ブックタイトル第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集

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第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集

-272-SY24-1 広範型肺血栓塞栓症への治療戦略日本医科大学付属病院 心臓血管集中治療科山本 剛広範型肺血栓塞栓症では急性の右心不全からショックに陥る。適切な治療が行われない限り、多くは数時間以内に死亡する。したがって救命のためには迅速で的確な診断、治療が重要になる。初期治療では、酸素投与、未分画ヘパリンボーラス、容量負荷を行う。循環虚脱例には経皮的心肺補助装置を導入する。広範型への標準治療は血栓溶解療法であるが、血栓溶解療法による肺動脈圧低下が得られるまで、あるいは血栓摘除術スタンバイの間に血管収縮薬の投与を考慮する。血管収縮薬の中でもノルエピネフリンが最適と考えられ、α受容体刺激による血圧上昇を介した冠血流増加と、β1刺激による直接的な強心作用により右室機能を改善する。血栓溶解療法では、肺動脈内血栓の溶解により肺動脈血管抵抗が減少し、血行動態や右室機能の早期改善がもたらされる。また、肺血流の増加に伴いガス交換も改善する。本邦ではmutant t-PAのモンテプラーゼが、不安定な血行動態を伴う急性血栓塞栓症に対して保険適応になっている。血栓溶解療法の絶対禁忌は活動性出血、2ヶ月以内の脳梗塞、脳出血の既往、相対禁忌は大手術後10 日以内、15 日以内の重症外傷、1か月以内の脳神経外科手術あるいは眼科的手術などである。禁忌事項に含まれる多くは肺血栓塞栓症の誘発因子でもあり、重症例では相対禁忌事項があっても救命のために血栓溶解療法を選択せざるを得ない場合もある。血栓溶解療法が禁忌、あるいは血栓溶解療法に効果が不十分な症例には、外科的血栓摘除あるいはカテーテル治療を考慮する。どちらを選択するかは施設の専門によって判断する。カテーテル治療では血栓塞栓の範囲、量に合わせて手技の選択や血栓溶解薬量の調節が可能であり、速やかに肺血流の改善や肺動脈圧の低下がみられる。ICUでは重症度の高い循環虚脱例や血栓溶解薬の禁忌例が少なくないため、呼吸循環管理、診断、治療を実施するにあたり、集中治療医だけでなく、循環器内科医、放射線科医、心臓血管外科医、臨床工学技士など集学的にアプローチすることが重要である。シンポジウム 24 2月14日(日) 9:00~10:10 第6会場肺血栓塞栓症治療 最前線SY24-2 慢性血栓塞栓性肺高血圧症治療の最前線国立病院機構 岡山医療センター 循環器内科松原 広己慢性血栓塞栓性肺高血圧症(chronic thromboembolic pulmonary hypertension; CTEPH)は,急性肺塞栓症の4%程度が移行するとされる稀な合併症である.CTEPHは肺動脈血栓内膜摘除術により根治が可能な唯一の肺高血圧症であるが,本邦では末梢優位に病変が局在する高齢女性の症例が多いことから,手術不適と判断されることが多い.こういった手術不適な症例に対して内科的治療が適応となる.近年,肺高血圧症治療薬の一つであるグアニル酸シクラーゼ阻害薬のリオシグアトがCTEPHに対して有効であることが報告され,CTEPH 治療薬として承認されるに至った.今やリオシグアトは,手術不適な患者に対する内科的治療の世界標準となった.一方,本邦においては手術不適な患者に対するインターベンション治療が発達してきた.その効果は肺動脈血栓内膜摘除術に匹敵するものの,高率に発生する術後合併症が問題であった.様々な努力と技量向上の結果,インターベンション治療の安全性は飛躍的に向上した.今やCTEPHのインターベンション治療は世界に普及しつつある.今回はCTEPH の内科的治療の最新の知見について概説したい.