ブックタイトル第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集

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第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集

-239-SY12-1 小児集中治療におけるHigh-flow nasal cannulaの臨床的意義アルバータ大学 小児集中治療科川口 敦緒言: High-flow nasal cannula: HFNC は小児の呼吸管理において重要な治療選択肢の一つとなっている。しかしその臨床的意義についての検証は国内外問わずほとんどなされていない。方法: カナダの小児専門病院、 PICU(Pediatric Intensive Care Unit)に入室した呼吸急迫症状を呈する0-17 歳までの患児を対象とした1)Interrupted Time Series(HFNC 導入前2004-08、導入後2010-14の比較)および2)HFNC を暴露因子とした コホート研究。ともに人工呼吸器管理日数、入室期間、入室中の気管内挿管率を主アウトカムとし、後者では体重、年齢、Pediatric Risk of Mortality スコアIII、入室前ユニット(救急、手術室、一般病棟)の4 項目を用いたSequential Inverse Variance Matchingにより対照患者を1:1で選択した。前者の解析ではPropensity Score、後者には多変量回帰分析 およびHFNC 使用期間による層別化解析を行った。なお2009 年入室例はWash-out期間とし除外した。結果: 上記基準を満たした患者は、702例(前)、1068例(後、 HFNC使用455例)であった。緊急入室が大半で(前668例、後1023例)、入室時診断は約半数が肺炎ないし細気管支炎であった(前344例、後489例)。1)入室期間は前後で統計学的に有意な変化は見られなかったが、人工呼吸器管理日数には2.38 日(95%信頼区間: 0.23-4.52、 p=0.030)の短縮がみられた。気管内挿管率比(導入前比)は0.71(95%信頼区間: 0.62-0.83、 p<0.001)であった。2)人工呼吸器管理日数に有意差は見られなかったが、入室期間(3.03日、95%信頼区間:1.32-4.73日、p=0.001)は有意に延長した。また気管内挿管率比(HFNC非使用比)はHFNC使用3日未満群で0.79(95%信頼区間:0.56-1.13、p=0.19)、8日以上群で0.29(95%信頼区間: 0.21-0.39、 p < 0.001)であった。結論: 小児呼吸急迫患者において、HFNC は気管内挿管率を減少させ、人工呼吸管理日数を短縮させることが示唆された。シンポジウム 12 2月13日(土) 14:40~16:10 第3会場HFNC:小児SY12-2 High-flow nasal cannula(HFNC)導入による小児呼吸不全患者に対する治療戦略の変化1)国立成育医療研究センター 総合診療部 救急診療科、2)国立成育医療研究センター 手術・集中治療部 集中治療科、3)国立成育医療研究センター 臨床研究開発センター 開発企画部福政 宏司1)、松本 正太朗2)、小林 徹3)、中川 聡2)【背景】HFNCの使用症例拡大の背景にはシステムの簡便さ、患者快適性の向上がある。成人領域で死亡率の低下が報告されている。小児領域では前後比較研究で挿管率低下が報告されているが、HFNC の有効性を示すエビデンスは乏しい。【目的】HFNC 導入による小児呼吸不全に対する治療戦略の変化(HFNC→ NPPV →気管挿管)前後の転帰を検討。【方法】診療録を用いた前後比較観察研究。対象はPICU に呼吸不全の診断で入室した16歳未満の小児。A群:2014年1月から11月、B群:2014年12月から2015年6月。NIV管理時間、挿管率、PICU入室期間、鎮静薬使用量、死亡率について検討。【結果】A群:33例、B群:58例(NPPV:23例、HFNC:35例)。両群間で月齢、体重、性別、PIM2に有意差なし。B群で気管支喘息が有意に多かった(A群:13例(39%)vs B群:39例(67%), p=0.02)。NIV(NPPV、HFNC双方を含む)管理時間(48 時間 vs 34時間, p=0.18)、挿管率(3例(9%)vs 9例(16%),p=0.53)、PICU 入室期間(5 日間 vs 6 日間, p=0.63)及び死亡率(0 例(0%)vs 1 例(2%), p=1.0)に統計学的有意差はなかった。デクスメテトミジン使用(27例(82%)vs 21例(36%), p<0.01)、フェノバールビタール使用(17例(52%)vs 9例(16%), p<0.01)はB 群で有意に少なかった。HFNC 管理された患者に明らかな副作用は認められなかった。【考察】小児呼不全患者に対する新たな治療戦略は従来の方法と比較して転帰を改善せず、挿管率が高い傾向が認められた。鎮静薬使用量の減少は、治療受容性の改善を示唆している。呼吸不全の原因疾患や基礎疾患等の患者背景、呼吸重症度が調整できていない後方視的観察研究のため、本研究で新たな治療戦略の有効性を結論づけることは出来ない。HFNCが臨床的に有効な症例群の考察、今後の前向き研究の方向性を含めて報告する。