ブックタイトル第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集

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第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集

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第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集

-265-SY21-3 ICU 入室患者の妄想的記憶と退院後の生活についての調査1)岡山赤十字病院、2)岡山県立大学 保健福祉学部藤田 知幸1)、高橋 徹2)ICU入室中に患者の体験する妄想的記憶は、ICU退室後も不快な記憶として留まると言われている。しかし、少数例での記述的な報告はあるものの、妄想的記憶が退院後の生活に及ぼす影響についての報告は少ない。今回、妄想的記憶とICU入室中の患者特性や退院後の健康、精神状況等との関係をより明らかにするために調査したので報告する。【方法】2012年7月から2年間にICUに入室し24 時間以上人工呼吸管理を受けた患者に対し、属性、せん妄発症等についてデータ収集した。意思疎通の可能な患者に対してICU 退室2週間以内に入室中の記憶について面談調査をし、退院半年後に日常生活についての質問紙を郵送した。妄想的記憶と患者データの分析はχ2検定またはロジステック回帰分析をSPSS Ver.23.0 for Macにて行った。本調査は当該施設にて倫理委員会審議判定の承認を得て、面談時に同意書類への署名と質問紙の返信によって調査参加患者の承諾とした。【結果】患者150名中妄想的記憶のある患者は55 名(37%)、このうち看護師によって妄想的記憶を記録されていたのは11 名(20%)であった。妄想的記憶のある患者の特性は、高いGCS、高いAaDO2、低いP/F ratio、せん妄発症の無いことであり(p < 0.05)、APACHE 2score、年齢、ICU 在室日数、人工呼吸管理日数、鎮静、抑制時間等との関係はなかった。また、妄想的記憶はせん妄発症患者でより不快に捉えられていた(p< 0.05)。妄想的記憶を質的に分類した結果、被害妄想が妄想的記憶を不快にする要因であった。妄想的記憶の有無で退院半年後の主観的健康度とPTSD徴候に関係はなかったが、被害妄想を持つことで退院半年後に軽度の過覚醒徴候を示す傾向にあった。【結語】妄想的記憶は、認知・意識レベルの良い、酸素化障害のある患者で記憶に留まっていた。妄想的記憶に対する不快感はせん妄発症患者で強かったが、妄想的記憶は退院後の生活に影響を及ぼしていなかった。意思疎通が困難なため人工呼吸管理中の患者の妄想は把握し難いが、特にせん妄発症患者の被害妄想に対しては察知し傾聴して不安を軽減できるよう、長期にわたり支援の必要なことが示唆された。SY21-4 人工呼吸患者におけるせん妄発症と妄想的記憶の関連1)筑波大学附属病院 ICU、2)筑波大学大学院人間総合科学研究科フロンティア医科学専攻、3)筑波大学附属病院 救急・集中治療部吉野 靖代1)、卯野木 健1)、櫻本 秀明1)、大内 玲1,2)、星野 晴彦1,2)、松石 雄二朗1,2)、丸島 愛樹3)、水谷 太郎1,2)【背景】ICU退室後の妄想的記憶は、心的外傷後ストレス障害(PTSD)の発症に関連し、その発症率は8~35%とされる。妄想的記憶は、ICU退室患者の26~46%と比較的高率に認められ、ICUにおけるせん妄状態が妄想的記憶の形成に関与する可能性があるが、その実態は不明である。【目的】人工呼吸療法中のせん妄発症とICU退室後の妄想的記憶の関連を明らかにする。【方法】ICUに48 時間以上滞在し、人工呼吸管理を24 時間以上受けた18 歳以上の患者を対象とし、高次機能障害・精神障害のある患者は対象から除外。ICU滞在中1日2回CAM-ICUによるせん妄評価を実施、その後ICU退室5~10日以内に研究者が患者訪問を行い妄想的記憶の評価となるICUメモリーツール、PTSD尺度であるIES-Rを調査した。得られた結果はSPSS を使用し解析した。【結果】ICU退室後の患者の66%に妄想的記憶が認められた。ICUにおけるせん妄の発症率は、ICU退室後に妄想的記憶をもつ患者で72%と、妄想的記憶のない患者のせん妄発生率(35%)よりも高率であった。この結果は多変量解析によりAPACHE2スコア、鎮静深度のRASS で補正した後も同様であった(オッズ比4.324; 95%信頼区間1.144-16.341, p=0.031)。また、妄想的記憶をもつ患者のIES-R スコアは妄想的記憶がない患者に比べ有意に高かった。【考察】せん妄時の体験はICU退室後も患者の記憶として残り、妄想的記憶の形成に影響していると考えられる。せん妄が妄想的記憶を介してPTSDと関連している可能性がある。【結論】本研究において、人工呼吸療法中のせん妄発症は、ICU退室後の妄想的記憶の増加と関連がある事が示唆された。