ブックタイトル第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集

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第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集

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第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集

-253-SY17-3 グラム染色を導入したVentilator-associated pneumonia(VAP)治療1)大阪府立急性期・総合医療センター 救急診療科、2)堺市立総合医療センター 外科木下 喬弘1)、吉村 旬平2)、伊藤 弘1)、吉川 吉曉1)、中本 直樹1)、木口 雄之1)、中堀 泰賢1)、松田 宏樹1)、久保 範明1)、藤見 聡1)【背景】American Thoracic Society(ATS)のガイドラインに基づいた経験的なVAP治療は広域抗生剤の過剰使用につながる可能性が指摘されている。【目的】VAP治療開始時にグラム染色を導入することで、広域抗生剤の使用を減少させることができるかを検討した。【方法】2013年2 月から2015年8 月までに当センターに入院し人工呼吸管理を要した症例の中で、Centers for Disease Controlの診断基準に則りVAPと診断された症例を対象とした。検体が適切に評価できなかった症例などは除外した。ガイドラインに基づいたアルゴリズム(GLBA)およびグラム染色に基づいたアルゴリズム(GSBA)を作成し、後方視的に培養の感受性と比較することで各々のアルゴリズムの妥当性を評価した。抗菌薬のスペクトラムの広さは加算方式のStep 数で評価した。Step1 をβラクタマーゼ阻害薬配合アミノペニシリンとし、抗緑膿菌薬は+1Step、カルバペネム系抗菌薬は+2Step、抗Methicillin-resistant Staphylococcus aureus(MRSA)薬は+1Stepと定義した。抗菌薬を併用する場合はStep を加算した。GLBAでは、耐性菌のリスクが低い症例はStep1、耐性菌のリスクが高い症例は抗緑膿菌薬+抗MRSA薬(Step3)、敗血症性ショックの症例はカルバペネム系抗菌薬+ 抗MRSA 薬(Step4)を選択した。グラム染色所見はGram positive cocci(GPC)chain, GPCcluster, Gram positive bacilli(GPB), Gram negative rods(GNR)に分類した。GSBA では、GPC chain やGPB が検出された症例はStep1を選択した。GNRが検出された場合、耐性菌リスクが低い症例はStep1、耐性菌リスクが高い症例は抗緑膿菌薬(Step2)を選択した。GPC clusterが検出された場合、耐性菌リスクが低い症例はStep1、耐性菌リスクの高い症例は抗MRSA薬(Step2)を選択した。敗血症性ショックの症例は、GPC chain, GPB, GNRが検出された場合カルバペネム系抗菌薬(Step3)を、GPCclusterが検出された場合抗MRSA薬(Step2)を選択した。グラム染色で複数種類の菌が検出された場合は、必要に応じて抗菌薬を併用した。GLBAとGSBAを比較し、起炎菌のカバー率と、得られた培養結果よりも超過したStep数を計測した。【結果】人工呼吸管理を要した連続1040例中182例(18%)にVAP を発症し、153例を解析対象とした。GLBAとGSBAで起炎菌のカバー率に有意差は認めなかった(93%vs91%, p=0.40)。培養結果よりも超過したStep 数の中央値はGLBA に比してGSBA で有意に低かった(1vs0, p < 0.01)。GLBA はGSBA より抗MRSA 薬の選択率は有意に高かった(71%vs28%, p < 0.01)が、カルバペネム系抗菌薬の選択率に有意差は認めなかった(5%vs4%, p=0.78)。【考察】ATS のガイドラインに基づいたVAP 治療にグラム染色を追加したアルゴリズムを導入することで、高い起炎菌カバー率を保ったまま広域抗生剤の使用を減少させることができる可能性がある。