ブックタイトル第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集

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第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集

-309-PC5-1 小児領域での鎮静中断 ~小児だからこそ、 あえて 鎮静中断~静岡県立こども病院 小児集中治療科伊東 幸恵、川崎 達也小児は常に落ち着きがない。ついさっきまで安静にしてよく眠っていたと思っても、突然覚醒し激しく泣く。これは小児にとってはごく当たり前のことで、病気の児でもまた同様である。ICU管理において、鎮静が必要不可欠であるのはいうまでもないが、深鎮静により人工呼吸期間やICU滞在期間の延長を始め、種々の有害事象をもたらすとされている。成人では浅鎮静が推奨され、多くの文献でその手段について、鎮静中断(daily sedationinterruption)やプロトコールに基づいた鎮静、あるいはそれらの併用といった方法が検討されている。小児でも浅鎮静の方法に関する報告は複数あるが、いずれも解釈には注意を要し、決定的な方法論の優劣に関しては成人同様結論はでていない。また、小児における望ましい鎮静度は不明である。健康な児でも両親と引き離され様々なデバイスを着けられて一人で過ごすことが耐えられないことからわかるように、成人で推奨される「アイコンタクトがとれる」程度の鎮静度で安静を保てる児は、ごく一部にすぎない。実際の管理においては、望ましい鎮静度を一概に決めることは難しく、疾患や重症度はもちろん、年齢や精神運動発達の程度、児のキャラクターや病棟への慣れ・不慣れによって大きく変えざるをえないことはしばしばある。さらに、覚醒度が安定しないという特性のため、一定の鎮静レベルを維持するのは難しい。常に目標の鎮静度を維持しようとすると、結果的により深い鎮静度となりやすい。さらに小児に使用可能な鎮静薬は成人に比べて限られていて鎮静度の細かな調節は難しいことが多く、また耐性・蓄積・離脱の問題もよく経験する。これらの点を考えると、忙しい日常臨床の場では、例えば鎮静プロトコールを作成し、その有効性を検証し、導入・維持していくよりも、それぞれの児の目標鎮静度を決めながらも一日一回鎮静中断を試み、覚醒を確認したら必要に応じて鎮静を再開するというのは許容できるし、現実的であろう。小児だからこそ、鎮静中断は有用であると、文献的考察もふまえて提案したい。Pro-Con 5 2月12日(金) 9:00~9:30 第7会場鎮静中断 VS 中断しないPC5-2 小児人工呼吸患者の鎮静中断を行う前に解決すべき問題点大阪府立母子保健総合医療センター 集中治療科小山 英彦、橘 一也、竹内 宗之【背景】成人人工呼吸患者の鎮痛・鎮静においては、十分な鎮痛管理のもと浅鎮静あるいは一日一回の鎮静中断が推奨されている。同様の鎮痛・鎮静の管理法が小児人工呼吸患者でも可能であるのか、あるいは予後にどのような影響を及ぼすかの検討は未だ不十分である。数少ない報告の中で、小児を対象とした鎮静中断のRCTでは、一日一回の鎮静中断を行う方が有意に人工呼吸期間やICU滞在日数が短縮したと報告している(Gupta 2012)。一方で、小児を対象とした鎮静中断を含む鎮痛・鎮静のプロトコールを用いた管理法は、プロトコールを用いない管理法と比較して人工呼吸期間やICU 滞在日数短縮とは関連がなかったとの多施設RCT の報告もある(Curley 2015)。われわれは自施設経験から、小児人工呼吸患者における鎮静中断は困難であると考える。【鎮静中断が困難と考える根拠】(A)小児ならではの理由:(1)プロポフォールの使用は禁忌:成人を対象とした鎮静中断の研究の多くでは、調節性が良好で中断後比較的早期に覚醒するプロポフォールが使用されている。海外の小児鎮静中断の報告でも、プロポフォールが使用されている場合もある(Curley 2015)。本邦において、小児人工呼吸管理中のプロポフォールの使用は禁忌であり、多くの施設でミダゾラムが使用されているが、ミダゾラムは中断してもいつ覚醒するか予測が不可能であり、小児での鎮静中断時の管理を困難にしている。(2)鎮静レベルの維持および評価が困難:小児では安定した鎮静レベルを維持することが困難なことが多い(Verlaat 2013)。我々はState Behavioral Scale で- 2 と評価した患児が、そのしばらく後に突然覚醒し、計画外抜管となった症例を数例経験した。これを予防するためには、鎮静レベルをこまめに評価する必要があるが、穏やかに寝ている子供を鎮静レベル評価のために頻回の刺激によってその都度覚醒させることは現実的でないと思われる。(3)挿管状態の理解:小児に挿管下での人工呼吸の必要性を理解してもらうのは不可能であり、鎮静中断は困難である。状況が理解できない症例への覚醒下の気管吸引などのストレスは、心的外傷後ストレス障害の発生の可能性も否定できない。(B)海外との管理の相違、特に看護体制の違い:海外集中治療室の管理体制は、常に患者:看護師が1:1もしくは2:1の体制である。当センターが過去3 年間に経験した計画外抜管は6 例で、その発生時間帯は日勤帯が1 例で、準夜帯および深夜帯が5 例であり、勤務している看護師数に関連している可能性が示唆され、海外との看護体制の違いが我が国での鎮静中断を困難にしている可能性がある。【結論】小児においても、一日一回の鎮静中断やできるだけ浅鎮静での管理が予後改善に影響を及ぼす可能性はあるかもしれない。しかし、それを実際に行うには改善すべき点がまだ残されていると我々は考える。