ブックタイトル第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集

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第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集

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第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集

-206-EDS1-1 神経集中治療の基礎知識日本医科大学多摩永山病院 救命救急センター畝本 恭子、久野 将宗、田上 隆、諸江 雄太、福田 令雄、金子 純也、磐井 佑輔、田中 知恵【神経集中治療の潮流】欧米では脳神経外科術後管理を中心にneuroICU が1950 年代より開設されたが、さらに種々の病態に対する「脳指向型治療、脳保護」などの意識が高まってきたのが1980 年代である。今日、critical care neurology, やneurocritical careの分野が、複数科かつ多職種の協同で生まれ、発展を続けている。米国ではすでにneurocritical care の学術組織があり、neurointensivist という、神経学、救急医学、内科学等を俯瞰しつつ治療戦略を立てられる医師が育っている。我が国でも、1992年、神経救急研究会(現日本神経救急学会)が発足し、神経の救急疾患・病態に係る多領域での研究の共有、討論を積み重ねている。さらに、2002年に心停止後意識障害に対する低体温療法の有効性が発表されてからは、神経内科、脳神経外科、救急医学科のみならず、循環器内科医も「脳(神経)保護のための集中治療」の意識が高まり、神経機能の評価、維持・改善を主意とした脳指向型集中治療、「神経集中治療」の概念は、市民権を得つつある。【神経集中治療の実際】神経集中治療の要諦は、脳・神経の循環・代謝を維持し、二次的脳損傷を回避ないし最小限に抑えることにある。蘇生のA.B.Cをクリアすることから始まり、神経学的異常をいかに迅速に捉え対処するかが予後を左右する。その判断は、解剖、生理、生化学的知識に裏打ちされたものであるが、すでに「ペンライト、ハンマー」の時代ではない。様々なEquipmentを使いこなすことも必要である。では、最近の神経集中治療に必要な知識、技術、そして設備には、どのようなものがあるか?詳細は各論のご発表に譲り、neurointensivistとしての必須事項を軸に、神経集中治療の基礎知識として解説いたします。教育セミナー 1 2月12日(金) 15:40~17:30 第13会場専門医のための神経集中治療EDS1-2 持続脳波モニタリング大阪府三島救命救急センター小畑 仁司集中治療管理を要する患者は、てんかん発作、脳虚血、脳浮腫、感染症、頭蓋内圧亢進など、さまざまな神経学的傷害を受ける危険が高く、これらを治療せず放置すれば永続的な神経症状をきたしうる。しかし、通常の脳波は約30 分間の記録でしかなく、連続脳波モニターによって初めて異常が判明することが稀ならずみられる。非痙攣性てんかん患者の同定や原因不明の意識障害患者の評価を目的として連続脳波を実施したところ、全患者の19%に脳波異常が見られ、そのうちの92%が非痙攣性てんかんであり、モニター開始後1時間以内にてんかん波形が出現したのは15%に過ぎず、24 時間で88%に達した(Claassen, Neurology 2004)。また、脳虚血の1-10%、頭部外傷の8-14%、くも膜下出血の14%、脳内出血の1-21%、心停止蘇生後の30%にてんかん重積をきたし、これらの病態では連続脳波モニターの意義が大きい(Sutter, Crit CareMed 2013)。米国臨床神経生理学会の集中治療連続脳波タスクフォースは、非痙攣性てんかん、非痙攣性てんかん重積、その他の発作性イベントの診断、痙攣発作や痙攣重積状態の治療効果のアセスメントを連続脳波モニターの適応として推奨、脳虚血リスクの高い患者における虚血の診断、薬剤よる鎮静や昏睡療法患者、心停止蘇生後患者の予後評価を同じく適応として提案した(Herman, J ClinNeurphysiol 2015)。欧州集中治療医学会の神経集中治療セクションも同様に連続脳波モニターの適応について勧告した(Claassen,Int Care Med 2013)。しかし、10-20 電極法による連続脳波モニターは専任技師や判読医なしでは実施困難である。amplitude-integrated EEG(aEEG)は脳波の振幅の変化を圧縮加工して半対数目盛で表示し時間軸を圧縮して表示したトレンドグラフである。通常脳波と比較して電極数が少なく,装着,維持,判読が比較的容易であることから、ベッドサイドにおける新生児の脳機能モニターとして,NeonatalICU で広く普及している。近年、成人においても心停止後症候群(post cardiac arrest syndrome: PCAS)を中心に神経集中治療領域での報告がみられるようになった(Rundgren, Crit Care Med 2006, 2010, Oh, Resuscitation 2013, Circulation 2015)。Ohらの報告によれば、PCAS 患者において、モニター開始直後は平坦脳波もしくは低電位であっても、24時間以内に連続パターンに移行すれば高い感度と特異度で転帰良好を予測できた。また、転帰不良の陽性的中率はサプレッション・バーストが98.3%、てんかん重積が96.4%であり、予後評価にきわめて有用であった。持続脳波モニタリングについて当施設のaEEG に関する知見とともにレビューする。