ブックタイトル第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集

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第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集

-306-PC2-1 電気刺激療法:muscle wastingを予防する, Pro北里大学病院 リハビリテーション部神谷 健太郎ICU-AWの病態やICU 退室患者の身体機能が長期にわたって低下している実態が明らかとなるにつれ、骨格筋の機能や量の保持が集中治療における大きな関心事となっている。神経筋電気刺激(neuromuscular electrical stimulation, NMES)は、患者の意識状態に関わらず骨格筋を収縮させることができるため、ICU-AWの要因の一つである身体不活動に対する介入手段として期待され、近年、いくつかの無作為化比較対照試験が報告されている。必ずしもすべてpositive studyではないが、NMESのresponder(より効果の高い集団)についても明らかになりつつある。本セッションでは、Pro-Conのルールに従い徹底的にProの立場で議論を展開したい。Pro-Con 2 2月12日(金) 8:30~9:10 第4会場電気刺激療法:muscle wastingを予防するPC2-2 ICUにおける電気刺激療法の適用について1)神戸市立医療センター中央市民病院 リハビリテーション技術部、2)神戸大学大学院保健学研究科、3)救急部、4)循環器内科岩田 健太郎1,2)、井澤 和大2)、西原 浩真1)、坂本 裕規1,2)、朱 祐珍3)、瀬尾 龍太郎3)、北井 豪4)電気刺激療法は、患者の病状や環境要因などにより十分な運動が行えない場合に活用される療法の一つである。近年、電気刺激療法は、慢性心不全、慢性呼吸不全、膝関節疾患など、身体活動が制限される患者に対する筋萎縮の予防や筋力増強の代替運動として、注目されている。また、超急性期における電気刺激療法の安全性や筋萎縮予防の効果についての報告も散見され、今後の展開が期待されている。一方、電気刺激療法の問題点の一つとして、電気刺激によって誘発される筋収縮は、生理的筋収縮とは異なるという点が挙げられる。通常の生理的な随意収縮は、神経線維の興奮のタイミングが個々の線維によりずれ、細い神経線維で支配される疲労の遅い遅筋から収縮する。それに対して、電気刺激では、神経線維の興奮のタイミングが同期し、閾値の低い太い神経線維で支配される速筋から収縮を始める。したがって、表面電極を用いた通常の電気刺激では、遅筋が十分に活動するという絶対的根拠は未だ得られていない。そのため、電気刺激療法単独での抗重力筋の筋萎縮防止、電気刺激による有酸素運動効果については、一定の見解は得られていないものと思われる。実際、健常筋では電気刺激による筋力増強が可能であることが報告されているが、随意収縮が可能であれば、随意的筋力増強訓練(自動抵抗運動)の方が効果はより大きいことが証明されている。また、電気刺激による筋力強化の効果が得られるまでの治療期間は、随意的な最大筋力が増大するまでに4~6 週間以上は必要とされる。筋持久力増強や筋の断面積の増加にはさらに数週間を要する。一方、心臓外科手術および周術期管理の進歩により、術後リハビリテーションは早期化している。高橋ら(2012年)は、心臓外科待機手術後患者の約8割において、ガイドライン通りに手術後のリハビリテーションが進められ、病棟内歩行自立までの平均日数は4.3日であったと報告している。ICUに滞在する患者のうち、この電気刺激療法が従来治療に加えて有効である可能性があるのは、どのような患者群であるのか、今後の更なる検討が必要であると考えられる。本セッションではICU における電気刺激療法の現状とその課題について我々の経験を踏まえて議論したい。