ブックタイトル第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集

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第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集

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第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集

-316-PC12-1 重症患者には経静脈栄養大阪大学 栄養ディバイス未来医工学共同研究部門井上 善文栄養療法として静脈栄養はダメ、という傾向が強いが、なぜであろう。経腸栄養法の方が「better」であると考えられている。その理由は、(1)費用がかからない、(2)安全である、(3)より生理的である、(4)胃腸管の機能と形態の保存を促進する、(5)bacterial translocationを予防する、(6)予後を改善する、などである。これらの理由は、事実に基づいているかのように受け入れられている。静脈栄養を選択するべきだ、というと、最初から間違っている、かのような雰囲気になってしまっている。おかしい。 歴史を振り返ると、食べられない患者さんに対する栄養管理法として、1966年にDudrick SJがTPNの成功例を報告して、画期的な治療法として受け入れられた。この方法によって救命できた患者がどれほどいるか。欠点ばかり挙げられて、TPNはダメ、ということになってしまっている。Dudrick の言によると、IVHという用語が使われたために、過剰栄養、高血糖、肝機能異常というイメージができてしまった、ということである。 Bacterial translocation が起こるのは、TPN をしているからではない。絶食にしているからである。腸管粘膜の萎縮も同様である。適正なTPN 管理が行われていないから、こういう問題が起こる、ともいえよう。適正なエネルギー、たんぱく質投与量となっているか?脂肪乳剤はちゃんと投与されているのか?これらの投与量は、ちゃんと計算されているか?特に糖質の投与量は計算されているか?過剰な投与のために高血糖を引き起こしているのではないか?そういうことも考えるべきだろう。また、カテーテル管理が適正に行われていないから血流感染が起こるのである。 もちろん、経腸栄養が実施できる症例に対しては経腸栄養が優先的に選択されるべきである。しかし、すべての症例に対して経腸栄養が実施できるわけではない。経腸栄養だけで必要なエネルギー量、栄養量を投与できるのは困難な場合も多い。さまざまな欧米での検討結果でも、明らかに経腸栄養が有利であるという結論は出ていない。とすると、症例によって、静脈栄養と経腸栄養を使い分ける、組み合わせる、そういう考え方も必要であろう。また、経腸栄養を必要栄養量を投与しなければならないと考えるのではなく、腸管の機能を維持するための、luminal nutritionとして利用するという考え方もある。 『重症患者には経静脈栄養』という、一見、不利な立場でのPro-Conではあるが、原点に立ち返り、栄養療法としての静脈栄養の意義について考えながら議論してみたい。Pro-Con 12 2月13日(土) 9:00~9:50 第12会場重症患者には経静脈栄養 or 経腸栄養PC12-2 重症患者には経腸栄養高知大学 医学部 麻酔科学・集中治療医学講座矢田部 智昭重症患者における栄養療法は近年,重要な治療法の1つとして注目が集まっている。しかし,まだまだエビデンスが十分でなく,様々な議論があるのが現状である。栄養投与経路もその1つである。経口摂取が最も望ましいが,重症患者では困難であり,経腸栄養か経静脈栄養の選択が必要となる。各種ガイドラインにおいては腸管が使用可能であれば経腸栄養を早期に開始することが推奨されている。経静脈栄養に比して高血糖の危険も少なく,生理的である経腸栄養の利点を示しながら,重症患者には経腸栄養という立場で議論を進めたい。