ブックタイトル第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集

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第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集

-317-PC13-1 重症患者へのカロリー投与は十分に:Pro藤田保健衛生大学 医学部 麻酔・侵襲制御医学講座中村 智之、西田 修、原 嘉孝、山下 千鶴、柴田 純平、早川 聖子、河田 耕太郎、内山 壮太、幸村 英文、栗山 直英 重症患者における至適エネルギー投与量やその達成時期は明らかになっていない。各栄養管理ガイドラインでは推算式(25kcal/kg/日前後)や間接熱量計による設定を推奨している。しかし、推算式はエキスパートオピニオンであり明確なエビデンスはなく、間接熱量計はその時点での消費エネルギー量を算出するが、それが本当に適切なエネルギー投与量であるかは不明である。 各栄養ガイドラインでには、これらのエネルギー投与量を開始後7日間は達成しないことを推奨しているものもある。これは至適投与量が明らかになっていない中で、overfeeding を確実に回避するための工夫である。overfeeding では高血糖による糖毒性と栄養ストレスが惹起される。高血糖は厳密な血糖管理で回避されるが、栄養ストレスは血糖管理で制御できず、autophagyをはじめ、筋・蛋白・アミノ酸代謝異常、細胞傷害の修復遅延などを引き起こす。侵襲時の異化亢進は「内因性エネルギー供給」として捉えられるが、これは臨床で測定することはできない。そのため、外因性エネルギー供給である栄養療法を行う際には、侵襲に応じた内因性エネルギー供給を考慮しなければ、常にoverfeeding に陥る危険性をはらんでいる。目標量に到達しない栄養療法はunderfeedingと言われ、overfeeding を回避するために近年許容されつつある。具体的には、推算式や間接熱量計から算出したエネルギー投与量の60%程度までのエネルギー投与を1 週間程度行うことを指す。 Underfeedingは本邦ICUにおける重症患者でも推奨されるだろうか。答えは「否」と考える。本邦ICU症例群は平均BMI22程度、平均年齢68 歳、と報告されている。underfeeding推奨の根拠となる海外RCTの多くは、栄養障害がない、BMI27~30の過体重な若年症例が多く、本邦ICU 症例群と背景が大きく異なる。元々、栄養療法による改善の見込みが少ない症例群の可能性がある。 underfeedingでは、エネルギー負債による予後悪化が懸念される。累積エネルギーバランスが-10,000kcalを越える場合、それ以下に比べ死亡率が上昇することが指摘されている。やせ型で高齢な本邦ICU 症例において、マイナスバランスのエネルギー負債がどこまで許容されるか不明であるが、欧米の症例に比べて許容値が狭い可能性が高いことは容易に想像できる。栄養状態が悪い症例や高齢な症例では、栄養療法による予後改善効果が高いことを示唆する研究もある。 適切な栄養モニタリングを行いながら、overでもunder でもない必要十分量のエネルギー投与が行われることが理想である。自施設での症例を提示し、十分なカロリーを投与する方がよいという立場から述べたい。Pro-Con 13 2月13日(土) 14:40~15:30 第12会場重症患者へのカロリー投与はFull vs. UnderPC13-2 重症患者のカロリー投与は少なめに-permissive underfeedingの効果-徳島大学大学院 医歯薬学研究部 代謝栄養学分野堤 理恵重症患者における栄養療法の重要性は広く認識されている。しかし一方で、その量や質、投与方法については議論が多いのが現状である。栄養投与量については、より速やかな目標栄養量の達成がICU滞在期間の短縮と関係するという報告があるのに対し、近年ではPermissive underfeedingの効果を主張する報告も多い。我々は以前より、当院ICU 入室中の患者のエネルギー消費量および呼吸商の測定を継続して行っている。重症患者のエネルギー消費量はこれまでに考えられてきた値よりも低いこと、また侵襲時のエネルギー消費量の増大は極めて一時的であるという結果を得た。侵襲や炎症によってエネルギー消費量は増大するが一方で人工呼吸器装着や鎮静などにより消費量を低下させる因子も多く存在すると考えられた。さらに、患者の体組成評価を行ったところ、目標エネルギー投与量を達成している群とそうでない群の筋肉量や体脂肪量の減少率に有意な差は認められなかった。敗血症モデルマウスおよび培養細胞を用いて基礎的研究を行った。マウスにLPS を投与しOxyMax にて代謝変動を計測したところ、LPS濃度依存的にエネルギー消費量は低下した。また血液中のATPもLPS濃度依存的に低下した。マウス骨格筋細胞C2C12にLPS処理を行いフラックスアナライザーにてミトコンドリアの酸素消費量を測定したところ、LPS濃度依存的に酸素消費量は低下した。LPS非存在下では糖・アミノ酸濃度依存的に代謝は亢進するが、LPS存在下では糖濃度が高くなると代謝は抑制に働いた。このことから、炎症状態においては糖を投与しても侵襲時の代謝破綻は改善されないが、アミアミノ酸の投与効果は期待できると考えられた。重症患者においては各栄養素の投与についてはさらに検討すべきであるが、カロリーは十分投与する必要はないと考える。