ブックタイトル第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集

ページ
221/910

このページは 第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集 の電子ブックに掲載されている221ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「ブックを開く」ボタンをクリックすると今すぐブックを開きます。

第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集

ブックを読む

Flash版でブックを開く

このブックはこの環境からは閲覧できません。

概要

第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集

-219-SY3-3 PAV(proportional assist ventilation)徳島大学病院 ER災害医療診療部今中 秀光PAVは患者の呼吸努力に比例して気道内圧を制御する換気モードである。すなわち、患者の呼吸器系エラスタンス(コンプライアンスの逆数)と抵抗、肺容量、吸気流量から患者の吸気努力を算出し、必要な呼吸仕事の一定割合を補助する。PAVにはいくつかの利点がある。1)快適性: PAV を適切に設定すれば快適性が増す。PSV やPCV に比べて吸気流量の立ち上がりがゆっくりで違和感が少ない。自然な吸気努力の変化がそのまま活かされ、同調性にも優れる。2)循環動態への影響が小さい: 気道内圧が低く抑えられ、他の換気モードに比べ血行動態への影響が小さい。また呼吸努力、胸腔内圧の陰圧の揺れを温存できるため、静脈環流を阻害せず心拍出量を維持できる。3)呼吸努力の温存: 患者の吸気努力を温存し、呼吸仕事を一定の割合で残すことから、呼吸筋の廃用性萎縮が起こりにくい。4)誤作動が少ない: PAVは、呼吸努力に対して呼吸仕事量を軽減するように作動するだけなので、吃逆や心原性振動などのノイズに影響されにくい。5)モニター: 肺メカニクスや呼吸努力のモニターとして有用である。自発呼吸のある人工呼吸患者でコンプライアンスと抵抗を測定することは難しいが、あるPAV搭載機種では自動的に測定できる。また気道内圧はそのまま呼吸努力を反映する。しかし、PAV が一般的な換気モードになっているとは言い難い。理論や設定方法が従来の換気モードと大きく異なっていること、生命予後や臨床経過を改善するには至っていないことが理由と考えられる。SY3-4 新しい換気モードの可能性を探る:「SmartCare」聖隷浜松病院 臨床工学室西條 幸志、三浦 啓道、増井 浩史、神谷 典男、北本 憲永近年の人工呼吸器には、自発呼吸同調性を向上させたモードや、ある条件のもと自動で設定を変化させる自動制御機能を使用したモードがあり、急性期から離脱時における患者個々の様々な呼吸状態への対応が可能となっている。Dreger社製Evita XL、V300、infinity V500 に搭載されている「SmartCare」は、臨床データに基づいたウィーニングプロトコールに従い、CPAP モードにおいてPS圧を自動で変化させ、PS圧の目標値(例:ATC ON・加温加湿器使用時はゴールPS圧「0」)をゴールとして制御する自動ウィーニングモードである。SmartCare( Evita V300/infinity V500の場合)は、患者の呼吸回数・呼気終末二酸化炭素濃度・一回換気量データを元に、呼吸状態を「正常換気」「効果的でない換気の増加」「低換気」「中枢性低換気」「頻呼吸」「重度の頻呼吸」「説明のつかない過換気」「過換気」の分類に診断し、コンフォートゾーンと呼ばれる、呼吸回数・呼気終末二酸化炭素濃度・一回換気量を3 次元的に視覚化されたグラフの正常換気範囲内に入るようにPS 圧の増減を制御する。例えば、「正常換気」であればPS圧を維持または減少、「効果的でない換気の増加」「重度の頻呼吸」「頻呼吸」「低換気」であればPS 圧を増加させる。そして、PS圧の変更がなければ2 分、変更が有れば5分毎に患者呼吸状態の再診断を行い、減少したPS圧がゴール値に達すると「導入期」から、自発呼吸トライアル期として「SBT 期」へ移行する。SBT期では、SmartCare 導入当初のPS 圧により決定される時間安定した換気が継続されれば、「SBTが完了しました」とメッセージが表示され、「維持期」へと移行する。SBT・維持期においても導入期同様に患者呼吸状態の診断は継続しており、正常換気以外の不安定な換気診断がある程度継続すると再度導入期からの実施となる。また、アラーム発生時には、中断状態となり継続確認が必要となる。 SmartCare は、抜管の可否を判断するものではないが、SBT 実施に伴う医療スタッフの負担軽減やコンフォートゾーンの正常換気範囲やSBT 開始PEEP 値を任意に変更可能であることから、各科共有可能なプロトコールとして活用出来る他、現状の患者に最適なPS圧の検索、トレンド機能を用いてPS圧増減の検証などにも有用であると考える。