CCU設置のための指針

登録日:2006年6月28日
改定日:2007年3月24日

CCU設置のための指針 ―2004年3月―

日本集中治療医学会 集中治療部設置基準検討委員会
上嶋 健治(岩手医科大学第二内科)
木村 一雄(横浜市立大学医学部附属市民総合医療センター心臓血管センター)
宮崎 俊一(国立循環器病センター内科系心臓集中治療科)
落合 亮一(慶應義塾大学医学部麻酔学教室)
妙中 信之(宝塚市立病院集中治療救急室):委員長
平井 勝治(奈良県立医科大学附属病院集中治療部)
松川 周(公立刈田病院副院長)
宮内 善豊(社会保険徳山中央病院麻酔・集中治療科)
安本 進(工業デザイナー、ホスピタルデザイナー)
浅井 康文(札幌医科大学救急集中治療部):委員会担当理事

目次
はじめに
CCU設置のための指針
解説
おわりに

はじめに

2002年3月、本委員会は、集中治療を推進するにふさわしい集中治療部の在り方を模索し、患者の安全性・快適性を追及するのはもちろん、医療スタッフにとっても利用しやすく快適な環境を構築するための指針を策定し、日本集中 治療医学会の承認を得て「集中医療部設置のための指針-2002年3月-」を公表した。しかし、これはいわゆるgeneral ICUを想定したものであり、CCUや新生児ICUなどgeneral ICUとは異なった側面を持つ集中治療施設については別途に作成するべきであるとしていた。今回、従来の集中治療部設置基準検討委員会のメンバーにCCUを有する施設の循環器専門医を新たに加え、CCU設置のための指針を策定した。
わが国でのCCUは純粋なcoronary care unitの形式を取る施設はまれで、いわゆるcardiac care unitとして心不全、不整脈、心筋炎、急性大動脈解離、急性肺血栓塞栓症などもその対象疾患となっている。したがって、ここで述べるCCUとは、cardiac care unitをも包括した概念で、主たる疾患は冠状動脈疾患であるが、循環器内科が担当する重症患者を収容する集中治療病棟とする。
なお、現在generalICUの一部をCCU用の病床として使用する施設もあるが、今回の指針は全病床をCCUとして使用することを前提に策定した。また、本指針における述語表現は既報(集中医療部設置のための指針-2002年3月-)に準じた。(主として「・・・であること」、「推奨する」、「望ましい」という三段階の表現を用いた。
厚生労働省基準や日本集中治療医学会専門医認定施設基準に記載されている内容のほか、CCUとして最低限必要な条件である場合には「・・・であること」といった断定的な表現を用いた。
設備の項には日本規格協会(JIS)などにより義務付けられていることが多く、これらは「・・・でなければならない」などの断定的表現とした。最低限必要とまではいかないが、患者の安全性や治療の確実性などを確保するために強く望まれる条件には「推奨する」という表現を用いた。
それぞれの施設の事情が許す限り備えるべき条件である。また、備えておくとCCU業務の円滑化に重要な役割を果たすと考えられる条件などは「望ましい」とした。)
なお、わが国のCCU施設は厚生労働省基準(厚生労働大臣の定める施設基準特定集中治療室管理の施設基準保険局長通知保発第8号)を満たすべく設計され稼動しているが、本指針は既報と同様、厚生労働省基準の内容を変えようとするものでなく、CCU施設を新築または改築する場合に留意すべき点をわかりやすく解説するために策定したものである。言いかえれば、厚生労働省基準は国から認可されるために満たすべき最低基準であるが、本指針はそれとは異なり、いわば理想的なCCUを作るための一つのガイドラインを目指したものである。
それぞれの施設においては、厚生労働省基準を満たした上で、各施設のおかれた状況に合わせて本指針を応用し良好な集中治療環境を設計し建築すればよい。
また、本指針は2004年2 月時点において策定されたものであり、一定期間を経た後に見直されることが望ましい。

CCU設置のための指針

1.病院内におけるCCU の位置付け
CCUは、重症心血管疾患患者をできるだけ早期に収容し治療を開始することを主目的とし、施設内の各部門だけでなく、当該地域の医療機関や救急隊とも連携する部門である。救急医療部門との機能的連携は特に重要である。また、収容した患者の安静度を安全かつ迅速に拡大し、一般病棟での管理が可能な状態まで回復させる急性期心臓リハビリテーションの機能も併せ持つものである。
さらに、集中治療に関する臨床教育および専門教育の研修ができることが望ましい。

2.医療スタッフの配置
(1)医師
CCUに専従する医師が常時CCU内に勤務していること。専従医には、日本集中治療医学会が認定した集中治療専門医、または、日本循環器学会が認定した循環器専門医など循環器救急に指導的立場にある人を1人以上含むこと。心臓外科医および麻酔科医が当該施設内に勤務しているのが望ましい。
(2)看護師
看護師が常時、患者2名に1名以上の割合でCCU内に勤務していること。必要時には患者1.5名に1名以上の看護師を配置できる体制を整備しておくことが望ましい。
(3)放射線技師
緊急造影のための放射線技師が施設に常時勤務していることが望ましい。
(4)臨床工学技士
CCUでの業務に関与できる臨床工学技士が当該施設に勤務していること。CCUに専従する臨床工学技士が勤務することが望ましい。
(5)薬剤師
CCUでの薬剤管理・薬剤調製などに関与する薬剤師がCCU内に勤務することが望ましい。
(6)理学療法士
心臓リハビリテーション業務にも関与できる理学療法士が当該施設に勤務していることが望ましい。
(7)病棟内クラーク(あるいは事務職員)
保険請求をはじめ事務的業務を行う病棟内クラーク(あるいは事務職員)を配置することにより、CCU業務の円滑化をはかることが期待できる。
(付)上記各項でいう“常時”とは、勤務様態の如何 にかかわらず午前0時より午後12時までの間のことである。CCU勤務の医師および看護師はCCU以外の当直勤務を併せて行なわないものとする。

3.CCUフロア構成
既報のように集中治療部の運営には病床以外にこのような種々の部門が必要であり、CCUも例外ではない。したがって、フロアは病床スペースの数倍の面積が必要となり、そのレイアウトはスタッフの動線や患者搬送なども加味して考慮しなければならない。
(1)面積
1)病室
CCUの病床数は4床以上とする。CCU病室は、疾患の特殊性と患者の精神庇護重視の観点から個室が望ましい。CCUの病室面積は1床あたり20㎡以上を推奨する。ベッドセンター間の距離(間口)は3.6m以上を推奨する。なお、最重症患者治療のため25㎡以上の個室があるのが望ましい。特定機能病院においては、これ以上の占有面積を持つ病床を有することが望ましい。
2)スタッフステーション(ナースステーション)
スタッフステーションの適切な面積は、施設の状況により決定すべきである。
3)器材室
集中治療部内に専用の器材室を有すること。器材室面積の目安は、保有する病床数に応じて1床あたり10㎡以上であることが望ましい。
4)廊下
患者入退室経路、薬剤、医療器材、ゴミなどの搬送に利用する廊下幅は、内のり寸法で2.4m以上であることが望ましい。
5)その他の付属諸室
CCU業務を円滑に行なうためにCCU内に必要な付属諸室は、医師室、医師控室、部長室、看護師室、看護師控室、看護師長室、技師(士)室、更衣室、情報管理室、検査室、調剤および薬剤管理室、汚物処理室、洗浄消毒室、リネン室、当直室、トイレ、浴室(シャワー室)、面談室,カンファレンス室、家族控室、配膳室などである。付属諸室の配置や面積は施設の状況により決定すべきである。
6)CCU総延べ床面積
病室、スタッフステーション、器材室、廊下、その他の付属諸室をバランスよく配置するためのCCUの総延べ床面積は、保有する病床数に応じて1床あたり75㎡以上が目安となる。特定機能病院においてはそれ以上の面積が必要とな る。
7)天井高、柱間スパン
個室およびオープン病床のベッド上の天井高は2.8m~3.0m が望ましい。また、柱間スパンは病室の配置や形状や使いやすさを左右する。大空間構造に出来ない場合、通常のラーメン構造の柱間スパンは7.2m以上が望ましい。
(2)各室が備えるべき要件
1)病室
床の耐荷重は1㎡あたり1トン以上とする。医療ガス配管は、1床あたり酸素×2、空気×1、吸引×2が最低限必要であり、収容患者の重症度に応じて増設すべきである。特定機能病院においては、一床あたり酸素×4、空気×2、吸引×3を推奨する。揮発性麻酔薬や一酸化窒素などを使用する可能性の高い施設では余剰ガス排気設備の設置が望ましい。電源容量やコンセント数、院内感染防止のための手洗い、血液浄化のための給排水、病室の配色、騒音、照度については後述する。時刻がわかるようにカレンダーと時計を設置する。病室には窓を設置しなければならない。窓にはブラインドなどを設置する。個室には患者観察のためにビデオカメラの設置が必要な場合もある。
2)スタッフステーション(ナースステーション)
スタッフステーションは、すべての病室への動線が短く、すべての病室を直視できる位置に配置するのが望ましい。スタッフステーションには、患者生体情報モニタやビデオ監視システムの映像など患者に関連した情報機器、病院情報システムの端末、ナースコール、カルテなどの書類、シャウカステン、電話、ファクス、コピー機、インターホンなどが設置される。薬剤保管と調剤のためのスペースはスタッフステーションとは独立することが望ましい。電源容量、電源コンセントの数と位置、手洗い設備の設置などは状況を考慮して決定する。
3)器材室
診断・治療機器および医療器材・器具の収納、機器の保守管理のため、CCU内に器材室が必要である。医療配管、電源装置を必要とする。出入り口のドアは物品および機器の搬入・搬出に支障をきたさない大きさとする。物品管理のため病院情報システム端末を備えていることが望ましい。
4)医師室、看護師室
医療スタッフが事務的処理、調査研究、教育などを行うスペースである。電話、FAX用回線、病院情報端末、インターネット回線などを備えることが望ましい。スタッフステーションとの連絡用インターホンは必須である。電源容量、電源コンセント数は使用人数や状況を考慮して設置する。飲食については衛生管理上の十分な注意が必要である。
5)医師控室、看護師控室
医療スタッフの休憩、飲食などを目的としたスペースである。医師控室と看護師控室は分離するのが望ましい。スタッフステーションとの連絡用インターホンは必須である。電話回線、インターネット回線を設置することが望ましい。
給湯、給排水が必要である。電源容量、電源コンセント数は使用人数や状況を考慮して設置する。
6)部長室、看護師長室
連絡用インターホン、電話回線、インターネット回線な どの設備、電源コンセントなどを設置する。
7)更衣室
病院内の更衣の形態および利用人員数により必要とされる広さは異なる。更衣室はCCU内にあることが必要である。トイレおよびシャワーを設備することが望ましい。
8)情報管理室
CCU内の患者生体情報管理システムのサーバーを設置する。電源設備が必要である。システムのメンテナンスのために独立した電話回線を設置する。セキュリティの観点から施錠可能である必要がある。
9)検査室
CCU内緊急検査のための検査機器を設置する。給排水設備、医療廃水設備、電源設備が必要である。電源容量およびコンセント数は設置する検査機器に応じて決定する。
10)調剤および薬剤管理室
調剤および薬剤管理のためのスペースをCCU内に設置することが望ましい。
薬剤保管庫、電源、電話、病院情報端末が必要である。
11)汚物処理室、洗浄消毒室
医療廃水設備、給湯・給排水、排気、電源(100V および200V)が必要である。
12)医師当直室
医師当直室をCCU内に設けるべきである。男女ともに利用することを考慮し、当直室数は複数とすることを推奨する。ベッド数については当該施設の診療内容を加味して決めること。内線電話、スタッフステーションとの連絡用インターホンを設置する。給湯・給排水を設ける。
13)トイレ、シャワー
CCU内に職員用トイレが必要である。職員用シャワー設備を設けるのが望ましい。また、患者用のトイレ、浴室(シャワー室)も必要である。
14)面談室
患者家族への病状説明、インフォームドコンセント取得のための面談室を集中治療部内に設置すべきである。プライバシー保護および環境を考慮する必要がある。説明のため、情報コンセント、シャウカステンなどの設置が望ましい。
15)カンファレンス室
症例検討会や治療方針の討議、スタッフ教育の観点から、CCU内に設置することが望ましい。病院情報端末や生体情報端末を設置すること。シャウカステン、コンピュータ、ビデオ再生装置、スライドプロジェクタ、ビデオプロジェクタ、シネビューワーなどの会議用設備も必要となる。
16)患者家族控室
CCU内あるいはCCUに近接して家族控室を設置すべきである。家族のプライバシーを保護できる環境に配慮すること。スタッフステーションとの通信手段を確保すること。近傍に公衆電話が設置されていると利便性が高い。

4.医療機器
(1)CCU内に次の医療機器(器具)を常備していること。
a. 救急蘇生装置(気管挿管器具、気管切開器具、用手人工呼吸バッグなど)
b. 人工呼吸器
c. 除細動器
d. ペースメーカ
e. シリンジポンプ
f. 輸液ポンプ
g. 心電計
h. ポータブルX線撮影装置
i. 生体情報連続モニタ(心電図、圧2 チャンネル、パルスオキシメータ)特定機能病院においては圧3チャンネル以上を推奨する。
j. 心拍出量計
k. 混合静脈血酸素飽和度モニタ
l. 体温測定装置
m. 酸素濃度計
n. 超音波診断装置
o. 小外科手術器具(静脈切開、胸腔・腹腔穿刺など)
(2)CCU内に次の医療機器(器具)があることが望ましい。
a. 気管支鏡
b. 血液浄化装置
c. 脳波計
d. 体重計
e. 体温調節装置
f. 呼吸機能測定装置(カプノメータを含む)
g. 間欠的空気圧迫式マッサージ装置(深部静脈血栓症予防)
h. 無影灯
i. IABP(大動脈内バルーンパンピング)
j. PCPS(経皮的心肺補助装置)

5.臨床検査
CCU内で以下の項目が常時測定できること。
a. 血液ガス分析
b. Na,K,Ca
c. 賦活凝固時間(ACT:activated coagulation time)
d. 血糖値
e. ヘモグロビン値またはヘマトクリット値
f. トロポニンT、トロポニンIまたはH-FABP

6.設備
CCUは以下の諸設備を備えなければならない。諸設備とは電源、空調、給排水、医療廃水、医療ガス(酸素・吸引・圧縮空気)、照明及び環境制御システムなどである。諸設備は当該する各種法令に基づいて法規・規格に適合し、定められた基準を満足するものか、それ以上のものでなければならない。
(1)電源設備
CCUに供給される電力は他部署とは独立していなければならない。電力は、主力電源を幹線からCCU内の主配電盤に接続し、遮断回路のパネルに接続された分電盤を通じてCCU内へ分岐回路から配電すること。主配電盤は停電時の瞬断に対応した系統別の非常用電源(一般非常電源、特別非常電源、瞬時特別非常電源)に接続されていなければならない。ブレーカには分岐先の名称表示を明確にしておく必要がある。電気事故および電気系の火災等に対応するための安全対策・防災対策を充分備えなければならない。電気的な緊急事態のために電力を遮断しなければならない場合に、主配電盤に容易に近づくことができるのは必要不可欠なことである。非常電源など病院電気設備の安全基準はJIS T 1022-1996の安全基準に準じるものとする。併せて配電規定JEAC 8001-1995に適合させること。
1)電源容量
電源は1床ごとにアイソレートされており、1床あたりの電源容量は30A以上あることを推奨する。日常的に消費電力の大きな医療機器を使用する場合は、それに応じた電源容量を確保しなければならない。Macroshockやmicroshockなどの漏れ電流対策のため電源は医用接地(保護接地、等電位接地)されていなければならない。
2)コンセント
CCU内の医療機器用コンセントは3Pとする。各3Pコンセントまたはコンセント群は、主パネル内の個別の回路遮断器を通じて配電されなければならない。コンセント数は、電気容量に則して1ベッド当り16~20個が必要であるが、多数の医療機器を使用する病床では30個以上を推奨する。ベッド頭部側のコンセントは、接続を容易にし、かつ、コードを持って引き抜かないように床上900mm程度の位置に設置することが望ましい。電源コードが床を這わないようにするには、ベッド頭部側コンセントとベッド間の距離は300mm~1600mmの範囲内がよい。また、壁にはコンセントが必要だが、頭側、足側の天井から電源をとる方法もある。
(2)空調設備
CCUは、適切で安全な空気質条件を常時維持しなければならない。空調能力は基本的には部屋の容積と施設の要求仕様、換気回数によって定められる。空気感染防止を目的とした隔離用個室を設ける場合には別空調を設置しなければならない。
1)空気清浄度
CCU にはISO(国際標準化機構)基準によるクラス7、NASA基準によるクラス10,000~100,000程度の清浄空気が供給されることを推奨する(感染防止対策の項参照)。
2)温度、湿度
各病室は、それぞれで調温調湿装置を設けることを推奨する。冷暖房および加湿度の調整は患者の快適性に選択基準を置き、良好な室内環境を保持すべきである。
3)気流の制御
CCU内での気流の制御をする必要がある。空気の流れは準清潔区域、一般清潔区域、汚染管理区域へと制御設定する必要がある。感染症など隔離を目的にした個室においては正圧、負圧および等圧を切換え使用できることが望ましい(感染防止対策の項参照)。
(3)医療ガス、吸引設備
中央供給方式の酸素、圧縮空気および吸引などの設備は、「医療ガス配管設備(JIS T 7107-1997)」に準じなければならない。低圧及び高圧に関する可聴、可視の警報装置を集中治療部内と中央監視センターの両方に設けなければならない。火災や過剰な圧力がかかった場合、あるいは保守のため供給を中断できるよう手動の遮断弁を両方の域内に設置し、かつ明示しなければならない。
(4)照明設備
CCUの照明に関して十分な証拠をもって適切とした報告はないが、一般的な頭上からの照明は,患者の身体表面色を出来るだけ正確に把握するため演色性の高い照明器材の使用を推奨する。作業ごとに適切な明るさを確保するため作業燈および局所照明(無影灯を含む)などを設置すべきである。近年、重症患者といえども昼夜の区別をつけるべきであるとの意見がある。昼間は十分な明るさを確保し、夜間は照度を落として睡眠をとりやすくするための調整器を設けなければならない。夜間、照度を落とした場合に医療スタッフの業務に支障をきたさない照明設備が必要となる。参考として、重症病室および回復室の照明については「照度基準工業標準(IES照度表)」に記載がある。
(5)病室内トイレ
CCU病室内にトイレ設備を設置する場合は、冷温水の供給および汚物処理、器材洗浄などフットスイッチによる操作が可能であることが望ましい。排気脱臭のための空調も考慮する。
(6)その他の周辺環境
CCU周辺環境は、患者、家族、見舞い客および医療スタッフに与えるストレスを最小限にできるよう、自然の景観を考慮し、病室の配色、騒音などにも十分配慮して整備されるべきである。
1)配色、騒音
配色は、患者および医療スタッフのさまざまな身体的反応にも影響する。環境条件を考慮し色彩心理学に基づいて最適な色彩調整を図り、全体をソフトイメージの室内環境にできるものにしなければならない。色彩心理学や快適性工学など専門領域の協力が必要である。騒音についても病室内の騒音レベル軽減のため、床材、天井材、壁面材は吸音効果の高い材質を考慮する。

7.他部署との位置関係、動線など
(1)他部署との位置関係
CCUは救急部、手術部、放射線部、輸血部、検査部などと近接していることが望ましい。経皮的冠動脈形成術を行うため、特に放射線部とは同一フロアで近接していることが推奨される。
(2)CCUへの出入り口
医療スタッフと、患者および患者家族の出入り口は分離するのが利便性が高い。来訪者とCCU内部との連絡のためにインターホンなどを設置する。
(3)患者搬送、物品搬送
患者のプライバシー保護と搬送の利便性を確保するため、専用の動線を設置するのが望ましい。CCUへの物品搬送ルートは専用のものが設置されるのが望ましい。

8.プライバシー保護とアメニティ
患者プライバシーの保護とアメニティ重視の視点は重要であるが、生体情報の中央監視を可能とし同時に室外にアラーム作動を示す視聴覚表示の設置を考慮する。ナースコールは必須である。社会的ならびに個人的情報を提供するために、テレビアンテナ回線、電話回線、インターネット回線(病院情報システムとは別系統)などを備えるのが望ましい。

9.感染防止対策
感染防止の観点からCCU設置時に留意すべき点について述べる(感染防止のための具体策を記載するものではない)。
(1)感染対策責任者
病院内またはCCU内に権限を持った感染対策責任者(医師および看護師)を置くことが必要である。
(2)手洗い設備
標準予防策を実践するための手洗い設備は、個室にあっては1室当たり1箇所、open floorにあっては2床当たり1箇所程度設置されていることが望ましい。フットスイッチや赤外線感知スイッチなど、手を開閉レバーに接触することなく流水のon-offが可能な手洗いとする。手洗い水の温度は調節可能であること。標準予防策を実践するための手洗い設備としては基準を満たした水道水であれば十分であるが、貯水槽を使用する給水システムの場合は水質検査の必要がある。病棟内処置のため、CCU内に滅菌手洗い設備を備えることが望ましい。CCUの出入り口(または病室出入り口)には手洗い設備を設置することを推奨する。
(3)空調設備
病棟内の空気清浄度を上げることによりCCU内における感染症発生頻度が減少するという直接的な証拠はないが、易感染性患者を収容すること、および感染の機会が多いことを考慮し、前述の空気清浄度を保つことを推奨する(6-(2)空調設備を参照)。塵埃の空中滞留を短くする観点からは、吹き出しは患者上方の天井面、吸い込みは患者の枕元、足元などの壁面下方が望ましい。CCU内部で問題となる院内感染症は接触感染により伝播するものが多い。接触感染である場合は個室内はopen floorと圧較差を作る必要がないことから、個室空調は相対的正・負圧切替のみでなく等圧の設定も可能なことが望ましい。
(4)室内殺菌燈
備え付けの室内紫外線殺菌燈は、紫外線が直接届く部分に対する効果は期待できるが影になった部分には効果はない。設備する場合は室内に影になる部分を作らない配慮が必要である。天井、壁面、床などの消毒が感染防止に有効であるとする証拠はなく、設置しても院内感染防止上の有効性は実証されていない。
(5)ガウン、スリッパ、紫外線殺菌装置など
入室時着替え用ガウンの着用やスリッパの履き替え、およびこれらを殺菌する紫外線殺菌装置が院内感染症発症を減少させるという直接的証拠はないが、これらの設備およびその運用はCCUおよび病院全体の感染防止対策の観点から採否を決定すべきである。

10.コンピュータシステム
(1)患者情報ネットワークシステム
ベッドサイドモニタおよびセントラルモニタの他に、患者から得られる生体情報を電子的記憶媒体に記録し統合して利用できる患者情報ネットワークシステムを有することを推奨する。コンピュータ化の利点は、誤指示および指示引継ぎ時転記ミスの防止などの安全性の確立、保険請求事務の省力化などにある。
また、本システムは患者情報の収集のみならず、患者の安全性の向上や病棟管理の基礎資料(患者重症度、予後・滞在日数や医療費など)を知るのに貢献するものである必要がある。患者情報の漏洩防止のため、システムのセキュリティ対策は必須である。
(2)システムの利便性、処理能力
システムは、ベッドサイドモニターとセントラルモニターシステム間の相互方向のデータリンクが取れていて、同一データの複数回入力を要しないもの(HISその他の院内システムとも)が使用効率を上げる。本システムへの患者情報は、ベッドサイドモニターからのもののみならず、CCUに設置されている検査機器(血液ガス分析装置,血球計数装置など)や各種画像(動画像も含む)も含むものとする。ネットワークは画像などを高速で伝送するのに十分な処理能力を必要とする。無線LANを使ったシステム構築はモニター信号との干渉に配慮すること。
(3)病院情報ネットワークとの関係
本システムは病院情報ネットワーク(HIS)と独立していてもかまわないが、相互に情報のリンクがとれていることが必要である。具体的には、院内他部門からのデータがCCU内システムで参照が可能であり、CCU内での患者データが院内(集中治療部外)で参照が可能であるといった、全体的なシステム構成をはかる必要がある。将来の機種変更が可能なように、データベースは製造会社を選ばない汎用性のある構造を持つことを必要とする。
(4)記録の電子化
記録の電子化のために各ベッドサイドに情報端末を置く必要がある。

解説

1.指針の根拠
指針を作成するにあたって、できるだけ科学的根拠に基づくよう努力したが、多くは委員会を中心としたrecommendationsという形をとった。また、CCUの面積とフロア構成や設備および感染症対策については、集中治療部設置のための指針 -2002年3月-におおむね準拠した。

2.指針作成にあたって留意した点
ICUの設置基準では、ICUは患者や医療スタッフが病院の全部門から集まる、中央部門であるという位置付けがなされていた。しかし、CCUに収容する患者は大部分が循環器領域に限定されている。しかも、一部には院内発症や院内で重症化した患者を含むが、大多数が外部からの受診患者である。実際には、他の医療機関からCCUに直接紹介される患者だけでなく、併設された救急部門への紹介患者や場合によっては一般および救急外来に直接受診して患者が紹介されることもある。したがって、CCUは救急部門を含むすべての外来部門と密な連携をとり、重症心血管疾患を見落とすこと無く、できるだけ早期に収容し、治療を開始する機能を有さねばならない。また、CCUに収容される患者は、心血管造影やCT・MRIなどの検査を受けることが多い。さらには、緊急手術の対象となることもあるため、他部門との連携が重要である。これに伴い、関連部署も緊急検査や緊急手術に対応できることが望ましい。
CCUは重症心血管疾患の急性期患者を収容し早期に治療にあたる病棟であるが、同時に急性期心臓リハビリテーションの機能も併せ持つ必要がある。収容患者の安静度を拡大して、一般病棟での管理が可能な状態に回復させて転棟させる必要がある。一般病棟や心臓リハビリテーション室との連携も重要である。
このように、CCUの開設や運用に当たっては施設内の諸部門との連携を常に考慮すべきことを強調したい。
なお、わが国ではCCUが冠動脈疾患だけを収容することはまれである。ここでは、CCUを重症心血管疾患の中でも、循環器内科が担当すべき患者を収容す る集中治療病棟と位置付けた。また、現在CCU がgeneral ICUの一部をCCU 用の病床として使用されている施設も多い。しかし、この指針ではICU で収容 する患者とCCUで収容する患者の病態や特性が異なることとCCU の在り方を 考慮して、現状とはやや乖離するが、全病床をCCU専用とすることを前提とし た。とくに、疾患の特殊性と収容患者の多くは通常の意識下にあるため、プラ イバシーの保護や精神衛生上の観点からも個室への収容を原則とした。

3.動線について
CCUはICUと同様に他部署との連携が重要である。ここで考慮すべき動線は放射線部、手術部、検査部、救急部である。ICUと異なり輸血部と近接する必要度は低い。特に重要な動線は放射線部であり、日常的に行われる緊急冠動脈造影検査および経皮的冠動脈形成術、補助循環装置挿入に際しての透視、などを考慮して患者移送の便宜は図るように動線を設計すべきである。また救急部からの動線も重症例の搬送を考慮して短くすべきであり、これらの部門は同一フロアにあることが望ましい。

4.臨床検査と医療機器について
臨床検査については、CCU 内で常時測定が可能であるべき項目のみの記載とした。この項目は、わが国の国立大学病院集中治療部を対象に行ったアンケート調査において、ほとんどすべての施設が必須であると回答したものである。
この他、CCUでは急性冠症候群の早期診断やリスク層別化に有用である心筋トロポニン(T、I)、ヒト心臓由来脂肪酸結合タンパク質(H-FABP)の簡易測定キット等が必要である。また、検血(血球計算)、血液生化学検査(肝機能・腎機能検査など)、検尿なども治療上は必須であるが、これらの検査は、CCUが設置される病院であれば当然、院内において実施可能であると考えたため記載しなかった。
医療機器についてはCCU内に常備しておくべきものを列挙した。基本的にはICUに備えるべき医療機器と重複するものが多い(集中治療部設置のための指針2002/03参照)。ICUとの大きな相違点は超音波診断装置の取り扱いである。
CCUへの入院例は冠動脈疾患を主とする心臓疾患症例であり、原則として緊急症例である。従って、すぐに入手できる情報として心電図所見とともにエコー画像所見は極めて重要と考えられる。例えば急性心筋梗塞ではCPKの上昇が見つかる前にエコー上の壁運動異常が出現する。また僧帽弁閉鎖不全などの弁異常の発見や下大静脈拡大やドプラー法による肺動脈圧の上昇など迅速な診断と治療において決定的な役割を果たすものと位置づけられる。その他、Swan-Ganzカテーテルを用いた心機能測定に必要な機器(心拍出量計など)もCCUには必須とした。

5.設備について
a.電源設備
病室の電源容量は、消費電力に応じて決定しなければならない。たとえば超音波診断装置の消費電力は1500VA程度、熱交換器を使用する医療機器の消費電力は1000VA程度であり、意外に大きいものが多いので注意を要する。
b.空調設備
1)空気清浄度について
厚生労働省の特定集中治療室管理の施設基準に記載されている「バイオクリーンルーム」には明確な規定がない。日本病院設備協会規定(病院設備の設計・管理指針HEAS-02-1998)には、集中治療部は清浄度クラスIII・準清潔区域とすべきであると記載されている。しかし、集中治療部の空気清浄度と院内感染発症率などを厳密に比較検討した報告は見当たらない。国立大学病院集中治療部を対象にした院内感染に関するアンケート調査によると、open floorの清浄度はNASA基準によるクラス10,000~100,000となるよう設計されている施設がほとんどである。この清浄度はISO(国際標準化機構)基準ではクラス7に相当する。本指針では、これを推奨条件とした。なお、空気清浄度の基準にはいくつかのものがあり、病院設計のための統一的基準はまだないのが現状である。一方、主として内科系のCCU においては、バイオクリーンである必要性は少ない。しかしICUと併設される場合には、クラス100,000が相当である。
2)空調設備の配管などについて
空調や排気のための配管やダクトスペースなどは、天井裏や床下に設置されるのが普通である。しかし、空調の吸い込みを床付近とし、これを天井裏に誘導して排気されることがある。この場合は誘導管が思わぬ障害物となって病室スペースを狭隘にしたり、スタッフステーションからの視界を妨げることがある。空調に限らず諸設備の配管は、諸室の配置を表すだけの平面設計図とは別の図面上に記載されるため見落としがちになるので注意を要する。設計段階でどう設置されるのか留意しておくこと。
3)照明について
国際照明委員会CIEでは病院施設の光源は平均演色評価数Raが80以上3を推奨している。CCU病室内では特に肌表面色がより正確に判断される平均演色評価数の高いのものが望ましい。
病室内外に設置する可変調光器はスイッチ入力時、瞬間的に心電図モニターにアーチファクトが混入する恐れがあり、注意を要する。
4)病室内トイレ設備について
CCU病室内のトイレ設備(ユニット型、簡易型)はリハビリテーションの見地から不用論もあるが、CCU施設内には共用型の患者トイレを設けない例が多い。従って歩行可能な患者に対しての病室内トイレの設置は心理面や実利面から有効である。

おわりに

医師を中心とした医療従事者が、新しくCCUを設計したり改築する場合に、これを見れば全体像や在り方、注意点などの大略が理解できるものを目指して指針を策定した。既報の指針(集中治療部設置のための指針-2002年3月-)と整合性を保ちつつ、CCUの特殊性から再考すべき点を修正・付記した。一定期間の後に、本指針単独または既報の指針と併せて、見直し改定されることが期待される。

文 献

1.海外ガイドラインなど
● Guidelines / Practice Parameters Committee of the American College of Critical Care Medicine, Society of Critical Care Medicine: Guidelines for intensive care unit design. Crit Care Med 1995; 23: 582-588.
● Oh TE: Planning and design of an ICU. Crit Care 1996; 3(4): 4-5.
● Ferdinande P, Members of the Task Force of the European Society of Intensive Care Medicine: Recommendations on minimal requirements for intensive care departments. Intensive Care Med. 1997;23: 226-232.
● The Standards Sub-Committee of the Intensive Care Society; Farman JV, Woodford P, Kerr JH, et al: Standards for intensive care units.
BioMedica Ltd., London.
● Faculty of Intensive Care,Australian and New Zealand College of Anesthetists: Minimum standards for intensive care units.
http://www.fic.anzca.edu.au/policy/index.htm
● James WP, et al: Teaching hospitals 500-900 beds. Based on examples in UK, Belgium, West Africa, USA and Far East. In: Hospitals, Design and development. The Architectural Press Ltd., London.

2.論文
● 集中治療部設置のための指針-2002年3月-
日本集中治療医学会雑誌第9巻第2号pp159-168、2002年4月.(http://www.jsicm.org/)
● 趙 翔、長澤 泰、岡 ゆかり:医療看護作業に見る集中治療病棟の領域構造の研究.
日本建築学会計画系論文集第510号pp133-138、1998年8月(J Archit Plann Eniron Eng, AIJ, No 510, pp133-138, Aug, 1998)
● 趙 翔,長澤 泰:模擬実験と業務体験による医療・看護作業領域の定量分析総合病院の集中治療病棟に関する建築計画の研究.
日本建築学会計画系論 文集第530号pp179-184、2000年8月(J Archit Plann Eniron Eng,AIJ, No 530, pp179-184, Aug, 2000)
● 宮原 博・高柳 慎太郎:病院の非常電源の考え方.
病院設備 第38巻第6号(214 号)、1996年11月.
● 大塚 敏文・山本 保博:ICU・CCUの温湿度・清浄度.
病院設備第30巻第1号(161号)、1963年1月.
● 手塚 昌宏、山田 研登:救急部門の証明について.
Emergency Nursing 第16巻第1号、2003年1月.pp10

3.学会記録、アンケートなど
● 妙中信之:ICU基準の見直し
-国立大学病院集中治療部42施設を対象に行ったアンケート調査から.
日集中医誌 1998;5:419-420.
● 長澤 泰:集中治療病床周辺の作業領域.
日集中医誌1998;5:420-421.
● 林 成之:医療の原点を視点においた機能的ICU.
日集中医誌1998;5:421-422.
● 園田 康男:機能的センターをめざして.
日集中医誌1998;5:422-423.
● 安本 進:よりよいICUの最適スペースとは.
日集中医誌1998;5:423-424.
● 長澤 泰、妙中信之:座長のまとめ.
日集中医誌1998;5:424-425.
● 国立大学病院集中治療部協議会 集中治療部設置基準見直しワーキンググ ループ:集中治療部設置基準の見直しに関 するアンケート調査.
日集中医誌1999;6:69-74.
● 全国国立大学病院集中治療部協議会:国立大学病院集中治療部設置基準に関する提言.
日集中医誌2000;7(2):143-144.

4.政府刊行物など
● 日本病院設備協会規格 病院空調設備の設計・管理指針
HEAS-2-1998日本病院設備協会、1998年東京.
● 日本規格協会:病院電気設備の安全基準JIS T1022-1996日本工業標準調

5.査会審議.
● 日本電気協会電気技術基準調査委員会編:配電規定JEAC8001-1995.
● 日本規格協会:医療ガス配管設備JIS T 71-7-1997.
● 学会技術:屋内照明基準JIES-008(1999).
● 日本建築学会編:騒音防止の設計指針.
建築設計資料集成 丸善、東京.
● 国際標準化機構ISO 14644-1 要約AIR TECH社.
TECHNICAL REPORT No.056 1999年9月20日.


指針(案)策定協力委員
日本集中治療医学会CCU 委員会
田中 啓治(日本医科大学附属病院集中治療室):CCU委員会委員長
上嶋 健治(岩手医科大学第二内科):設置基準検討委員会委員を兼任
川名 正敏(東京女子医科大学循環器内科)
公文 啓二(国立函館病院)
茅野 真男(国立病院東京医療センター循環器科)
長尾 建(駿河台日本大学病院救命救急センター)
林田 憲明(聖路加国際病院内科)
本田 喬(済生会熊本病院心臓血管センター循環器科)
宮崎 俊一(国立循環器病センター内科系心臓集中治療科):設置基準検討委員会委員を兼任

本指針は、日本集中治療医学会理事会(平成16年1月9日、東京)、評議員会(平成16年3月3日、福岡)、総会(平成16年3月5日、福岡)において承認されたものである。
集中治療部設置基準検討委員会開催記録(本指針策定に関与するもの)
第1回:平成14年12月20日(金)午後4時~5時45分(日本集中治療医学会事務局)
第2回:平成15年2月28日(金)午後1時~午後5時30分(日本集中治療医学会事務局)
その他、電子メールを用いた会議を多数回、行った。