ブックタイトル第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集

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第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集

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第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集

-288-PD2-1 敗血症関連脳症の病態生理東京医科大学 医学部 麻酔科学分野内野 博之、千々岩 みゆき、原 直美敗血症関連脳症(Sepsis Associated Encephalopathy:SAE)の脳障害発症機序は特定されておらず、その標的分子も明らかではない。SAE の臨床症状は倦怠感や注意力の低下などの軽い症状から深い昏睡に至るまでの広い幅を有している。特に、認知機能障害の評価に対しては特異的な評価法やバイオマーカーが無く、鎮静についてもSAEに特異的な鎮静法は見出されていない。適切な検査にも関わらず、SAE は、発熱性の意識障害の他の原因を除外して残された原因として特定される場合が多い。高い死亡率にもかかわらず、SAE の治療は、根底にある感染とせん妄やてんかん発作の対症療法に制限されている。敗血症の診断基準を満たす前の段階でもすでにSAE が存在している可能性がある。SAE の発症機序として、a)白血球が炎症性メディエータやO2-・ラジカルを産生b)分子鎖アミノ酸・芳香族アミノ酸不均衡c)偽神経伝達物質の増加d)フリーラジカルe)血液脳関門の破綻f)脳血流の変化とg)脳自動調節能の障害などによる脳内微小循環障害(MD)が脳障害を惹起すると考えられているが明確ではない。SE を想定した我々の回盲部結紮穿刺による腹膜炎性敗血症モデル(CLP モデル)による脳症のこれまで研究から、SAE 誘発にはミトコンドリア機能不全が重要な役割を担う可能性が示唆された。本セッションではSAE の病態生理についてこれまでの報告で得られきた知見を示すとともに我々の敗血症モデルマウス(CLPマウス)による脳症に対して脳メタボローム解析を施行した結果を示すとともにMitochonndrial Permeability Transition(MPT)に伴うミトコンドリア機能不全や脳内酸化ストレスの重要性にも焦点を当てて概説し、人SAEの病態生理について討論をしてみたい。パネルディスカッション 2 2月12日(金) 15:40~17:10 第11会場敗血症関連脳症PD2-2 高齢者における敗血症性脳症の病態とその対策1)東海大学医学部付属八王子病院、2)東海大学医学部外科学系 救命救急医学井上 茂亮1)、日上 滋雄1)、杉田 真理子1)、猪口 貞樹2)少子高齢化は日本が抱える大きな社会問題である。2030 年には65歳以上人口は約3500 万人に達し、総人口の約30% を占めるといわれている。高齢者では呼吸器や心臓、肝・腎・筋骨格系の機能が低下するとともに、加齢に伴い免疫機能も変化することから、軽度の侵襲や局所感染から多臓器障害を呈する重症敗血症に陥りやすく、その予後も不良である。 敗血症性脳症は敗血症に伴う多臓器障害の一つとして近年特に注目されており、ICUにおけるせん妄や昏睡との関連性も数多く報告されている。また加齢は敗血症性脳症やICUせん妄のリスクファクターであることが知られている。高齢者ではアルツハイマー病や認知症・動脈硬化や糖尿病などの基礎疾患を有しているだけでなく、加齢よる脳血流関門の破綻と炎症系サイトカインおよび免疫応答細胞の脳内侵入と脳内炎症が、敗血症性脳症やICUせん妄と関連しているという基礎研究も報告されている。本講演では高齢者の加齢に伴う身体的・免疫学的変化・中枢神経へのインパクトを解説するとともに、今後本邦で爆発的に増加しうる高齢者敗血症・敗血症性脳症への治療アプローチを考察する。