ブックタイトル第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集

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第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集

-435-O21-4 心臓血管外科術後早期離床の有用性:せん妄における看護ケア1)社会医療法人近森会 近森病院 集中治療室、2)高知県立大学谷脇 和歌子1)、田井 遥1)、三好 奈央1)、山辺 亮平1)、手嶋 英樹1)、入江 博之1)、井上 正隆2)[はじめに]せん妄予防のひとつとして早期離床は有用だと報告されている。ICU看護師として術後に早期離床が可能となるように術当日より十分な睡眠を確保する援助、離床前に十分な鎮痛が達成できるような鎮痛剤の投与を含む除痛ケア、多職種と連携して離床を達成できるよう調整を行っている。術後せん妄に対する早期離床の有用性、及びせん妄発症因子と思われる項目を検討し、具体的な看護介入が示唆されたため報告する。[方法]2013 年7月から2015 年7月に当院心臓血管外科において緊急手術を除く、待機手術患者計238例を対象とした。手術翌日に歩行訓練が実施可能な場合を、早期離床と定義した。せん妄の定義はICDSC(Intensive Care Delirium Screening Checklist)の1 日の平均得点を4 点以上とした。196例が早期離床群で、非早期離床群は42 例であった。手術当日から術後3日目まで、せん妄発症率、せん妄発症因子と思われる項目(睡眠、食事、痛み、鎮痛剤使用、ICU在室日数)、及び早期離床状況の検討を行った。[結果]せん妄は早期離床群では53例(26%)、非早期離床群では31例(74%)に認められた。せん妄発症因子と思われる項目に関しては単変量解析では2群間に有意差を認めなかった。術後1日目の歩行距離が長い症例ほどICDSC の得点が低くなるという相関を認めた(r=-0.44)。また術後1 日目の歩行距離とICU在室日数にも相関を認めた(r=-0.70)。そして術後1日目に歩行が可能になると、翌日も継続して歩行が可能であり、食事も良好な摂取率を認めた。この状況でのせん妄発生は認められなかった。[まとめ]当院心臓血管外科において術後1 日目に歩行が可能な患者にはせん妄発症が少なく、せん妄予防に有用であった。大侵襲を伴う心臓血管外科術後患者におけるせん妄ケアは、十分な除痛と、活動と休息のバランスを確立できる看護を提供するシステムを徹底することが望ましいと思われる。O21-5 CAM-ICUでは評価できない『せん妄』 ~言語聴覚士の視点より~1)医療法人徳洲会 福岡徳洲会病院 リハビリテーション科、2)医療法人徳洲会 福岡徳洲会病院 集中治療センター山家 貴仁1)、江田 陽一2)現在ICU ではせん妄評価としてCAM-ICUが広く使用されているが、「せん妄なし」と評価されているにも関わらず、言語聴覚士(ST)が介入するとせん妄ではないかと疑われる患者によく遭遇する。今回、ADL自立の80歳女性に対し弁置換術、弁形成術が行われた。術前からSTが介入し、術前ミニメンタルテスト(MMST)は23点であった。術後1日目は18点と下がったが、術後4日目には再び23 点に改善した。看護師によるCAM-ICUは常に「せん妄なし」の評価であった。MMST 上も精神機能面は元の状態に戻ったと思われたが、何を言っているのか読み取れない発語、せかせかと落ち着かない態度、表情の変化が乏しく険しい顔つきなど、術前の様子とは明らかに異なる症状が持続してみられており、せん妄が遷延しているという印象を受けた。一般病棟へ転出後、看護師および家族から「認知症がひどくなった」と認識され、結果的に自宅退院困難となった。この経験から心臓血管外科患者10 人に対して術前、術後、ICU 退出時にMMST、レーブン色彩マトリシス検査(RCPM)を実施した。看護師によるCAMICUでは10人中せん妄は1 人で、STによるCAM-ICU では10 人中せん妄は2 人、術前評価時の様子と異なると感じたのは4人、せん妄なしは4人であった。術前と様子が異なる4 人の症状は、読み取れない発話、表情の変化が乏しい、無目的な行動、状況判断力の低下などであり、CAM-ICU の項目には無い。また入院前の基準線が把握できないと精神状態の急性変化の評価が難しく、全体評価でせん妄と判断する条件も厳しくなるため、CAM-ICUでは見逃してしまうせん妄が存在するのではないかと考えられた。