ブックタイトル第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集

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第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集

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第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集

-192-EL10国立病院機構 東京医療センター本田 美和子高齢社会を迎えた日本では、加齢によって認知機能が低下するにつれて自分が受けているケアや治療の意味が理解できなくなり、拒絶や暴言・暴力行為などを表出する高齢者に対面する医療・介護者が増えています。現在の医学・看護学は「治療の意味が理解でき、検査や治療に協力してもらえる人」を対象とすることを前提にしていますが、認知機能が低下した方々にとってはその前提条件は必ずしも得られていません。とりわけ、重篤な状態の患者が対象となる集中治療の現場においては、提供される医療が自分のためと理解できずに激しく抵抗する人々に、どうすれば適切な医療やケアを届けることができるか、という問題が、医療の質を担保するための喫緊の課題となりました。このなかで、やむを得ず身体的・薬物的な抑制をすることが日常となったり、ケアを行う人が疲弊して職を辞すなどの看護人材の離職にも直結する事態にわたしたちは直面しています。ケア困難となる状態は高齢者の健康と生活の質を保つことができず、同時に本人だけでなくケア提供者にも心理的ストレスを生じさせています。さらに認知症の行動・心理症状の増悪は、周囲環境からのストレスが契機となることから、ストレスを感じさせないケアの実践が現代医療には求められています。ユマニチュードは体育学を専攻するイヴ・ジネストとロゼット・マレスコッティの 36年の経験の中から創出した、知覚・感情・言語による包括的コミュニケーションに基づくケア技法です。これは「あなたは大切な存在です」という言語および非言語のメッセージをケアを受けるひとが理解できる形で届け、質の高いケアを実現させる、哲学と理論からなる技術です。ユマニチュードを3 年前から導入している東京医療センターでは、一般病棟のみならず、三時九球を担う救命救急センターにおいても看護師がこの技法を用いることによって、看護の質を上げることができると実感し、現在ケアについての看護研究を進めています。また、認知症の行動心理症状の改善や、看護職員のバーンアウトの軽減についての臨床研究報告も行われるようなりました。今回の講演では、このケア技法の概要と、集中治療の現場で実践しているケアの内容、そして臨床研究の結果についてお伝えいたします。教育講演 10 2月12日(金) 10:00~10:50 第9会場集中治療の現場にこそ必要な、優しさを伝えるケア技術:ユマニチュードEL11聖路加国際大学 看護学部 成人看護学宇都宮 明美近年、臨床看護師教育においてクリニカルラダーは、臨床実践能力評価および教育プログラムのツールとして大きな役割を果たしている。その要素には、看護実践能力、組織的役割遂行能力、研究を含む自己研鑽能力として枠組みを捉えられていることが多い。一方でクリニカルラダーは各組織が求める(目指す)人材に焦点が当てられており、言わば患者中心ではなく組織中心的思考の産物とも指摘できる。 では臨床能力とはなにか、看護実践における専門性とは何かということが論点となる。私は看護者が患者・家族を含むケアの受け手に対して最善と考えるケアを提供することが、実践のコアとなると考える。そのために看護師は対象のニーズを捉え、ケアを検討・選択し、チームでケアを提供する。また看護管理者は看護スタッフの能力が最大限発揮できるような環境を調整する。この患者中心という原点回帰なくして、臨床能力を検討することはできない。 次に、同じ経験年数を重ねた看護師でも看護実践の場で発揮できる能力は様々に異なる。それは経験した回数(時間・期間)ではなく、経験をどのように昇華し、自らの知識に融合されたかの違いによると考える。では、どのような教育をすれば経験を昇華できるのか。専門職に必要な能力として、知識・技能・態度の3要素が上げられているが、育成が困難だといわれている態度においては課題が山積している。 集中治療領域の知識・技能・態度を概観しつつ、その育成について概説したい。教育講演 11 2月12日(金) 14:40~15:30 第9会場集中治療領域における看護師の臨床実践能力とその育成