ブックタイトル第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集

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第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集

-307-PC3-1 ICUリハビリテーションにおける神経筋電気刺激療法の安全性と有効性1)国家公務員共済組合連合会 枚方公済病院 リハビリテーション科、2)愛知厚生連海南病院 リハビリテーション科、3)藤田保健衛生大学坂文種報徳會病院 リハビリテーション部、4)名古屋大学医学部附属病院 医療技術部 リハビリ部門、5)愛知厚生連海南病院 心臓血管外科、6)名古屋大学医学部附属病院 外科系集中治療部、7)名古屋大学大学院 医学系研究科 心臓外科学、8)名古屋大学大学院 医学系研究科 リハビリテーション療法学専攻岩津 弘太郎1)、飯田 有輝2)、河野 裕治3)、小林 聖典4)、山崎 武則5)、貝沼 関志6)、碓氷 章彦7)、山田 純生8) ICUでの集中治療管理を必要とする重症疾患患者は、病態や治療に伴う侵襲、過度の安静、低栄養、そして薬剤の副作用などにより全身性の筋力低下を来たしやすい。この重症疾患患者に特異的に認められる筋力低下は長期にわたって残存し、患者の生命予後ならびに長期機能的予後を悪化させる要因となることが知られている。したがって、重症疾患患者における筋力低下の予防ならびに改善方策の開発は、集中治療領域におけるリハビリテーションの重要な関心事となっている。 安静臥床は筋力低下の主要な危険因子であることから、従来から早期離床介入がICUリハビリテーションにおける標準介入として推奨されてきた。しかしながら、実臨床におけるICUでは、重篤な病態やそれに伴う自覚症状などにより積極的な随意運動が困難な症例も多く、早期離床介入のみで十分な筋活動量を確保する事に難渋することも多い。 神経筋電気刺激療法(neuromuscular electrical stimulation: NMES)は、随意努力を必要とせず他動的に筋収縮を誘発することが可能なことから、自発的に十分な筋活動量を確保することが困難な症例における早期離床介入の補足・代替療法として有用性が期待できる。先行研究では、腹部外科手術後や敗血症、人工呼吸器管理中の患者においてNMES が有害事象なく骨格筋量や筋力の低下を抑制したことが報告されている。これらの報告は、ICUにおける筋力低下の予防方策としてNMES が適用可能であることを示唆している。しかしながら、NMES をICU リハビリテーションの標準介入として臨床応用するには検討すべき課題がある。まず、ICUでは循環動態が不安定なために積極的な離床介入が困難な症例を多く経験するが、このような患者に対するNMES の安全性については詳しく検討されていない。また、ICU の重症疾患患者は骨格筋タンパクの異化作用が亢進し同化作用が低下していることが知られているが、このような時期におけるNMES が骨格筋のタンパク代謝に与える影響についても明らかでない。さらに、重症疾患患者の中にはNMESにより有効な筋収縮を得ることが困難な症例が存在することも報告されている。したがって、ICU においてNMES を適用するにあたっては、これらの課題が検討されると共に、どのような対象にNMES が有効か、すなわちその適応が整理される必要があるものと思われる。本ワークショップでは、循環・代謝の観点からICU におけるNMES の安全性と有効性に関する我々の自験例を提示し、今後の課題と共にICUにおけるNMES の適応について検討したいと思う。Pro-Con 3 2月12日(金) 9:10~9:50 第4会場電気刺激療法:循環/代謝への影響PC3-2 電気刺激療法:循環 / 代謝への影響1)長崎大学病院 リハビリテーション部、2)長崎大学病院 集中治療部、3)長崎大学大学院医歯薬学総合研究科内部障害リハビリテーション学花田 匡利1)、森本 陽介1)、及川 真人1)、俵 祐一1)、矢野 雄大1)、名倉 弘樹1)、関野 元裕2)、松本 周平2)、東島 潮2)、神津 玲1,3)ICU 獲得性筋力低下(intensive care unit-acquired weakness; ICU-AW)では,全身性の炎症による代謝亢進状態を基盤に多臓器不全,不動,高血糖,薬剤などが修飾要因となって筋蛋白分解が亢進,骨格筋萎縮が進行すると考えられている.したがってICU-AWの発症および進行予防のためにはリスク要因の特定とともに早期からの介入が重要であるが,全身状態が不安定な重症患者では,適用できる介入手段が限られている現状にある.骨格筋を他動的に収縮させる神経筋電気刺激療法(Neuromuscularelectric stimulation; NMES)は,その有効性が期待できる数少ない手段であり,現在までに多くの臨床研究によって検討が行われている.しかしながら,その成績は必ずしも一定しておらず,否定的な結果も含まれている.演者らはICU 入室患者に骨格筋萎縮の進行抑制目的にNMESを適用するものの,NMES の効果より病態の進行が早く筋萎縮の予防が困難といった問題に直面することが少なくない.重症患者,特に敗血症患者の急性期では,全身性炎症による代謝亢進状態が持続するとともに,カテコラミン製剤や大量輸液投与による全身性の浮腫を呈する.このような病態はNMES のnon-responder として報告されており,演者らの経験でも効果を示すことができていない.Segers らは敗血症,浮腫,カテコラミン製剤投与患者において,NMESは有効でなかったとしており,この事実を裏付けている.また,代謝亢進状態では,電気刺激による筋収縮が筋蛋白の分解をさらに亢進させている可能性も否定できない.研究報告をどのように解釈すべきかという問題に加えて,NMESの目的,適応,方法論(刺激強度・頻度・施行時間・介入時期など)としての実施プロトコールが確立されていない実情もあり,臨床現場でのいささかの混乱は否定できない.今回のPro-Conでは,ICU患者に対するNMESの現状と課題,特に「循環・代謝への影響」も含めて批判的に吟味し,自験例とあわせて検討,討議させていただく予定である.