ブックタイトル第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集

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第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集

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第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集

-208-EDS2 ABCD sonography~生理学的異常に対する超音波学的アプローチ(気道・呼吸編)~東京慈恵会医科大学 麻酔科学講座鈴木 昭広日本は世界中のCT 装置のおよそ1/3 を保有するCT 大国である.このアクセス性の良さに加え,客観性に優れ検査者間の技術的な影響を受けにくいCT 検査への依存度は諸外国に比べて高く,高度な発展を遂げてきた.一方,CTの利用できない諸外国ではpoint of care 超音波と呼ばれる急性期診療における病態把握型の超音波手法が発達し,本邦はそこで遅れをとっている感がある.筆者は麻酔・集中治療の業務の延長として救急医療、航空医療、災害医療に取り組む機会があり、生理学的異常を迅速・簡便かつリアルタイムに検索できる手法を追い求めた。現在、気道・呼吸・循環,中枢神経管理などに直結する超音波手法をABCDsonographyと位置付け、教育団体(http://abcd-sonography.org/)を設立し普及に努めている.今回の教育セミナーでは気道エコーとして周術期を中心に幅広く役立てることができるPEAS(perioperative evaluation of the airway via sonography) プロトコールと、新しい呼吸モニタリングともいえる肺エコーを紹介する。1) 気道エコーこれまで知る人ぞ知る「オタク」の領域であった気道エコーだが、最大のトピックはおそらく2015年の蘇生ガイドラインにおいて、気管チューブの位置確認法の一つとして推奨されるようになったことであろう。筆者は2012 年に周術期の気道評価をエコーで行うPEAS プロトコールの確立を目指してきた。現在、挿管確認、挿管困難の評価、声帯運動の観察、フルストマックの判断、輪状甲状靭帯の同定とガイド下穿刺、経皮拡張法による気管切開(PDT)への応用などを提案している。ANZICS が2014年コンセンサスステートメントで、PDTに際しては、従来の気管支鏡ガイド下の実施に加えて、超音波ガイドについても言及されており、解剖の把握、正中線の同定と正しい刺入部位の決定、刺入経路上の血管の同定、気管までの距離や気管径の計測による適切なチューブサイジング、経皮法が不適切である症例の選択に役立つとしている。本邦でも学会を中心とした動きが出ることに期待したい。2)肺エコー肺エコーは呼吸器超音波として50 年以上前から日本人が内科領域で世界に先駆けて取り組んできた。しかし、解像度の制限からか優れた知見が急性期診療に普及するには至らず、2011年のNEJMの総説を機に温故知新的に見直されることとなった。現在、少なくとも1)気胸、2)胸水、3)心不全やARDS、間質性肺炎などを含む間質症候群に関しては診断方法が充実してきているが、それ以外に肺炎、肺塞栓などの診断に利用され始め、小児肺炎診療ではルーチンのX線の代替としての期待も高まっている。また人工呼吸からのウイニングに利用するための横隔膜機能の評価などに注目が集まっており、今後のICU管理においても必須の診断モダリティとなる領域である。教育セミナー 2 2月13日(土) 9:00~9:50 第7会場肺エコーEDS3 胸部X 線写真の読影:肺水腫を中心に大阪大学大学院医学系研究科 放射線医学富山 憲幸X線は1895年、ウィルヘルム・C・レントゲン博士により発見された。その後すぐに医療に応用され、今日に至るまで120年間利用され続けている。X線検査の胸部領域における有用性は高く、診断や治療方針の決定において胸部X線や胸部CTは大変重要な役割を果たしている。胸部X線撮影は呼吸器疾患が疑われたときの第一選択のX線検査である。その理由としては第一に簡便に撮影できること、第二に低被曝であること、第三に費用が安いことが挙げられる。画像診断における技術革新の進歩は早い。胸部X線撮影においてもアナログからデジタルへの波が押し寄せている。長らくX線フィルムが使用されていたが、1983年にコンピュータ撮影(Computed Radiography: CR)が初めて商品化された。これはX 線フィルムの代わりにイメージング(IP)プレートを使用するものである。最近ではX線を直接デジタル信号に変換するフラットパネルが登場し、撮影から数秒後にモニター上でX線写真が見られるようになった。肺水腫は間質性肺水腫と肺胞性肺水腫に分けられる。血管外組織に漏出した水分が肺の間質に留まっている状態が間質性肺水腫であり、肺胞内にまで漏出液が及んでいる状態が肺胞性肺水腫である。肺静脈圧の上昇に伴いまず間質性肺水腫(18~25mmHg)が生じ、より進行すると肺胞性肺水腫(25mmHg 以上)となる。一般に間質性肺水腫は間質性陰影を呈し、肺胞性肺水腫は肺胞性陰影を示す。胸部X線写真で、間質性肺水腫の際に見られる所見としてはカーリーライン(Kerleyline)、カフ・サイン (peribronchial cuffing)、気管支壁の肥厚・ボケ、肺門血管陰影のボケ・不鮮明化が挙げられる。カーリーラインは最も有名かつ重要な所見である。Bラインが最も見つけすく、Aラインがその次によく見られる。Cラインは肺胞性陰影に重なるためか、確認できることは少ない。今回の教育セミナーでは、読影が難しい気管支壁の肥厚・ボケ、肺門血管陰影のボケ・不鮮明化についても画像を供覧しながら説明したい。肺胞性肺水腫の際に見られる所見としてはエア・ブロンコグラム、辺縁不明瞭で融合傾向のある淡い陰影、蝶形陰影(butterfly shadow, batwing shadow)がある。エア・ブロンコグラムや辺縁不明瞭で融合傾向のある淡い陰影は肺炎の際にも認められることがあるが、蝶形陰影は肺胞性肺水腫に特徴的な所見である。肺水腫など重度呼吸不全の患者は立位ではなく臥位で撮影されることが多い。臥位では立位と異なった血流分布を呈し、また撮影時のX線の照射方向が異なるため、読影には注意が必要である。また最後に、ICU や病室で撮影されるポータブル写真でのチェックポイントについても言及したい。教育セミナー 3 2月13日(土) 10:00~10:50 第7会場胸部X線の読み方