ブックタイトル第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集

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第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集

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第43回日本集中治療医学会学術集会プログラム・抄録集

-217-SY2-3 「PEEPの決め方」経肺圧測定を基に大阪府立母子保健総合医療センター 集中治療科竹内 宗之、京極 都、橘 一也2008 年にTalmorらが食道内圧を測定し、それを基に経肺圧を計算し、PEEPや気道上限圧を設定することによりARDS患者の酸素化が改善し、予後が改善するかもしれない、とする論文を発表して以来、食道内圧測定は注目を集めてきた。肺胞の内部の圧が外の圧(胸腔内圧)よりも高くなければ肺胞は虚脱する、また、ここで肺胞内圧の代用として気道内圧が、胸腔内圧の代用として食道内圧が利用できるとする彼らの仮説は理解されやすく、また魅力的である。残念ながらまだ予後を改善させるかどうかの結論は出ていないが、この方法は有望である可能性がある。しかし、彼らの研究結果を臨床で利用しようとするときに、いくつか注意すべき点がある。まず、食道内圧の絶対値には誤差が必ず含まれる、という点である。実際に食道バルーンを自分で挿入してみると気がつくと思うが、バルーンの空気の量が0.5 mL異なるだけで食道内圧は1-2 cmH2Oの誤差ができてしまう。Talmorらの論文でも、どうやってゼロ点を校正・確認したのか、記載はない。この絶対値の欠点を解決するために考案された方法が、2012年のGrassoらによる食道内圧の変化と気道内圧の変化から算出する方法である。胸郭と肺のエラスタンスの比を一定と仮定し、Δ食道内圧とΔ気道内圧の比から最高経肺圧を推測する。そして推測された最高経肺圧が25 cmH2O以下であれば、PEEPを上昇させることができるとした。彼らはこの方法によりECMOセンターにECMO 導入目的で搬送された患者のうち最高経肺圧が25 以下だった群で全例ECMO を回避することに成功している。次に、食道内圧は、あくまで食道の周囲の胸腔内圧を近似しているだけであり、別の部位の胸腔内圧はまた、別の圧であることも忘れてはいけない。最も背側にある肺胞周囲の胸腔内圧は、食道レベルの胸腔内圧よりも大きいが、その程度は肺重量などによって決まり、臨床的には測定できない。また、不均一な肺胞の広がりを示すARDSや、胸膜癒着のある肺などでは、食道内圧を胸腔内圧の代表値として使用することの危険性を考慮しなければならない。食道内圧に基づく換気設定は、食道周囲の肺胞にとっては適切だとしても、他の部位では危険域に入っていることは十分ありうるからである。最後に、気道内圧も、肺胞内圧とは一致しないことがあることも忘れてはいけない。autoPEEPが存在する場合、呼吸回数が早く吸気時に吸気流量がゼロになる前に次の呼気に転換してしまう場合、などである。食道内圧測定には克服されていない欠点は存在するが、それを理解さえしていれば、気道内圧や換気量だけで人工呼吸器設定をするより、個々の症例に適した安全な設定ができると考えられる。SY2-4 PEEPの決め方: Continuous Negative Abdominal Pressure Methodトロント大学 こども病院吉田 健史PEEPの肺保護効果は、呼気に肺胞の虚脱を防ぐことによって呼吸毎に繰り返される肺胞の開通と虚脱(tidal recruitment)に関連するatelectotrauma を最小限にすることにある(Lancet2003)。過去に高いPEEP と通常のPEEP(ARDS Network の提示しているPEEP/FiO2 table)を比較した代表的な大規模臨床研究は3 つあるが(ALVEOLI 2004, LOVES 2008, EXPRESS 2008)、いずれもPEEP レベルによる予後の差を見いだせなかった。おそらく、垂直方向における(仰臥位では腹側から背側にかけて)胸膜圧の不均一な分布が原因で、PEEPを付加しても背側肺領域では肺胞虚脱が解消されず腹側肺領域では肺胞過膨張が引き起こされるといった肺内の不均一なstress/strain分布が、その原因の一つと考えられる。胸膜圧の分布は、主に肺の重量、心臓の重量が垂直方向に重なることに加え、腹腔内圧が横隔膜を通して特に背側領域を圧迫することで形成され、結果として背側領域では最も高値を示す(そして背側肺が虚脱する)(AJRCCM2013)。我々は、Continuous Negative Abdominal Pressure(CNAP)により腹腔内圧を低下させることで、1)その一部が横隔膜を通して、胸膜腔に伝播し胸膜圧を低下させる、2)胸膜圧の垂直分布をより均一にする(より小さくする)結果、PEEP効果を増強させるという仮説を立てた。豚急性肺傷害モデルを用いて、この仮説を検証した結果、CNAPを付加した方が肺コンプライアンスの改善だけでなく胸壁コンプライアンスの改善を認め、またEITでも肺内のより均一な換気分布を確認した。このセッションでは、negative pressure の付加がPEEP 肺保護効果のbreak through になる可能性を論じたい。