PICUよりみなさまへ

小児集中治療について

 小児科学(pediatrics)は、ギリシャ語の「paidos(少年)」と「iatros(医者)」に由来する用語です。日本集中治療医学会は、成人の集中治療に加えて、小児領域の集中治療の専門家を育成しています。医学領域では、およそ中学校3年生の15歳までを小児領域としています。

 小児集中治療とは、お子さんの体の機能が適切に働かなくなった時に、集中的に十分な治療と看護を行う診療のことです。外科系、内科系を問わず、お子さんができるだけ早く元の状態に戻ることを支援します。診療対象は、大きな手術を受けた場合(例えば心臓手術など)、病院の内外を問わず急な病気や怪我などで全身の状態が悪くなった場合などです。

 小児集中治療室(pediatric intensive care unit: PICU)は、このような集中治療の必要な小児達を、一カ所に集めて治療する場所です。小児集中治療を専門にする医師と看護師だけで治療を行うこともありますが、多くの場合、複数の専門診療科の医師が専門的立場から治療に参加し、看護師や多くの医療スタッフと連携して、チーム医療として診療し、治療効果を高めることが特徴です。

 小児集中治療を専門としている医師を、小児集中治療医といいます。小児集中治療医は、24時間365日、交代で、小児集中治療室内に勤務しています。そして、時々刻々と変化する患児の状態に対して、様々な専門診療科の意見を参考にしながら、最も適切であると考えられる治療を迅速に選択し、実行しています。

 また、小児集中治療では、看護師も専門領域として研鑽しています。看護師は集中治療医と連動し、お子さんができるだけ早く、元の状態に戻ることができるように診療を支援し、さらに看護領域の専門性を提供しています。子どもである患児は成長発達段階にあり、治療を行っていく上で、成長と発達を考慮した説明とケアが必要です。お子さんの発達と治療を共に考えながら、適切な方針を選択できるように、ご本人とご家族をサポートしています。現在は、看護領域に加えて、薬剤師、臨床工学技士、理学療法士などの多職種がPICUに参入し、各専門性を集約した内容として小児集中治療が発展しようとしています。

 以上のように、日本集中治療医学会は、小児集中治療領域における発展を支援しています。重篤な小児に対する専門的な知識や経験に基づき、患児のご家族に対して、十分な説明と治療を行い、少しでもご本人やご家族の不安を取り除けるように、小児集中治療スタッフが共同して対応しています。

2017年3月
小児集中治療委員会