ブックタイトル第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集

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第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集

-416-O12-1 来院時凝固障害は重症鈍的外傷の独立した予後因子か?りんくう総合医療センター 大阪府泉州救命救急センター石井 健太、水島 靖明、井戸口 孝二、渡部 広明、松岡 哲也【背景・目的】凝固障害は低体温、アシドーシスと並んで外傷死の三徴の一つとされる。来院時の止血・凝固系検査の中に重症鈍的外傷の予後予測因子があるか検討した。【対象・方法】2006 年1 月から2014 年12 月に当センターへ入院となったInjury Severity Score(以下ISS)16 以上の鈍的外傷で、来院時心肺停止を除いた1128 例を後ろ向きに検討した。在院死亡を目的変数とし、年齢、ISS、Revised Trauma Score(以下RTS)と来院時止血・凝固系検査値を説明変数としたロジスティック回帰分析を行った。【結果】1128 例中、在院死亡は145 例(12.8%)であった。死因は一次的脳損傷79 例(54.5%)、出血47 例(32.4%)、多臓器不全・敗血症9例(6.2%)、高位頸髄損傷4例(2.8%)、その他6例(4.1%)であった。年齢、ISS、RTSに来院時血小板値、プロトロンビン時間%(以下PT%)、活性化部分プロトロンビン時間(以下APTT)、フィブリノーゲン値、D-dimer値、アンチトロンビン3値を説明変数に加えたロジスティック回帰分析では、年齢、ISS、RTS に加え、PT%(調整オッズ比0.971, 95%CI, 0.959-0.983; P <0.001)、D-dimer(調整オッズ比 1.008, 95%CI, 1.005-1.010; P<0.001)が独立した予後因子であった。説明変数に来院時体温、BaseExcess、血清乳酸値を加えても、PT%、D-dimer は独立した予後因子であった。また、転院症例および病院前診療で輸液が行われた症例を除いた762例における解析、頭部単独外傷を除いた753例の解析においても、PT%とD-dimerは同様に独立した予後予測因子であった。【結論】重症鈍的外傷において来院時PT 延長およびD-dimer高値は独立した予後不良因子である。口演 12 外傷・熱傷① 2月12日(金) 13:30~14:30 第8会場O12-2 頭部外傷における脳実質損傷の指標としてのD-dimerの可能性独立行政法人 国立病院機構 災害医療センター 脳神経外科八ツ繁 寛、早川 隆宣、住吉 京子、重田 恵吾、百瀬 俊也、榎本 真也、佐藤 慎、平 直記【目的】頭部外傷において、他の外傷と比較して凝固線溶系の異常が比較的多くみられる。近年転帰との関係が示唆されおり、重要なmakerともいえる。今回、急性硬膜外血腫(AEDH)と急性硬膜下血腫(ASDH)の比較的重症の症例と対象とすることで、凝固線溶系の検査所見が脳実質損傷の評価となりうるか検討した。【方法】2008年1月から2015年4月までで開頭手術を行った重症のASDHとAEDHを対象とした。来院時の採血結果を収集し、統計学的に検討を行った。【結果】血腫除去術を施行したのはASDH76例、AEDH42例であった。手術は、開頭血腫除去と脳圧亢進が予想される場合は外減圧と硬膜形成を追加した。退院時GOS は、AEDH のGR・MD で78.6%、ASDH のGR・MD で25%であり、ASDH の転帰は不良であった。また、Mann-Whitney のU の検定で、118 症例の血小板数、PT-INR、フィブリノーゲンを比較すると有意差はでなかった。欠損値もあったため51 例で比較したD-ダイマーはASDH で有意に高値であった。【考察】AEDH は、脳実質損傷が硬膜下血腫に比して一般的に少なく、転帰良好であるとされる。ASDHは、脳挫傷などの脳実質損傷の合併も多く、他の頭蓋内血腫に比較して転帰不良とされている。頭部外傷では、脳組織に豊富に存在する組織因子が血液と接触することにより、凝固亢進を認め、線溶も活性されると考えられている。したがって、脳実質損傷が強いと思われるASDHでD-ダイマーが有意に高いことから、D-ダイマーが脳実質損傷の程度を示す指標となりうる可能性が示唆された。O12-3 高齢外傷患者における急性腎傷害に関する前向き観察研究1)倉敷中央病院 救急科、2)倉敷中央病院 総合診療科、3)倉敷中央病院 腎臓内科藤永 潤1)、栗山 明2)、島田 典明3)【目的】重症患者における急性腎傷害(AKI)は死亡率の増加と関連しているとされる。過去の海外における後ろ向き観察研究で、外傷患者におけるAKIの危険因子や発症率が報告されているが、患者層は比較的若年である。本研究の目的は高齢社会のわが国での外傷患者におけるAKI の発症率や危険因子を把握することにある。【方法】2014 年6月から2015 年5月、当院救急ICU に入室となった全ての外傷患者を対象とした。外来診療のみの患者、救急外来で死亡した患者、入院の時点で緩和的医療を行うこととなった患者、既に維持透析を行われている患者は除外した。AKI の診断、重症度はKidney Disease Improving Global Outcomes(KDIGO)の基準に基づいて行った。さらに65 歳以上の高齢患者に関しAKI発症の危険因子を検討した。【成績】患者は合計154名でinjury severity score の中間値は19(IQR,13-26)、年齢は69 歳(IQR, 45-79)であった。AKI の発症率は14.3%(n=22)でStage 1は17名(77.3%)、Stage 2は2名(9%)でStage 3は3名(13.6%)であった。65歳以上ではAKIはより高頻度に認めた(20.5%vs 6.0%, p <0.01)。単変量解析ではアンジオテンシン変換酵素阻害薬(ACE-I)やアンジオテンシンII 受容体拮抗薬(ARB)との関連(OR 3.47; 95% CI, 1.19-10.17)や慢性腎臓病との関連(OR 13.79; 95% CI, 3.09-61.54)が示唆された。過去に指摘されているような糖尿病や造影剤は危険因子とならなかった。結論:高齢の外傷患者では若年者よりAKIを発症しやすい。CKDやACE-I/ARB の服用はAKIの発症の危険因子であることが示唆された。