ブックタイトル第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集

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第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集

-381-ES4-1 敗血症における感染症バンドル広島大学大学院医歯薬保健学研究院応用生命科学部門救急医学志馬 伸朗 感染症は、敗血症の根源となる病態であり、その適切な制御が敗血症の予後を決定づける重要な因子であることに異論はないだろう。2012 年に報告されたsurviving sepsis campaign guidelines(SSCG)においても、認識初期3 時間以内に行うべき“3 時間バンドル” の項目の中に、感染症診療に関連した「血液培養の採取」と、「広域抗菌薬の経験的投与」が含まれている。 これらに項目が初期バンドルに含まれることは極めて合理的である。すなわち、複数の臨床研究及びこれらをまとめたシステマティックレビュー/ メタ解析より、敗血症患者における初期経験的抗菌薬の適切性(感染巣に適切な移行能を有し、のちに判明する原因微生物に対して感受性を有するもの)こそが、敗血症患者の生命予後を改善させる一つの因子であることが判明している。また、原因微生物を同定し適切性を評価するためには、抗菌薬投与前に血液培養および想定される原因臓器からの膿性献体を微生物検査に提出しておくことが不可欠である。 初期抗菌療法の後、培養同定感受性結果に基づき適切な標的抗菌薬に変更することも忘れてはならない。より狭域の抗菌薬への変更、あるいは、可及的早期の抗菌薬中止は、抗菌薬の過剰投与とそれに伴う耐性菌選択リスクや抗菌薬関連腸炎等副作用の回避、手間やコストの減少に?がる重要な因子である。 これらを踏まえ、本講演では、現時点までに得られるエビデンスに基づいた敗血症時における抗菌治療の原則をまとめる。さらに、実際の臨床現場の現状も踏まえながら、敗血症時における感染症バンドルの提案を試みたい。イブニングセミナー 4 2月13日(土) 16:50~18:50 第2会場新たな敗血症バンドルを考察する~多臓器不全へ立ち向かう~ES4-2 臓器障害とDIC を考える兵庫医科大学 救急・災害医学講座小谷 穣治 欧米では、Surviving Sepsis Campaign guideline(SSCG)に見られるように、重症感染症の議論は1992 年の敗血症の診断基準策定以来、敗血症を対象として研究と議論が進んできた。一方、本邦における重症感染症の病態の解明と治療は、DIC エキスパートコンセンサスに見られるように、凝固障害を中心に議論が重ねられてきた。対象が敗血症とDICで異なってはいるが、日本救急医学会Sepsis Registry 特別委員会では、2010年6 月1 日から2011 年5 月31 日までの1 年間に、日本救急医学会Sepsis Registry委員会委員の所属する15施設の集中治療室に入院し、登録されたsevere sepsis症例に関する多施設共同前向き調査(JAAM SRAdvanced 、Japanese Association of Acute Medicine-Sepsis Registry-Advanced versionの略)を行った。対象となった624 例のデータ解析では、ショックのない重症敗血症の37.4%(128/342)、敗血症性ショックの58.2%(164/282)に急性期DIC診断基準によりDICと診断されていた。また、DICなし(n=332)、DICあり(n=292)それぞれで、蛋白分解酵素阻害薬が24(7.2%)、97(33.2%)、シベレスタットナトリウム水和物が43 例(13.0%)、54 例(18.5%)、antithrombin が37 例(11.1%)140 例(47.9%)、recombinantthrombomodulin(遺伝子組換えトロンボモジュリン製剤)が20例(6.0%)、90例(30.8%)に投与されていたことから、本邦における敗血症治療では、少なくとも抗凝固療法は多くの症例でSSCG2012 の推奨に従っていなかった。 本邦におけるDIC診断は、旧厚生省DIC診断基準(1988年改訂)により行われていたが、臨床症状がスコアに含まれているため、DICが進行しないと診断されにくく、治療開始が遅れる、フィブリノゲンが診断項目に含まれているために感染症では肝予備能低下の影響を受けやすい、などの問題があった。そこで、早期に治療を開始でき、それによって予後の改善が期待できる診断基準として、日本救急医学会DIC特別委員会により、急性期DIC診断基準が策定された。特筆すべきは、SAC(SIRS-AssociatedCoagulopathy)の概念を導入し、スコアにSIRS項目の数を入れたこと、旧厚生省DIC診断基準にあった臨床症状とフィブリノゲンを削除したこと、血小板減少率を反映させたことである。多施設共同前向き試験結果報告により、急性期DIC 診断基準が、旧厚生省DIC診断基準より早期にDICを診断することが可能であった、臓器不全および死亡率と有意に関連したことが報告されている。本講演では、これらSepsis Registry の結果、急性期DIC診断基準と臓器不全の関係、抗凝固療法としてのantithrombin、recombinant thrombomodulinの最近のエビデンスの整理を解説したい。