ブックタイトル第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集

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第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集

-325-CR4-2 日本版重症敗血症診療ガイドライン2016 作成の流れ日本版重症敗血症診療ガイドライン2016作成特別委員会松嶋 麻子、西田 修、小倉 裕司、井上 茂亮、射場 敏明、今泉 均、江木 盛時、垣花 泰之、久志本 成樹、小谷 穣治、貞広 智仁、志馬 伸朗、中川 聡、中田 孝明、布宮 伸、林 淑朗、藤島 清太郎、升田 好樹、松田 直之、織田 成人、田中 裕「日本版重症敗血症診療ガイドライン2016」は、日本集中治療医学会により、2014年7月に第1回委員会が開催され、エビデンスに則り、日本の実情、日本独自の治療を考慮したガイドラインを作成することが合意された。その後、12月の第2回委員会からは日本救急医学会との合同委員会となり、重症敗血症の診療に関わる救急・集中治療の医師が合同で行う大規模なプロジェクトとなっている。当初、2012年に出された「日本版敗血症診療ガイドライン」の改訂版という位置づけで敗血症に特化した項目だけを取り上げることも検討されたが、重症敗血症の診療に必要なエビデンスを一つにまとめることを目的に、全身管理や補助療法を含む19項目(19班)を対象とすることになった。各班には班長以下、3~8名の若手を含む救急・集中治療医が動員されたが、当初、診療ガイドラインの作成やそれに必要なsystematic review(SR)に精通するメンバーが少なかったため、Medical InformationNetwork Distribution Service(Minds)が開催する講習会にメンバーが参加し、具体的な方法を学んだ。2015年2 月には各項目のclinical question(CQ)案が出され、3月にはCQ 案を公開してパブリックコメントを求めた。パブリックコメントも考慮して4 月の第3回委員会では100件のCQを採用し、SRに向けて文献検索を開始した。ここで、作業量とガイドライン作成の期限を考慮し、今回はCQに合致するSRがすでに存在する場合は、それを用いて推奨を提示する独自の方法をとることになった。各班で既存のSR、randomized controlled trial(RCT)を網羅的に検索し、その有無に従って、各班がSR を行い推奨提示するCQ と、既存のSR を用いて推奨提示するCQに分類した。また、文献検索の結果、既存のSRもRCT も存在しないCQについてはexpert opinion(EO)を示すこととした。その結果、12月の第6回委員会までに、28件のCQで各班が本ガイドライン独自のSRを行い、36 件のCQでは既存のSR を用いて推奨を提示することが定まった。その他のCQでは推奨の根拠となるSRやRCT がなく、EO となる見通しである。この分類については、各班の文献検索に加え、ガイドライン作成メンバー約70 名の中で相互査読を行い、重要な文献の漏れがないことを確認した。これらの作業過程や文献検索、SR の結果などについては「日本版重症敗血症診療ガイドライン2016」の公開とともに付録として公開し、今後の改訂作業の貴重な資料として後進に引き継ぐ予定である。この様に、今回のガイドラインでは、重症敗血症の診療に関わる多数の救急・集中治療医の協力により、エビデンスに基づいた透明性の高い診療ガイドラインの作成に努めている。CR4-3 日本版重症敗血症診療ガイドライン2016における推奨設定方法日本版重症敗血症診療ガイドライン2016 作成特別委員会山川 一馬、西田 修、小倉 裕司、江木 盛時、松嶋 麻子、井上 茂亮、角 由佳、林田 敬、福田 龍将、安田 英人、原 嘉孝、松田 明久、矢田部 智昭、山下 和人、坂本 壮、近藤 豊、櫻谷 正明、射場 敏明、今泉 均、垣花 泰之、久志本 成樹、小谷 穣治、貞広 智仁、志馬 伸朗、中川 聡、中田 孝明、布宮 伸、林 淑朗、藤島 清太郎、升田 好樹、松田 直之、織田 成人、田中 裕診療ガイドラインとは、『エビデンスのシステマティック・レビューと複数の治療選択肢の利益と害の評価に基づいて患者ケアを最適化するための推奨を含む文書』と定義される。現在改訂作業中の日本版重症敗血症診療ガイドライン2016は、19領域において合計100 を超える臨床上の課題(clinical question: CQ)を設定した多領域をカバーする大規模ガイドラインである。ガイドライン利用者の利益に資するよう、科学的根拠に基づいた透明性の高い推奨を提示するため、精度の高いガイドライン作成方法を採用している。今回我々が採用する推奨決定の方法は、日本医療機能評価機構EBM医療情報部(Minds)の提唱する『ガイドライン作成の手引き2014』に基づいている。まず、現状において利用可能なエビデンスの質・量を判断基準とし、既存のシステマティック・レビュー論文を使用して推奨設定するCQ、独自にシステマティック・レビューを行い推奨設定するCQ、エビデンスが不十分であるためエキスパートコンセンサスに留まるCQ、に大別した。前者二つに適応した推奨設定の方法について述べる。推奨は、エビデンスの質(A,B,C,D)の評価過程と、その後の推奨の強さ(1 or 2)の評価過程に大別される。エビデンスの質の評価に際しては、『エビデンス総体(Body of Evidence)』の重要性が強調されている。システマティック・レビューを行うことで各CQに適合した研究論文を抽出した後、アウトカムごとにエビデンスの質をエビデンス総体として評価し統合することが求められる。その評価の根拠となるのは、統合エビデンスの確信性に影響し得る5要因(バイアスリスク、非一貫性、不精確さ、非直接性、出版バイアス)である。その後に設定する推奨の強さについては、Minds2014 では『益と害のバランス』の重要性が強調されている。診療ガイドラインでは、ある臨床状況で選択される可能性がある複数の介入方法(診断、治療、予防、介護など)を比較して、最善と考えられる方法を推奨するが、その際に、介入の有効性と同等に、介入がもたらす有害面にも注意を払うべきという点を強調したものである。本発表ではガイドライン作成における推奨の設定方法について、具体例を提示しながら分かりやすく解説する。