ブックタイトル第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集

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第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集

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第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集

-839-FP-280 持続血液透析濾過法(CHDF)管理中の早期離床が可能であった症例を経験して1)社会医療法人共愛会 戸畑共立病院 リハビリテーション科、2)社会医療法人共愛会 戸畑共立病院 外科、3)社会医療法人共愛会 戸畑共立病院 集中治療室 看護部野中 沙恵1)、佐藤 英博2)、平湯 恒久2)、仲本 昂平1)、高崎 裕介1)、白土 奈央3)【はじめに】ICU acquired weaknessが注目される近年、ICUにおける早期離床の重要性が報告されている。ICUでの早期リハビリテーション介入は、人工呼吸器管理期間の短縮、せん妄期間の短縮、退院時ADL の向上が得られるとされている。今回鼠径ヘルニア嵌頓から敗血症を来し、緊急手術を行った症例に対し、早期より多職種での関わりを行いADL低下することなく自宅退院が可能となった症例を担当した。【症例】51 歳男性。1 週間程水分や食事の摂取ができていない状態であり、腹痛と嘔吐あり当院紹介受診となる。鼠径ヘルニア嵌頓による閉塞性イレウスの状態であり、小腸壊死に対して緊急手術となる。【経過】術中より呼吸状態が悪く人工呼吸器管理のままICU 入室となる。術後に利尿が得られず、術日より右鼠径部よりブラッドアクセス留置し持続血液透析濾過法管理となるが、脱血不良のため右内頸静脈にアプローチ変更。人工呼吸器管理下で術翌日には理学療法開始(RASS:-2~-1)。術後2日目の午前には端座位、起立訓練、午後にはCHDF回路交換中に歩行訓練開始となる。術後4日目に抜管、術後7 日目にCHDF 離脱。CHDF管理中の離床、歩行訓練を継続して行う事ができ、ICU 退室時には歩行車歩行が監視下で行える状況であった。せん妄症状もなく経過し、一般病棟へ転棟後もリハビリ継続し、術後24日目にADL全自立で自宅退院が可能となった。【考察】ブラッドアクセスを大腿静脈に留置すると、股関節屈曲時にカテーテルも屈曲し脱血不良を招く事があるため、スムーズな離床が行えない事がある。本症例はブラッドアクセスを内頸静脈から挿入していた事により、ルート管理しやすい状態でCHDF管理中の離床が可能であったため、呼吸器合併症を起こすことなく経過。また、多職種との協力により歩行訓練も術後2日目より行う事ができている。様々なデバイスが装着された状態であっても、多職種が協力すれば安全に離床することも可能である。FP-281 集中治療を要した消化管穿孔症例の検討-上部と下部で違いはあるのか-1)神戸市立医療センター中央市民病院 麻酔科、2)日本赤十字社和歌山医療センター 集中治療部是永 章1)、辻本 登志英2)、小谷 祐樹2)、亀井 純2)、山田 裕樹2)、千代 孝夫2)【目的】集中治療を要した消化管穿孔症例で、穿孔部位(上部、下部)による差違を明らかにする。【方法】2012 年4 月1 日から2015年3月31日における消化管穿孔症例のうち、ICUに入室した症例を対象とした。【結果】消化管穿孔症例は419例(上部121例、下部288例、不明10例)で、ICUに入室した症例は139例(上部29例、下部110例)であった。以下上部/下部の順で、平均年齢は73.3/72.9歳、APACHEII scoreは19.1±7.5点/18.7±7.9点、SOFA scoreは6.6±2.8点/6.1±3.5点、ICU滞在日数は6日/6日、ICU死亡率は6.9%/3.6%、28 日死亡率は10.3%/9.1% であった。血液培養陽性率は13%/35%と下部で高く、腹水培養陽性率は73.1%/81%であったが、そのうち真菌陽性率は73%/13% と、上部で高かった。【考察及び結語】一般的に消化管穿孔は、上部よりも下部の方が重症化しやすいといわれている。また、消化管穿孔における抗真菌薬投与の是非は意見が分かれている。今回の検討でもICU 入室率は下部の方が高かった。しかしICU 入室症例においては、上部・下部で重症度スコア、死亡率に有意差はなく、ICU入室症例では上部消化管穿孔症例でも下部消化管穿孔と同等の重症度であった。このため上部では、腹水培養における真菌陽性率が高いことから、ICU入室症例では当初から抗真菌薬投与を検討する余地があると考えられる。FP-282 食道穿孔を含む消化管穿孔を短期間に2 度発症したが、集学的治療が奏功した1 例1)済生会横浜市東部病院 麻酔科、2)済生会横浜市東部病院 救急科、3)済生会横浜市東部病院 集中治療科小松崎 崇1)、冨田 真晴1)、秋山 容平1)、秋山 苑生1)、明石 卓2)、清水 正幸2)、小林 陽介2)、山崎 元靖2)、高橋 宏行3)、佐藤 智行1)【症例】69 歳男性。アルコール依存症の既往があり、声門癌に対し放射線治療を行っていた。抗酒薬内服後に飲酒し、激しい嘔吐を繰り返した後に背部痛が出現した。CT 画像で縦隔内に空気を認め、食道穿孔(boerhaave症候群)と診断を受けた。緊急手術の適応と判断され、当日中に食道創閉鎖および胃瘻・空腸瘻の造設を行った。術後経過は概ね良好で、第2病日に空腸瘻からの経管栄養投与を開始し、第6病日に嚥下造影を行い漏れがないことを確認して流動食を開始した。食上げも順調で、ややせん妄の傾向を認めたものの第14 病日の退院を予定していた。しかし退院予定日の前夜より腹痛、炎症反応上昇等の所見を認め、CT 画像上で十二指腸憩室穿孔が疑われた。退院を延期し食止めおよび抗菌薬による保存的治療を行ったが、画像所見は増悪傾向にあり翌日に意識レベルも低下したため緊急で十二指腸憩室切除、十二指腸空腸吻合、胆のう摘出術等を行った。術中より昇圧剤としてノルアドレナリン0.1-0.15γ程度を要し、体液バランスも大きく正に傾いていたためopen abdominal managementの方針で集中治療室に帰室した。同日中にPMXを開始し、抗菌薬、ステロイドに加えてAT3 製剤投与、免疫グロブリン静注を行った。治療は奏功し、翌々日には昇圧剤投与を終了した。第19病日に閉腹し、第20 病日には人工呼吸器を離脱した。第22 病日に造影検査で漏れがないことを確認して経管栄養投与を再開した。経口摂取開始後、胃内容物の排泄遅延が続き食上げに難渋したが、最終的に分割食からの食上げを行い第47 病日に退院した。【考察】食道穿孔の様な重症化しやすい消化管穿孔を短期間に繰り返し発症した場合でも、早期からの集学的治療により良好な転帰を目指すことが可能である。