看護師よりみなさまへ

集中治療室における看護とは?

集中治療室での看護師の役割に関してお話しようと思います。

集中治療室における看護師の役割としてまず大切な仕事は、他の医療スタッフとともに患者さんの命を守ること、患者さんの命を支えることです。命を守るためには、医師とは違う側面から細かな変化を逃さない工夫が大切になります。患者さんがお話になる内容だけでなく、血圧、心電図、尿量、手足の温かさなど、私たちは五感を駆使して、患者さんの体の様子を評価します。何かよくないことが起きる予兆があると判断すれば、他の看護師とともに内容を共有し、医師に報告します。私たちは、早く察知し、早く対応することで、患者さんの集中治療における命を守ります。このような細かな体や心の変化に気づくために、1人の看護師が集中治療室で担当する患者さんの数は2名以内に制限しています。24時間、365日、看護師は交代しながらも、患者さんの近くに寄り添っています。

集中治療室における多職種連携

集中治療室での療養においてできるだけ安楽でいて頂けますよう、私たちは感じる辛さをできるだけ和らげ、快適に療養して頂けますように工夫しています。患者さんが話せる状態では話によく耳を傾け、不安を和らげ、環境を整えます。痛みがある場合には、医師と薬剤師に相談し痛み止め(鎮痛薬)を調節します。緊張が持続するときには、眠くなる薬(鎮静薬)を持続的に使用する工夫もあります。その間も、最も快適な状態で頂けるように、患者さんの状態を細かく評価させて頂き、医師と相談します。

集中治療においては、臓器の機能の回復を待つ方法があります。呼吸については「人工呼吸器」など、心臓については「補助循環」、腎臓においては「血液浄化装置」などです。人工呼吸器で呼吸を補助する場合には、楽に呼吸ができているかなどを観察し、医師や臨床工学技士と連携して、医師の指示の下で設定を適切に変えるようにします。このような場合でも、毎日、顔を拭き、体を清拭し、1日に3回、口腔内のケアを行うことにより、患者さんらしさや清潔さを維持させて頂き、日常生活と近くなるように心がけています。

ご家族の皆さまとの連携

ご家族の皆さまへの看護も、大切な仕事です。特に患者さんご本人に意識がない場合、ご家族の皆さまは辛い決断をしなければならないこともあります。私たちは、患者さん、ご家族の皆さまの立場に立ち、忙しい中で対応している医師にさまざまな視点をお伝えし、医療連携として患者さんとご家族の皆さまを支援しています。

このように、集中治療に携わる医師との連携はもちろん、理学療法士や作業療法士とともに集中治療室における急性期のリハビリテーションに参加したり、薬剤師ととともに薬の投与量や投与方法を確認したりなどの作業もしています。集中治療は、本学会を中心として、日本でも非常に充実してきています。その中で、看護師はチーム医療として、様々な職種との連携の中で安心性を支えています。常にベッドサイドにいるスタッフとして、常に様々な職種と相談し、連携しながら、患者さんの安全を守っています。

現在、高度急性期医療として、重症状態であろうとも十分な治療を受けることができる時代です。このような役割を遂げるために、看護師は集中治療室に勤務してからも、集中治療に関する専門的なトレーニングを受け続けています。私たちは、皆さんが安心して集中治療を受け、自分らしい生活に早く戻れるように、日夜、尽力させて頂いています。



2020年5月
日本集中治療医学会
理事 卯野木 健