ブックタイトル第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集

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第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集

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第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集

-370-LS22-1 重症患者の発熱に対するアセトアミノフェン静注液の可能性を探る岡山大学病院集中治療部鈴木 聡1. 本邦におけるアセトアミノフェン静注液の位置づけ敗血症患者またはSIRS 患者における発熱に対する薬物解熱処置として、欧米ではアセトアミノフェンの使用がファーストラインとなっている。一方、2009年に行われた調査では、本邦における敗血症患者に対する解熱処置としてのアセトアミノフェン使用率は、欧米諸国と比べて非常に低い状況であった(Crit Care. 2012)。この背景としては、調査当時に本邦において使用可能なアセトアミノフェンの剤形が経口剤または坐剤しか存在しなかった事、使用可能な用量が少なかった事などが考えられる。その後、2013 年11 月に本邦でもアセトアミノフェン静注液が使用可能となり、また用量拡大も認められた。アセトアミノフェン静注液は他剤形と比較し、より早くより高く血漿中濃度のピークが得られ、安定した薬物動態を示す。そのため、即効性が求められる急性期患者や、内服薬の吸収が不安定な集中治療室患者では実用的であると考えられ、本邦でもその使用用途の拡大が期待される。2. 重症患者の発熱に対するアセトアミノフェン静注液は善か悪か?集中治療を要する重症患者において、発熱は頻繁に見られる症状の一つである。発熱により代謝の亢進、中枢神経障害の発生、患者不快感を生じるため、これらの生理学的ストレスを軽減する目的で、解熱処置が行われることが多い。しかし一方で、解熱処置によって血圧低下、免疫システムの抑制など生体にとって有害な作用を及ぼす可能性もある。現在のところ、重症患者において解熱処置を行うべきかどうかの明確なエビデンスは存在せず、アセトアミノフェン投与に関しても、果たして有益なのか、無益なのか、または有害なのか、一定の結論は得られていないのが現状である。本セミナーでは、昨年発表されたこれまでで最大規模のRCT であるHEAT trial(N Engl J Med. 2015)の結果も踏まえて、現在利用可能なエビデンスを整理し、集中治療での解熱処置としてのアセトアミノフェン静注液の現在の位置づけ、今後の展望に関して概説する。ランチョンセミナー 22 2月13日(土) 12:20~13:20 第11会場集中治療分野の鎮痛と解熱を考える ~アセトアミノフェン静注液の役割~LS22-2 集中治療分野でのアセトアミノフェンによる鎮痛愛知医科大学麻酔科学講座藤原 祥裕アセトアミノフェンは現在世界中で最も数多く使用されている鎮痛薬の一つである。1873年に開発されたアニリン系の鎮痛薬であるが、現在生き残っているアニリン系の鎮痛薬はアセトアミノフェンのみである。鎮痛効果としては必ずしも強力な作用を有するわけではないが、過量投与による肝障害以外危険な副作用もほとんど起こさないため、数多くの一般用医薬品にも含有されている。したがって、集中治療を受ける重症患者にも比較的使用しやすいと一般的には考えられている。アセトアミノフェンはそれ自身では鎮痛薬として不十分かもしれないが、マルチモーダル鎮痛の一環として、オピオイドなど他の鎮痛薬や区域麻酔と併用しそれらの使用量を減ずることによって、それらの副作用、合併症を減らしながら、より質の高い鎮痛を実現できると期待されている。 大変興味深いことに、アセトアミノフェンは初めに合成されてからすでに100年以上経過しているにもかかわらず、その正確な鎮痛機序は明らかにされていない。しかし近年、中枢性、末梢性鎮痛機序に関する研究が進み、その機序が明らかになりつつある。従来、アセトアミノフェンは非ステロイド消炎鎮痛薬と異なりシクロオキシゲナーゼに対する影響はないといわれてきたが必ずしもそうともいい切れないことが解明されてきた。また、非ステロイド消炎鎮痛薬に比べ、アセトアミノフェンはアスピリン喘息の誘発、消化性潰瘍、腎機能障害、抗血小板作用などの副作用が少ないと考えられてきたが、これらの副作用と全く無縁というわけでもない。アセトアミノフェンが喘息を誘発する可能性は少ないが、幼少時にアセトアミノフェンを多用するとその後喘息を発症しやすくなることが知られている。また、アセトアミノフェンは血小板機能には影響を与えないが、ワルファリンの代謝に影響するため、ワルファリンを内服している患者では注意が必要である。アセトアミノフェンの過量投与は急性劇症肝障害の原因としては有名であるが、肝機能障害の患者に対する通常量のアセトアミノフェン投与が肝機能を悪化させるか否かについては論争がある。 いくつかの研究が集中治療領域におけるアセトアミノフェンの有用性と安全性を証明しているが、さまざまな理由で集中治療室における重症患者に対する使用をためらう医師も少なくない。こうした懸念が合理的なものであるか否か、エビデンスに基づいて検証する。