ブックタイトル第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集

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第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集

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第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集

-338-CR13-3 Do Not(Attempt)Resuscitate, DN(A)R指示の歴史と現状1)済生会熊本病院 検体検査管理室、2)熊本大学医学部附属病院、3)日本大学医学部附属板橋病院 救命救急センター、4)松江赤十字病院 集中治療科、5)呉共済病院 麻酔・救急集中治療部、6)済生会山口総合病院 麻酔科・集中治療科、7)国立病院機構 大阪医療センター 集中治療部、8)北海道大学病院 先進急性期医療センター澤村 匡史1)、吉里 孝子2)、木下 浩作3)、橋本 圭司4)、石川 雅巳5)、田村 高志6)、木下 順弘7)、丸藤 哲8) 米国で1960 年に閉胸式心臓マッサージを伴う蘇生方法の有効性が報告されてから,胸骨圧迫,人工呼吸,電気ショックが心停止患者への蘇生処置(Cardio-Pulmonary Resuscitation, CPR)として広がっていった。当初は術中の心停止,突然の心停止などを対象に施行されていたとされるが,具体的な適応や,実際の蘇生率,蘇生後の予後などが理解されないまま広く心停止患者へ施行された。その結果,悪性腫瘍の末期の患者を初めとする,本来適応ではない患者にまでCPR が施されるようになり,やがてこれに疑問を持つ者は,CPRを施さないDo Not Resuscitatie(DNR)という指示を暗黙のうちに出すようになる。その決定は医療者の独断の場合もあったとされ,これが問題視される。1974 年American Medical Association が,心停止でもCPR の適応とはならない患者がいることに言及し,DNR指示は診療録に明記されるべきであるとした。この後終末期医療をめぐる裁判,立法が相次ぐのであるが,どれも共通しているのは自己決定権の尊重を重視する事である。また,宗教界からも声明が出され,大統領委員会報告書にも盛り込まれるなど,米国では医療界のみではなく広くDNRが議論された。1991年には自己決定権法,ジョージア州でのDNR 法,翌年のイリノイ,モンタナ州でのDNR 法が成立するなど,法的にもDNR が許容,保護されるようになっていく。さらに,当時のJoint Commission on Accreditation of Healthcare OrganizationがDNR 指示のガイドラインを有することを認可の条件としたため,現在はほぼすべての施設でガイドラインがあるとされている。一方,我が国でいつからDNRの概念が普及し出したかは定かでないが,少なくとも1980 年代の和文雑誌にはDNR の論文が散見されるようになる。米国と違い,法的にDNR が問題となったり関連法が成立したりしたことがないことは,現状に大きな影響があると思われる。DNRは現行法では治療の差し控えとしてとらえられるため,終末期であること,本人の意思があることがDNR指示が出せる患者の条件と考えられる。しかし,自己決定権は米国ほど重要視されてはいないこと,特に救急・集中治療領域では「終末期」の判断が難しいことに加え,高齢者への対応,「治療の中止は許されないが差し控えは許される」と誤解されていることなど,倫理的・法的な問題が潜んでいる。患者が適切な医療を受け,或いは適切な人生の最終段階を迎えるために,我が国のDNRの現状を把握するための調査が必要である。CR13-4 看護師としてDNARの現状と課題を考える1)小倉記念病院、2)熊本大学医学部附属病院立野 淳子1)、吉里 孝子2)複数疾患を併せ持ち、急性病態にある患者に医療やケアを提供する集中治療領域では、患者の“ 急変”はいつ起きてもおかしくない状況にあります。故に、DNAR(Do Not Attempt Resuscitation)指示の有無は、看護師にとっても重要な情報の一つです。DNARとは、心肺停止の状況において、蘇生の可能性が低いあるいはない場合に、患者または代諾者の意思決定を受けてCPR(CardioPulmonary Resuscitation)を行わないことです。業務の中で日常的に確認しているDNAR 指示ですが、これまでDNARが適切に使用されていないのではないかという議論が、医師だけでなく、看護の領域においても幾度となく行われてきました。しかし、現場では、「DNAR 指示がでているのに、どうして昇圧剤を増やしたり、NPPV(Noninvasive Positive PressureVentilation)をつけるの?」、「(もう救命は難しいだろうに)どこまで治療を続けるの?」または「DNAR 指示がだされたけど本当に救命の可能性がないのか?」、などといったDNARに関連したジレンマが、今なおしばしば聞かれます。さらに臨床を概観すると、DNAR指示が患者中心という患者の権利や尊厳を重視した考えから、拡大解釈され使用されている現状も見受けられ危惧する一因でもあります。今年度、日本集中治療医学会倫理委員会では、DNAR を検討課題の一つとしており、私たちは、看護の視点から、DNARの現状を把握し、課題を明らかにしていきたいと考えています。そこで、本交流集会では、これまで行われたDNARに関連した先行研究や事例を基に、看護の視点からDNARの現状や課題を整理したいと思います。本交流集会を通して、参加された皆様とDNARの現状や課題についてディスカッションできればと考えています。