ブックタイトル第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集

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第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集

-454-O31-1 OTC 医薬品に含まれるジヒドロコデインの異常代謝に起因した小児オピオイド中毒1)富山大学 医学部 小児科、2)富山大学附属病院 集中治療部種市 尋宙1)、澁谷 伸子2)【はじめに】通常、薬物中毒は大量摂取することで症状が発現するものである。しかし、OTC 医薬品をごく少量のみ内服したにも関わらず、重篤な中毒症状を発現した小児の一例を経験した。その機序を考察するとともに、わが国のOTC医薬品における総合感冒薬のあり方について警鐘を鳴らしたい。【症例】4歳女児。既往として精神運動発達遅滞、筋力低下があり、近医にてフォローされていた。市販の総合感冒薬を内服して4 時間後に顔色不良、活気不良に気づかれ、紹介医を受診。体温42℃、SpO2 80%、心拍数220で末梢冷感あり、敗血症性ショックを疑われ、当科へ搬送後、ICU入室。輸液負荷や血管作動薬への反応が極めて不良であり、低血圧が遷延。種々の培養検査やウイルス学的検索を行ったが全て陰性であった。身体所見上、著明な縮瞳を認め、トライエージを施行したところ、オピオイド陽性が判明。ナロキソンを投与したところ、血圧が上昇し、状態は著明に改善した。その後、生命危機は脱したが、以前よりもADLが低下し、神経学的後遺症を認めた。中毒の原因として、薬物代謝に関連するCYP2D6 の異常によりこのような病態の説明がつくことから、患児の遺伝子多型を検索したところ、ultra rapid metabolizerであることが判明した。【考察】ジヒドロコデイン(DHC)はOTC 医薬品の総合感冒薬に咳止め成分として多くの製品に含まれている。自験例ではDHCからジヒドロモルヒネへの代謝が異常亢進し、オピオイド中毒をきたしたものと考えられた。わが国において0.5% 近くの頻度で同様のCYP2D6遺伝子多型が認められており、その場合にDHC を摂取することで、個人差はあるもののジヒドロモルヒネへの過剰代謝が起こり、中毒症状を起こす可能性がある。OTC医薬品にDHCが含まれることの危険性について検討が必要である。口演 31 中毒・体温異常② 2月13日(土) 11:00~12:00 第7会場O31-2 モダフィニル中毒によりくも膜下出血およびPRESを呈した1 例1)多摩総合医療センター 救命救急センター、2)昭和大学医学部 救急医学講座小野 将平1)、清水 敬樹1)、鈴木 茂利雄1)、荒川 裕貴1)、濱口 純1)、萩原 祥弘1)、金子 仁1)、光銭 大裕1)、森川 健太郎1)、三宅 康史2)【症例】30代男性 22歳からうつ病に対して通院,1年前からインターネットでモダフィニルを購入し内服,入院4日前からモダフィニル,睡眠薬を連日加療内服していた.徐々に意識障害が出現し4日後に救急要請.来院時E2V1M5/GCSの意識障害を認め,トライエージにてベンゾジアゼピン系陽性であり,睡眠薬中毒による意識障害と考え入院.第2病日E1V1M3/GCSまで意識レベル低下,頭部CTで著明な脳浮腫を認めた.モダフィニル中毒による頻呼吸および低CO2血症による脳循環の低下にともなう脳浮腫と診断.呼吸状態および脳循環の安定化のために同日気管挿管施行し,沈静下に呼吸状態の安定化を図った.ICPモニタリング,脳低温療法,CHDFを開始した.第3病日ICP,CPPの上昇を認め,緊急頭部CTを施行しくも膜下出血を認めた.同日緊急脳血管造影を行ったが,明らかな出血源は認めなかった.マン二トールによる浸透圧利尿,脳低温療法,脳循環を保つ厳格な補液管理,呼吸器設定を行った.第4病日頭部CTではくも膜下出血は認めず,脳浮腫は改善傾向であった. 第12病日に施行した頭部MRIでは両側島皮質においてT2像で高信号を呈しADCmapでは信号低下せず,血管性浮腫の所見であった.経過およびMRI所見から,モダフィニル過量内服により血管内膜壊死を来し,くも膜下出血およびPRESを発症したと考えた.上記加療により意識レベルは改善し第18病日抜管,第21病日MRIは正常化しており,第24病日精神病院へ転院.【考察】覚醒剤中毒によるくも膜下出血の症例報告は散見されるが,その多くはAMP,MA,MDMAであり,モダフィニルの報告は見受けられない.脳血管造影検査では血管炎の所見を呈するものが半数を占めるが,本症例のように正常血管を呈するものも散見される.機序としては,圧上昇による高血圧性脳内出血の病態やfibrinoid angitisによる血管内膜壊死の可能性などが考えられる.本症例においてもMRIでPRESの所見を認めたことから同様のことが言える.O31-3 急性一酸化炭素中毒に対する新しい治療法としての光照射  ――照射強度の違いについてーー聖マリアンナ医科大学 救急医学鹿志村 剛、田中 拓、平 泰彦背景2010年本邦の中毒に起因する死亡 6,499症例中、一酸化炭素(CO)中毒による死亡は 4,120例と60%を超える。CO中毒はどこでも発生し、多数傷病者発生の可能性がある。死亡率は高く、遅発性脳障害の発生率も高率である。治療法はCOの吸入を防止する、高濃度酸素(O2)吸入、そして高気圧酸素療法(HBO)である。HBOは大規模な装置と経費を必要とし、またその治療効果については議論がある。どこでも簡便に実施できる新たな治療法の開発が望まれる。われわれは血液中の一酸化炭素結合ヘモグロビン(CO-Hb)への光照射がCOのHbからの解離を促進することに着目し、この原理をCO中毒の治療として臨床応用できないか、と考えた。目的光照射がCO-Hb からのCO解離を促進することを実証する。照射光の強度(明るさ)の差によるCO の解離率を検証する。方法in vitro でヒト血液にCOをバブリングし飽和CO-Hb を作成。非光照射群をコントロールとし、照度30 万Lux、40 万Lux、50 万Lux、60 万Lux、90 万Lux で光を照射した群を実験群とし、CO-Hb の残存率を経時的に測定した。結果照度が強いほどCO のHb からの解離は促進した。90万Lux光照射群では5 分後から有意に解離は促進し、20分後のCO-Hb率は、非光照射群: 86%に対して90万Lux光照射群: 12%と有意に低下した。考察CO暴露後のCO半減期は300 分といわれるが、暴露後出来るだけ早期に光照射をすることでこれを短縮出来る可能性が示唆された。5 分後から有意にCO 解離が促進された事で、既存のHBO などのO2 投与治療に加え光照射がCO中毒に対する新たな治療法となる可能性が示唆された。