を同時測定しBDG Ratioを算出することで、深在性真菌症の診断率の向上が可能と考えている.今後臨床研究を行う予定である.口演 34 感染・感染対策② 2月13日(土) 13:30~14:30 第8会場O34-2 マウス緑膿菌性急性肺傷害モデルにおける血清抗体の有効性の検討1)京都府立医科大学 麻酔科学教室、2)京都鞍馬口医療センター木下 真央1)、加藤 秀哉2)、清水 優2)、濱岡 早枝子1)、秋山 浩一1)、内藤 慶史1)、佐和 貞治1)【目的】人工呼吸管理中の患者における肺炎の合併は、高い死亡率を認めるが、その起炎菌は緑膿菌である。これらの発症には緑膿菌の3型分泌システムに由来する病原毒性が関与しており、我々はこれまでに3型分泌システムに対する特異的抗体がその病原毒性を抑制し、肺傷害や敗血症を軽減できることを報告してきた。今回、ヒト血清抗体が、これら3 型分泌システムに起因する病原毒性にどの程度効果があるかについて、マウス緑膿菌性急性肺傷害モデルを用いて検討した。【方法】ヒト血清から抽出した緑膿菌V抗原(PcrV)に対する抗体価の高いIgG(Hi-IgG)、低いIgG(Lo-IgG)およびPcrVモノクローナル抗体を使用した。それらに生食群を加え4 群に分け、緑膿菌とともに経気管的に肺に投与して感染を誘発した。【結果】Hi-IgG群はLo-IgG群と比較して生存率、体温の推移、肺内細菌数において有意な差を認めた。【考察】緑膿菌3型分泌システムの構成タンパクであるPcrVにはワクチン効果があり、このタンパクに対する特異抗体は毒性の抑制に有効であることが示唆された。O34-3 多剤耐性Acinetobacterに対するnorepinephrineの病原性増強作用と薬剤耐性誘導に関する基礎研究名古屋大学大学院医学系研究科 救急・集中治療医学分野稲葉 正人、松田 直之【はじめに】宿主ストレスホルモンの一つであるカテコラミン(CA)を細菌が感知し,病原性を高めるという報告があるが,現在までに多剤耐性Acinetobacter baumannii(MDRAB) とCA の関係性についての報告はない。今回MDRAB に対するnorepinephrine(NE)の作用について解析した。【方法】本邦の4 つの病院で分離されたMDRAB 25 株をパルスフィールド電気泳動にかけたところ,3 つのpulsotype - A,B,C に分類されたため,各々から1 株を代表して使用した。10 μ MのNE を含む培地と含まない培地で24時間後の細菌数,biofilm産生量,tigecyclineのtime-kill curveの解析,およびtigecyclineの耐性機構の一つであるefflux pumps(AdeABC, AdeIJK, Ade FGH)のmRNA 定量解析を行った。【結果】NE を含む培地の方が,全ての菌株で有意に増殖が促進され (control vs NE(+), A: 5.3 ± 0.4 vs 7.3 ± 0.1 log10 CFU(colony forming unit)/mL,B: 5.5 ± 0.3 vs 7.3± 0.1 log10 CFU/mL,C: 4.9 ± 0.4 vs 7.3 ± 0.1 log10 CFU/mL, P<0.01),biofilm産生量も亢進した(control vs NE(+)(OD575),A: 0.16 ± 0.01 vs 0.36 ± 0.07,B: 0.12 ± 0.02 vs 0.40 ± 0.03,C: 0.11 ± 0.04 vs 0.48 ± 0.08,P < 0.05)。また1,2,4 × MIC のtigecycline全てにおいて,NE を含む培地の方が20 時間後の生菌数が有意に増加し, adeB およびadeG のmRNA発現量も亢進していた(Fold expression of relative to control,A: adeB:4.86,adeJ:1.17,adeG:8.71)。【結語】世界のICU でMDRAB のアウトブレイクが脅威となっている。本研究でICU での使用頻度が高い薬剤であるNE が,MDRABの増殖やbiofilm 産生を促進させ,MDRAB のkey drug であるtigecycline に対する抵抗性を高めるという逆説的効果が初めて確認された。本結果は,ICU での長時間のNE 使用が,MDRAB 感染症の原因や遷延化に繋がり,ICUでのアウトブレイクに寄与する可能性を示唆するものである。