ブックタイトル第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集

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第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集

-447-O27-4 フォンタン型手術時の乳酸値と短期予後との関係北海道大学病院 麻酔科山本 真崇、八木 泰憲、斉藤 仁志、森 敏洋、森本 裕二背景:昨今、小児心臓手術中からICU入室早期の乳酸値が、予後判定に有用という報告が散見される(J ThoracCardiovasc Surg2014;148:589)。しかし、Fontan 型手術においては報告が少なく見解も一致していない。そこでフォンタン型手術(グレンならびにフォンタン手術)において、周術期乳酸値と短期予後との関係を後ろ向きに調査した。方法:2011年8月から2015年2月までに、当院でグレン手術とフォンタン手術の両方を行った18 人の患者を対象とした。乳酸値は手術開始前(T1)、術中最高値(T2)、ICU 入室時(T3)に、ABL800(Radiometer, Copenhagen)を用いて測定した。短期予後は、1ヶ月後の生存、神経学的合併症、術後挿管時間、ICU滞在日数を調査した。T1に対するT2、T3の乳酸値を対応のあるt検定で比較した。術後挿管時間とICU滞在日数は中央値で2群に分け、ぞれぞれの時間における乳酸値の平均値を対応のないt 検定を用い比較した。またROC曲線を描き、曲線下面積(AUC)を求めた。結果:対象疾患は単心室5、三尖弁閉鎖症などの先天性弁膜疾患8、左心低形成2、その他3であった。グレン手術は平均生後6ヶ月、フォンタン手術は24ヶ月で行われた。T1-3の乳酸値(平均(標準偏差))は0.98(0.42)、1.61(0.60)、1.91(0.88)mmol/Lで、T2とT3の値はT1と比較して有意に上昇していた。術後1ヶ月の死亡や神経学的合併症は認めなかった。術後挿管時間とICU滞在日数を中央値で2群に分け、それぞれの乳酸値を比較したが、全症例ならびに手術別でも有意差を認めなかった。AUC は最大でも0.7以下であった。結論:フォンタン型手術においても、乳酸値は上昇するが、短期予後との間には有意な関係を見いだせなかった。O27-5 スライド気管形成術における心血管同時手術は術後のリスク因子となり得るか1)静岡県立こども病院 小児集中治療科、2)静岡県立こども病院 循環器集中治療科、3)鹿児島大学病院 小児科小林 匡1)、川崎 達也1)、粒良 昌弘2)、三浦 慎也2)、中野 諭2)、濱本 奈央2)、大崎 真樹2)、櫨木 大祐3) 先天性気管狭窄症は,狭窄が高度の場合には速やかに診断し外科的介入を行う必要がある.その治療成績はスライド気管形成術の普及により飛躍的に向上した.心疾患合併例では同時手術を行うこともあり,その最大の利点は一回の開胸操作と人工心肺で気管・心臓両方に介入できることであるが,一方で深部感染症のリスク増大と呼吸循環管理の長期化が懸念される. 2008年以降当院で9例のスライド気管形成術が行われており,いずれも先天性心疾患を合併していた.こらにつき後方視的検討を行った. 9症例のうち,心血管手術+スライド気管形成術(同時手術群)は6例(根治術5例,姑息術1例),スライド気管形成術のみ(単独群)は3例だった.単独群のうち2 例は頚部アプローチにより人工心肺を使用せず手術が可能であった.術後管理に関して,いずれの症例も術後3-7日間の筋弛緩薬を併用した不動化深鎮静管理を行い,その後更に4-7日間の人工呼吸管理を行った後に抜管した.同時手術群の1 例(姑息術例)が術前からECMO 管理を要し術後も離脱出来ず術後23日目に死亡したが,これを除いた症例では人工呼吸管理期間に有意差は認めなかった(平均18.0 日 vs. 14.2日:p=0.561).循環管理では術後カテコラミン使用期間で同時手術群に長い傾向を認めたが,有意差は認めなかった(平均4.8 日 vs. 0.3 日:p=0.055).合併症は,同時手術群で縦隔炎による開心洗浄ドレナージを要した症例と緊張性気胸による心肺停止例を1例ずつ認めたが,いずれも後遺症なく軽快した.その他,上室性頻拍や一時的な完全房室ブロック,気管気管支軟化症,一過性声帯麻痺を認めた.単独群では重篤な合併症は認めなかった. 開胸術に伴う合併症は認めたが死亡例はおらず,同時手術に起因する重篤な合併症は認めていない.単独手術例も同時手術例も術後経過は良好であり,心血管手術とスライド気管形成術の同時手術は比較的安全に行えると考える.O27-6 二心室修復術後にplastic bronchitisを発症した両大血管右室起始の小児例1)兵庫県立こども病院 循環器内科、2)兵庫県立こども病院 心臓血管外科祖父江 俊樹1)、田中 敏克1)、長谷川 智巳2)、圓尾 文子2)【はじめに】plastic bronchitisは、鋳型栓の形成により気管の閉塞を起こし重篤化する死亡率の高い疾患である。心疾患を有す児の場合、フォンタン型手術後の児でしか報告がない。故に、フォンタン循環に特有の中心静脈圧(CVP)が高くなりやすい事が原因ではないかといくつかの文献で考察されているが、未だ原因は判明していない。今回我々は、フォンタン型手術後ではなく二心室修復後であるにも関わらず、plastic bronchitisを発症した先天性心疾患の小児例を経験したので報告する。【症例】5歳男児。既往歴は、両大血管右室起始、単一冠動脈肺動脈起始、左先天性横隔膜ヘルニア、気管支喘息。38週3日2254gで出生。日齢2に左横隔膜ヘルニア修復術を施行。日齢9 に動脈管クリップ閉鎖術及び肺動脈絞扼術を施行。生後7か月の心臓カテーテル検査時に単一冠状動脈肺動脈起始が判明し、準緊急でDKS吻合術+Rastelli術+心房中隔閉鎖術を施行。5歳時に下気道感染+気管支喘息発作で入院、入院2日目に無気肺から呼吸不全。気管支鏡検査にて気管支の鋳型状栓を認め、plastic bronchitisと診断。鋳型栓除去を繰り返しながら、利尿剤による浮腫軽減、ステロイドによる喘息コントロール、理学療法を行う事で状態は安定化。心臓カテーテル検査にてCVP19mmHg と高値、右室圧も高値である事が判明。Rastelli 導管の狭窄がCVP 高値の一因と考え、導管交換術を施行。術後の心臓カテーテル検査ではCVP13mmHgまで改善。その後退院でき安定している。【結語】今症例は、フォンタン型手術後ではないもののCVP 高値であり、plastic bronchitisの発症にCVP高値が関与している事を強く示唆する貴重な症例である。