ブックタイトル第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集

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第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集

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第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集

-382-ES4-3 重症敗血症に対するトロンボモジュリン製剤の治療バンドルにおける位置づけ順天堂大学大学院救急災害医学教室/順天堂大学医学部附属浦安病院救急診療科井上 貴昭敗血症は、未だ世界的にも死亡率40%以上の予後不良の病態であり、surviving sepsis campaign guideline(SSCG)や、本邦では日本版敗血症診療ガイドラインに代表される各種集約的治療により、その予後の改善に努めてきた。SSCG2012が公表されて数年を経過し、一部見直しを要する点も報告されている。特に、Disseminated Intravascular Coagulation(DIC)に関する対応策は、欧米と本邦と大きく異なるところであるが、2012年に公表された日本版敗血症診療ガイドラインでは、敗血症性DIC対策についてその推奨度が明らかにされた。その後本邦を中心に抗DIC治療薬に関する数々の報告がなされ、2015年に日本集中治療医学会と日本救急医学会により、改訂された新しいガイドラインでも、抗DIC薬の見直しが加わった。 我々は、敗血症性DIC病態の本態である、“炎症と凝固のcrosstalk” の観点から、白血球の流動性に注目し、敗血症性DIC の重症度評価・治療効果判定に取り組んできた。またこれまで、“敗血症を確実に診断できるバイオマーカーはない”とされている敗血症の予後予測のためのoxidative stress の定量評価の有効性を報告してきた。本レクチャーでは敗血症、敗血症性DIC に関する各種集中治療を見直し、現状のガイドラインから変わりつつある治療方針と、新たな推奨指針に注目し、自験例で得られた知見を加味して報告する。ES4-4 敗血症性DIC のパラダイムシフト福岡大学医学部救命救急医学講座石倉 宏恭 敗血症が重症化(severe sepsis,septic shock)した場合、炎症反応の亢進と並行して凝固反応や免疫反応が異常亢進状態となり、その結果、血管内皮細胞傷害や血管内微小血栓形成が生じる。これらの変化は末梢循環障害を来し、組織は低酸素状態となり、最終的に組織低酸素の遷延は臓器障害へと進展する。 近年、特に凝固と炎症のクロストークが注目され、日本救急医学会はこの病態をSIRS 関連凝固異常(SIRS-associatedcoagulopathy;SAC)と呼称するよう提唱した。このSAC病態で中心的役割を担っているのがThrombin(Th)であり、敗血症性DIC において、Thを如何に制御するかが極めて重要となる。 Th の生体内制御物質としては血管内皮細胞上に存在するThrombomodulin(TM)と流血中に存在するAntithrombin(AT)がある。これまでのin vitroの報告ではTMは速やかにThに結合し、ATは緩やかに結合してTh を失活させる。また、TMはTh・TM複合体を形成した後、プロテインCを活性化プロテインC(以下、APC)に変換することで、間接的な抗凝固作用を発揮する。さらに、TMやAPCには抗炎症作用の存在も明らかとなった。以上より、TMは敗血症性DIC(つまり、SAC)の制御機構として不可欠な糖蛋白質であると考える。 これまで、敗血症の治療法に関する多くの臨床試験が実施されたにもかかわらず、良好な結果が得られていない。その理由のひとつは、これら試験の患者母集団の選択にあると考える。有益な結果を得るためには、適正な患者層に的確な薬剤を選択して投与する必要性がある。これを達成するためには、敗血症性DIC に対して、凝固・炎症の双方の病勢を理解した上で、治療に介入しなければならないと考える。 本セミナーでは、①DIC治療の必要性、②あらたな敗血症性DICの診断指針、③敗血症性DICの病勢から見たDIC治療薬の選択、④ DIC治療薬の臨床的評価について遺伝子組み換えヒトTM 製剤を中心に述べる。