ブックタイトル第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集

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第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集

-374-LS29自治医科大学附属さいたま医療センター 集中治療部讃井 將満 重症患者におけるエネルギー過少投与や過剰投与は予後の悪化と関連がある。実際、国際的研究でICU入室12日間のエネルギー投与量不足と60日死亡率に関連があったり[1]、特に静脈栄養による過剰投与が感染症の増加や人工呼吸器日数の増加などの弊害を生じることも示された[2]。これは、必要エネルギーを同定するための基準となるエネルギー消費量(energy expenditure:EE)を簡便かつ正確に知ることが難しかった、またEE を正確に知ることの患者アウトカムへの影響を検討する臨床データが不足していたという歴史と無縁ではないだろう。 そのような歴史的背景のもと、各種の予測式が発達した。中でもHarris-Benedict 式は最も普及した予測式であったが、求めた予測EEと測定されるEEとの間には大きな乖離があることが指摘され[3]、Harris-Benedict式を用いたEEの計算は過去のものになりつつある。それに代わり、25kcal/kg/日など、体重ベースに必要エネルギーを予測する極めてシンプルな方法が現在主流であるが、病態や臨床経過が加味されず、使用する体重も統一されていない(理想体重 vs 実体重 vs 他)ことに対する違和感は消えない。 このような不確実な予測式を使用しなければならないというジレンマ、臨床的に使用に耐え得る間接熱量計が登場しEE 測定が容易になったこと、それを用いた臨床的データの増加などもあり、現在専門家は「必要エネルギー量の決定には、間接熱量計を用いてEE を測定するのが最良であり、それが利用できない時に体重ベースの予測式を用いる」ことを推奨している[4]。 間接熱量測定法は、呼気ガス分析によって酸素消費量(VO2)と二酸化炭素産出量(VCO2)を測定し、安静時エネルギー消費量(resting energy expenditure: REE)と呼吸商(respiratory quotient: RQ)を算出する方法である。この算出には、1949 年にWeirによって発表されたREE(kcal/day)= 3.941 × VO2(L/day)+ 1.106 × VCO2(L/day)? 2.17 × 尿中UN(g/day)が使用されてきた(臨床的にはタンパク質代謝による熱量の割合を12.5% とし、[3.94 × VO2(ml/min)+1.11 × VCO2(ml/min)]×1.44が用いられることが多い)[5]。このように原理はシンプルである。しかし機器が進歩した現在でも、正確な測定にはいくつかのチェックポイントがあることに変わりない。 本講では、まず間接熱量測定法の原理や測定法に簡単に触れた後、栄養療法における間接熱量測定法の現在の臨床的立ち位置を明らかにしたい。さらに、間接熱量測定法を栄養管理だけでなく、呼吸管理や循環管理のツールとして応用する試みについてお話ししたい。引用文献:1. PMID 19572118、2. PMID 21714640、3. PMID 25605706、4. PMID 24434033、5. PMID 15394301ランチョンセミナー 29 2月14日(日) 12:20~13:20 第8会場ICUで間接熱量計をどのように活かすかLS301)京都大学メディカルイノベーションセンター、2)京都大学腎臓内科森 潔1)、横井 秀基2)、柳田 素子1,2)【腎障害バイオマーカーとしての尿中NGAL】1993年にneutrophil gelatinase-associated lipocalin(NGAL)は好中球の分泌顆粒から、機能未知でgelatinase B(4 型コラーゲン分解酵素)と一部共有結合している分泌蛋白として同定された。2002 年にNGAL は胎児腎の分化誘導活性を有することが示された。2003年にマウス腎虚血再灌流障害の3時間後からNGAL発現が亢進することが報告され、その後、数多くの腎障害モデルにおいて腎臓でのNGAL発現が増加することが確認されている。2005 年にヒト急性腎障害(AKI)において腎組織、血液、尿中にNGALが集積し、NGALの投与はマウス腎虚血再灌流障害を軽減することが明らかとなった。また2005年に小児開心術において、手術2時間後に尿中NGALが著しく増加した症例では、1-3 日後に血清クレアチニンが1.5倍以上に増加し、その時点でAKIと診断されることが報告された。2008 年には救急外来受診時に尿中NGAL高値を示した症例では、その後血清クレアチニンが増加しAKI と診断される可能性が高い一方、脱水である可能性は低く、血清クレアチニンよりも有用であった。2012年に日本人ICU患者の検討で、尿中liver-type fatty acid-binding protein(L-FABP)は腎実質性AKI・腎前性AKIの両方で増加するが、尿中NGALは腎前性AKI(脱水)ではあまり増加しないことが示された。また急性非代償性うっ血性心不全において、尿中NGALはフロセミド不応性を予測することが報告された。【NGALの増加する病態および作用】NGALの産生はAKI のほか、細菌感染・炎症・脂肪成熟・癌などでも亢進する。NGAL には上記の腎臓への作用のほか、大腸菌や結核菌の増殖を抑制する静菌作用、リンパ球や赤芽球へのアポトーシス誘導作用、血管周囲線維化の増強作用、脳内の炎症・細胞障害増強作用などもあることが明らかとなってきている。【尿中NGALの由来】慢性腎臓病を含めた種々の腎疾患を検討した結果、尿中NGALは糸球体、近位尿細管、遠位ネフロンのどの部位の障害によっても増加し、治療に伴って減少することが明らかとなっている。現在、AKIの尿中新規バイオマーカーとしてNGALのほかにL-FABP、KIM-1、IL-18、TIMP2などが注目されているが、いずれも分子量はアルブミンの1/3から1/2程度であり、正常血液中にも存在しており、絶えず糸球体から尿中へ濾過されているものと想定される。AKI においては、尿細管細胞が壊死・脱落しなくとも、近位尿細管の極性消失、再吸収能低下によって、血液由来蛋白の尿中排泄が起こるはずであり、このことは尿中バイオマーカーに普遍的に見られる現象として認識すべきであろう。ランチョンセミナー 30 2月14日(日) 12:20~13:20 第10会場尿中NGALからみたAKIバイオマーカーの発現機序