ブックタイトル第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集

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第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集

-400-O4-1 国内初の乳児施設間ECMO搬送を行い救命した、百日咳感染に伴う呼吸不全の一例1)東京都立小児総合医療センター 救命・集中治療部、2)あいち小児保健医療総合センター 集中治療科渡邉 伊知郎1)、齊藤 修1)、居石 崇志1)、本村 誠1)、中山 祐子1)、新津 健裕1)、清水 直樹1)、池山 貴也2)【背景】ECMO は小児の重症呼吸不全・循環不全に対する救命の要である。海外では通常の治療では安全に搬送すらできないこれら重症小児患者に対して、ECMO 搬送チームが専門施設への搬送を行うが、わが国ではこの体制は整っていない。今回国内で初の乳児の施設間ECMO 搬送を行い、救命に至った一例を経験したため報告する。【症例】愛知県で生後2ヶ月の女児が百日咳感染に伴い呼吸不全を発症。前医でiNOを併用した、HFOV による呼吸管理でも酸素化が維持できず、VV-ECMO が導入された。人的不足より長期管理継続は困難と判断され、当院へ搬送依頼があった。当院救命救急科・集中治療科医、看護師、臨床工学技士、および紹介元施設の集中治療科・小児外科医によるチームで、都内当院まで約340kmを陸路で搬送した。搬送中一時的なECMO流量の低下、加温水の漏出を認めたが、有意な有害事象なく帰還。入院後2 日目(ECMO 病日17)に肺高血圧症が増悪しVAECMOへの転換を要したが、ECMO 病日27 にVV-ECMO へ再転換、ECMO 病日50 にECMO 離脱に成功した。当院入院3ヶ月後に気管挿管・人工呼吸管理下に、前医へ後送搬送し、最終的には人工呼吸器からの離脱・神経学的に良好な転帰へと繋ぐことができた。【考察】今回の事例発生前、当院では画像検査等の院内ECMO 搬送や、院内・院外でのECMOトラブルシューティングに関するシミュレーションへの多職種での参加を通し、ECMO 搬送の事前準備を行った。他施設の協力の下、マネキンを用いたECMO施設間搬送のシミュレーションも行った。その背景にはこれまで搬送が必要と判断された症例の中に、搬送中の心停止や、搬送自体を断念せざるを得ないといった、御家族および関係した医療者の世の辛酸を嘗める思いをした経験があった。それら救命困難例にはECMO搬送によって救命し得た例も多く含まれていると考えられ、今後新たな救命手段としてその安全性と質を高めて適応を増やしていくことが肝要である。口演 4 気道・呼吸・呼吸管理④ 2月12日(金) 13:30~14:30 第3会場O4-2 致死的気道閉塞の治療にVeno-Venous Extracorporeal Membrane Oxygenation(VV-ECMO)を使用し救命した一例日本医科大学付属病院 外科系集中治療科永本 盛嗣、梅井 菜央、市場 晋吾、杉田 慎二、竹田 晋浩、坂本 篤裕【緒言】気道閉塞に対する治療は気管再建術、レーザー焼灼、バルーン拡張術、ステント挿入などがあるが、たいていの場合気管支鏡での閉塞解除が可能である。しかし、大きい腫瘤がある場合、低酸素血症のため気管支鏡が難しいことがある。今回、左主気管支閉塞に対しVeno-Venous Extracorporeal membrane oxygenation(VV-ECMO)を使用することで安全に気管支鏡での閉塞解除が可能となった症例を報告する。【症例】70 歳男性。冠動脈バイパス術、ペースメーカー植え込み術の既往がありワルファリンを内服中。咳嗽・血痰を主訴に他院を受診。心不全の増悪による呼吸不全を疑われ3日間人工呼吸管理されたが、呼吸状態が改善しないために当院へ転院となった。来院時の呼吸状態はFIO2 1.0, PEEP 12cmH20 でpH 7.263, PaO2 50.8mmHg, PaCO2 56.5mmHg,HCO3- 24.7mmol/Lであり、胸部X線写真は左肺野全体の透過性低下がみられた。気管支鏡検査では左主気管支を完全に閉塞する凝血塊があった。胸部CT では左主気管支に79 × 67mmの腫瘤影および縦隔リンパ節腫大があり、ワルファリン内服による気管支粘膜腫瘍からの出血による凝血塊の閉塞を疑った。凝血塊除去を試みるも困難であり、気管支鏡検査中にさらに呼吸状態が悪化し同条件でpH 7.12, PaO2 47.1mmHg, PaCO2 84.0mmHg, HCO3- 26.2mmol/L まで低下したため、VV-ECMO導入下で気管支鏡を施行し凝血塊除去を行う方針とした。VV-ECMO導入後連日気管支鏡を行い、導入4 日目に凝血塊を全て除去し気道は開通した。さらに腫瘍部の生検を行い確定診断に至った。VV-ECMO導入5 日目に胸部X線写真上左肺野の透過性低下が改善しており、酸素化良好であったためVV-ECMO を離脱した。【結語】本症例ではVV-ECMO を導入することで、患者を低酸素血症に陥らせず安全に気管支鏡を行い腫瘍による凝血塊を除去し、確定診断と次の治療へのステップとなる”Bridge to advanced therapy”が可能となった。O4-3 気管切開孔用二腔気管支チューブを用いて人工呼吸器離脱に成功した術後有瘻性膿胸例広島市立広島市民病院 麻酔集中治療科松本 森作、小林 寛基、青山 文、寺田 統子、武藤 渚、釋谷 和子、鷹取 誠ICU で分離肺換気を要する病態において二腔気管支チューブ(double lumen tube; DLT)が有用である。人工呼吸器離脱に関して1 日1 回鎮静中断(daily interruption of sedation; DIS)が推奨されているが、DLT 使用中の患者の鎮静中断は容易でない。今回、分離肺換気を要する右肺有瘻性膿胸からARDS を発症した症例に対し気管切開孔用DLTを使用し人工呼吸器離脱に成功した例を経験したので報告する。症例:68歳男性。右肺癌に対して拡大スリーブ切除術が施行されたが、術後気管支断端瘻からMRSA膿胸を発症した。右胸郭開窓術を施行し、連日胸腔内洗浄を行った。開窓術後7日目から急速に呼吸不全が進行、肺浸潤影を認め重症ARDS と診断した。断端瘻からのリークが継続していたためDLTを挿管しICUに入室、分離肺換気とした。挿管後はオピオイド主体に鎮静を図るもファイティングを繰り返すため、やむなく筋弛緩薬を併用した。ICUでの加療により呼吸状態は改善したため呼吸器離脱に向け鎮静薬減量を試みたがチューブ違和感が強く容易に不穏となり、DIS 失敗を繰り返した。断端瘻からのリークが続いていたため分離肺換気継続は必要であったが、DLT による呼吸管理では鎮静期間が延長すると考えられた。気管切開による鎮静薬減量の可能性を期待し気管切開孔用DLT(トラキオパートTM)を外科的に挿入した。翌日DIS施行したところ穏やかに覚醒しその後は少量のオピオイドでRASS-1程度に管理することが可能であった。入室後20日目にリーク消失を確認し、陽圧換気の必要もなくなったため単孔気管切開チューブに入れ替え、呼吸器離脱に成功した。考察:分離肺換気を必要とする呼吸不全患者の呼吸器離脱に気管切開孔用DLT を使用した。鎮静薬の減量が可能となりより早期に呼吸器離脱が可能であったと考えられた。