ブックタイトル第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集

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第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集

-781-FP-106 肺切除術後の気道出血に対し筋弛緩薬を用いた分離肺換気による管理が必要であった症例大阪警察病院 麻酔科清水 智明、北 貴志、林 峰子症例 67歳男性。特記すべき既往症なし。右上葉肺癌に対し開胸下右上中葉切除術を行った。周術期に問題なく一旦退院したが、術後42 日に喀血で再入院した。気管支鏡による観察の結果、吻合部肉芽からの出血と判断されレーザ焼灼が予定された。入院14日目に大量の喀血と低酸素血症を認め、気管挿管、ICU 入室となった。気管支鏡で肉芽のさらに遠位からと思われる出血を認め、血液のたれ込みを防ぐ目的でダブルルーメンチューブを留置し、健側のみの分離肺換気を開始した。当初鎮静・鎮痛のみで管理していたが、咳嗽その他による体動で容易にチューブが移動し、それに伴う低酸素血症を生じた。盲目的なチューブの位置調整は、患側への誤挿入による出血の可能性が否定できず、また気管支鏡ガイド下での操作も出血下では困難になると予想された。これらのリスクを鑑み、予定された残肺全摘までの間、筋弛緩薬の持続投与による不動化を行うこととした。ICU 入室4 日目に残肺全摘術を施行。術後も創部の安静を目的に3 日間筋弛緩薬投与を継続したのち、5 日目にシングルルーメンに入れ替え、7日目に抜管した。抜管後呼吸状態は安定していたが、気管支瘻を認めたため開窓術を行った後、ICU 退室となった。ICU 滞在日数39日、総人工呼吸装着日数29日、筋弛緩薬投与日数8日であった。考察 ICUにおける人工呼吸中の筋弛緩薬の使用はきわめて限定的である。また一般にダブルルーメンチューブによる挿管刺激はシングルルーメンのそれより大きく、より深い鎮静・鎮痛が必要となることが多いが、必ずしも不動化が必要となるわけではない。今回我々の経験した症例では、チューブ位置異常に伴うリスクが筋弛緩薬使用に伴うそれを上回ると判断し使用したが、鎮静・鎮痛の工夫で回避または間欠的投与で管理できた可能性はあった。FP-107 洞不全症候群を合併した長期フォロー中の先天性中枢性低換気症候群の一例1)埼玉県立小児医療センター 総合診療科、2)埼玉県立小児医療センター 循環器科利根澤 慧1)、星野 健司2)、鍵本 聖一1)症例は16 歳男児。PHOX2B 遺伝子異常を認め先天性中枢性低換気症候群と診断され、乳児期より就寝時の在宅非侵襲性陽圧換気療法および酸素療法を行っていた。徐々に2 型呼吸不全が進行し、覚醒時にも血中二酸化炭素分圧は80mmHg 前後と慢性的に高値であったが、アシデミアを認めず、低酸素血症もないため、経過観察されていた。16歳時に低酸素血症と呼吸性アシドーシスにより入院した。入院時、血中二酸化炭素分圧は120mmHg と著明な高値であったが、終日非侵襲性陽圧換気による治療開始後は80mmHg台まで低下した。しかし、入院4日目に無症状ながらに5秒の心停止が出現し、3秒以上の洞停止が頻発した。ホルター心電図では最大9秒の洞停止や2度の房室ブロックを認めた。気管挿管による人工呼吸器管理に変更し、血中二酸化炭素分圧を40mmHg 台に補正したところ、洞不全症候群は改善した。心臓電気生理学的検査では洞結節回復時間の延長がないことから洞機能不全は否定的であり、刺激伝道系の異常も認めなかった。ホルター心電図の心拍変動解析では副交感神経の活動を示すとされているhigh frequency(HF)の値が過去の洞不全がない時期と呼吸器管理により症状改善した時期に比べて洞停止を認めた時期の検査結果が高かった。以上の結果より洞不全症候群の原因は自律神経系の異常にともなうものと考えらえた。本症例は気管切開術施行および在宅人工呼吸器を導入することによって洞不全症候群は改善しペースメーカー挿入術を回避することができた。先天性中枢性低換気症候群は呼吸中枢の異常により睡眠時の無呼吸をきたす疾患であり、Hirschspurng病、不整脈、自律神経系の異常の合併が多いとされ、洞不全症候群の合併の報告もある。今回の症例のように先天性中枢性低換気症候群に合併する洞不全症候群は適切な呼吸管理により改善される可能性がある。FP-108 腹壁欠損を有する児の呼吸管理における腹帯の有用性1)九州大学病院 救命救急センター、2)九州大学大学院 成長発達医学分野、3)九州大学病院 集中治療部水口 壮一1,2)、松岡 若利1,2)、一宮 優子1,2)、平田 悠一郎1,2)、賀来 典之1,2)、牧 盾3)、徳田 賢太郎3)、安田 光宏1)、高田 英俊2)、前原 喜彦1)【緒言】腹壁は「呼吸」に重要な要素であり、腹壁欠損を合併するprune belly 症候群では、呼吸器感染や無気肺を繰り返し発症すると報告されている。当院では、呼吸不全を契機にPICUに入室した腹壁欠損を有する児に対して、腹壁の機能を補う目的で「腹帯」を用いており、その有用性について報告する。【症例】巨大な腹壁瘢痕ヘルニアを有する10カ月男児。家族性血球貪食症候群と診断され、同種骨髄移植を施行された。移植後12日目に生着症候群が原因と考えられる呼吸不全を来し、PICU で挿管・人工呼吸管理を開始した。生着症候群の病態が落ち着いた後に鎮静剤を減量し、肺理学療法を励行したが、背側に無気肺が残存して人工呼吸器が離脱困難であった。咳嗽反射を認めるが、巨大な腹壁瘢痕ヘルニアのため腹腔内圧が上昇せず、有効な咳嗽が得られないことが無気肺の改善しない要因と考え、入室14日目より腹帯の使用を開始した。腹帯の使用開始後に無気肺は改善傾向となり、入室18 日目に抜管、抜管15 日目にNasal High flow cannula も離脱出来た。【考察】腹壁は「咳嗽」において重要な要素であり、腹壁の筋肉が収縮することで腹腔内圧が上昇し、横隔膜を押し上げることで強力な咳嗽が得られる。本症例のように巨大な腹壁瘢痕ヘルニアを有し、腹壁の筋肉が収縮しても腹腔内圧が上昇しにくい症例では、腹帯の使用が腹腔内圧を上昇しやすくさせ、強力な咳嗽を得るのに有効な手段と考えられた。また、腹壁は「吸気時」に胸郭が腹腔内臓器を支点として拡張するのに重要な要素であり、腹壁コンプライアンスが高い症例では胸郭の拡張が阻害され、吸気努力が強くなると報告されている。当院でも腹壁コンプライアンスが高いprune belly 症候群に腹帯を用い、吸気努力が軽減することを経験しており、今後、呼吸管理上の「腹帯」の有用性についてさらに検討が必要である。