ブックタイトル第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集

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第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集

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第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集

-379-ES2-1 早期経腸栄養の重要性とたんぱく質投与の意義高知大学医学部麻酔科学・集中治療医学講座矢田部 智昭、横山 正尚近年,栄養療法は集中治療領域において重要な治療法の1つとして積極的に実践されている。特に,経腸栄養は腸管粘膜を維持し,バクテリアルトランスロケーションの予防に有用とされ,経静脈栄養よりも推奨されている。また,その開始時期についても,入室後,24-48 時間以内のできるだけ早期に開始することが各種ガイドラインで推奨されている。早期経腸栄養が死亡率や感染症を減少させるといわれるが、まだエビデンスが十分でないのも事実である。しかし、早期経腸栄養が明らかに有害であるというエビデンスもなく、「使える腸は使う」ことは生理的であり、重要な治療と考えられる。一方、栄養療法においては、その組成にも目を向ける必要がある。特にたんぱく質については、アメリカやヨーロッパのガイドラインにおいて,1.2-2.0g/kg/dayの投与が推奨されている。しかし,この蛋白投与量が患者予後を改善するという明確な根拠は今のところない。また,集中治療患者における予後には人種差が指摘されていること,また,体型も欧米人と日本人では異なっており欧米の結果を日本人に当てはめるには疑問もある。本邦における報告では,蛋白投与量は1.0-1.1 g/kg/dayを目標としており,実際の投与はその35%程度であるという報告もある。我々の施設における後方視的な検討でも,生存群と非生存群で蛋白・アミノ酸投与量に有意差はなく,0.6-0.7g/kg/日であった。しかし,ICU 退室時のリハビリの状態は,蛋白・アミノ酸投与量の多い群でいい可能性が示唆された。このことは,たんぱく質の投与は死亡率には寄与しないかもしれないが,ICUで治療された患者さんのその後の社会復帰には貢献する可能性がある。栄養療法はまだまだ,エビデンスが十分でない領域であるが,その意味について,今,分かっていることとこれから期待されることを本セミナーでは概説したい。イブニングセミナー 2 2月12日(金) 16:40~18:10 第10会場”栄養療法”初心者のための経腸栄養セミナーES2-2 流動食の種類と選択~ペプチド流動食~徳島大学大学院医歯薬学研究部代謝栄養学分野堤 理恵 重症患者の栄養管理の重要性は広く認識されてきつつある一方で、侵襲下においては有効な栄養指標や予後指標はなく、栄養投与量や適切な栄養組成についても統一した見解はないのが現状である。しかし、近年の報告によれば栄養投与法や栄養剤の選択が、臓器障害や感染制御に影響し、さらには予後をも左右しうることが証明されている。 栄養剤は窒素源の違いにより消化の必要性が異なり、半消化態栄養剤、消化態栄養剤、成分栄養剤にわけられる。半消化態栄養剤は,窒素源がタンパク質であり,消化の過程が必要であるのに対し,窒素源が低分子ペプチド(ジペプチドないしはトリペプチド)からなるものを消化態栄養剤、アミノ酸のみからなるものを成分栄養剤といい、消化吸収の低下した患者にも用いやすい。消化態栄養剤(ペプチド)は成分栄養剤(アミノ酸)よりもさらに消化吸収に優れており、下痢だけでなく便秘や腹部膨満の改善にも有用である。また、乳清ペプチド(ホエーペプチド)は、BCAAの多さ(タンパク異化抑制)、抗酸化能、インスリン抵抗性改善作用などの効果も報告されている。 本発表では、当院で導入している経腸栄養剤アルゴリズム、栄養剤の選択方法を紹介するとともに、演者らが検討してきたペプチド流動食の効果についてヒトおよび動物実験の結果を報告することとする。また、こうした栄養療法の中で生じてくる価格の問題、検査値異常時などにおける対処方法について当院での経験を紹介し、フロアのみなさんとよりよい栄養療法の進め方を議論したい。